平成17年5月2日
ナトリウム冷却型高速増殖炉の開発の現状
サイクル機構でのフェーズUでの検討状況の報告とそれに基づく討議より
天野牧夫・小笠原英雄・石井正則
目 次
平成7年に「もんじゅ」が2次系ナトリウム漏洩を起こしてから、既に9年経つにも拘わらず、再開の見通しは全くはっきりしない状態であり、ナトリウム冷却型高速増殖炉の開発の状況についても、明確な表示が殆ど見受けられなかった。
21世紀のエネルギー問題が深刻になりつつある時に、このナトリウム冷却型高速増殖炉がどうなっているかを、明確にさせておくことは、色々な面から見て必要なことではないかと考えられ、我々の「エネルギー問題に発言する会」の内部だけにおいても、現状を明らかにしたいという意見が出て来だした。
このことから当会の運営委員会では、核燃料サイクル開発機構の関係者をお招きし、1999年から進めておられる「FBRサイクル実用化戦略調査研究」のフェーズII中間報告の内容についての詳細な報告を伺った。此処で報告されたナトリウム冷却型高速増殖炉の設計は,「もんじゅ」とは大きく違っていて、各種の新しいアイディアが取り込まれており、これによって、コストも大幅に低減することが可能となり、軽水炉と対抗できるという相当に斬新なものであった。更に、その後の質疑応答を経て、この問題に関する相当の理解を得ることができた。
また、これらの議論をベースとしてJNCで開発中のナトリウム冷却型高速増殖炉に対する意見、「もんじゅ」に引き続いての実証炉の必要性、建設するとした場合の、建設母体のありかたなどについても議論が行われた。
これらの経緯の詳細は、当会のホームページ、「会の討論」に掲載されているが、この報告は、ナトリウム冷却高速炉の開発の現状に関する解説としてまとめたものである。
1999年7月に核燃料サイクル開発機構(以降JNCと略称)を中心にした「高速増殖炉サイクル実用化戦略調査研究」がスタートした。電力実証炉計画が見直され、時間的余裕ができたので2年間のフェーズI作業では多様な選択肢、すなわち炉型、燃料及び再処理法の種々な組み合わせを幅広く比較・評価する再検討を実施し、フェーズII(2001~2005年)では実用化候補概念の明確化、研究開発計画(案)の検討を行っておりこのほど中間取りまとめを行ったところである。2006年からは概念設計、工学規模試験による実用化技術開発、実プラントの基本設計を実施、2015年頃には競争力のあるFBRサイクルシステムの技術体系を提示するところまでもって行きたい。開発目標としては安全性(炉心損傷の防止と影響の緩和)、経済性(軽水炉との競合)、環境負荷低減(廃棄物量低減)、資源有効利用性(TRUサイクル)、核拡散抵抗性(単体Pu不存在など)を掲げている。
フェーズIでは、FBRシステムとしては冷却材の種類(ナトリウム、重金属、ガス、溶融塩など)、プラントシステム(ループまたはタンク型、ポンプ型式、発電方式など)の技術の組み合わせとして約40の候補を検討の対象とした。再処理システムの概念としては、酸化物燃料、窒化物燃料、金属燃料などの種類に応じて、湿式法、乾式法などを組み合わせた約10概念を検討対象とした。また、燃料製造システムに関しても、同様な燃料の種類とそれに応じた再処理法に対して、ペレット法、振動充填法、鋳造法などを組み合わせて、技術的に可能性のある組み合わせを幅広く評価した。
フェーズIIでは、フェーズIで抽出した炉心燃料、FBRシステム及び燃料サイクルシステムに関する有望概念について、候補概念相互の比較評価を可能な限り定量的に実施できるレベルまで、設計研究を深める。また必要な要素技術開発(データを取得する試験の実施、設計評価技術の整備など)にも重点を置き、それぞれの技術選択肢について、実用化目標を達成するために必要な技術の見通しの把握や技術課題の難易度の評価を行う。最終的には実用化候補概念として、有望な複数の概念を明確にする。フェーズIIの作業の枠組みとしては、2003年度までの3年間を一つの区切りとして中間とりまとめを行い、研究開発課題評価委員会による評価を受けることになっている。尚、本調査研究はJNC、電気事業者、電力中央研究所、日本原子力研究所、メーカー各社を含むオールジャパンの協力体制下で実施されている。
フェーズI研究の結果として、FBRシステムとしてはナトリウム冷却、鉛―ビスマス冷却、ヘリウムガス冷却、水冷却それぞれの炉型について有望概念を絞りフェーズIIでの作業として検討することにしている。しかし過去の開発成果の蓄積もあり、開発リスクが最も少ないと考えられるのがナトリウム冷却炉であることは多言を要しないところである。ここでは、概念設計が最も進んでいる同炉型の検討状況に絞って紹介する。
高クロム鋼採用による二重直管化、1ループ75万kWeという大型2ループの採用、高流速設計など経済性を意識しすぎた物量低減指向が目に付き、安全性はどのように担保されているのかと心配になる。
A1 導入時点で軽水炉と経済性で競合できることを狙って物量低減に努力してきたが、決して安全性をおろそかにしているわけではなく、軽水炉並みの安全性を確保している。高クロム鋼のLBB成立性については重点的に研究開発を行っており、見通しは得られつつある。系統数の問題は事故時の冷却性能の問題としては一次系に崩壊熱除去系が3系統あって高い自然循環冷却能力を持ち、崩壊熱除去の信頼性については十分と考えている。1系統ダウンの状態で通常運転は継続しないこととしている。高流速化によるアルゴンガス巻き込みの問題はデイッププレートなどの採用で問題ないと考えているが、今後の実証試験などで最終的には対応して行く。
炉停止機能についても多重性、多様性の設計になっており、さらにキュリー点方式の自己作動型炉停止機構(受動的機器)の採用で安全性の向上を図っている。また、炉心損傷を想定しても厳しい再臨界事故が防止できるよう、溶融燃料早期流出機構を具備した燃料集合体の開発を実施している。これらの成果により、軽水炉並みの安全性が実現できる。
配管内、原子炉容器内でのナトリウムの流動特性の問題は、大幅なコンパクト化を狙っているだけに非常に重要な問題であろう。モックアップテストのスケール比を含め、どのようなステップで対応しようとしているのか。
A2 相似則に基づく大型縮尺試験と詳細3次元解析を組み合わせて評価する。ガス巻き込みについては炉容器上部の大型部分モデル試験と3次元解析、配管系の流動励起振動についてはホットレグ配管の1/3モデル試験などで対応する。その他、温度成層化問題、サーマルストライピング問題、エロージョン対策についても全体縮尺モデル試験を含めて開発を行う。また、崩壊熱除去に関する自然循環冷却特性についても部分モデル試験と3次元解析による検討を行う。
二重管の信頼性はどうなのか、製作も容易ではないように思う。このような難しい技術を採用する目的が一つはっきりしない、二重管にしてもギロチン破断の想定を免れることはできないのではないか、「もんじゅ」への影響はないのか。また、メンテナンスフリーと考えているなら、その根拠はなにか。
A3 この二重直管型SGは機器開発の目玉としてやっている。ナトリウム−水反応に対する信頼性改善を目的に採用した。内管と外管の共通要因破損、一方が破損した場合の他方の従属破損が発生しないことを、定期的な内外管の健全性を担保することにより、2重管同時破損を想定外とできる。内管と外管の独立破損の重ね合わせに対しては、内外管のギャップを狭めることにより破損伝播防止に十分なレベルにまで想定される漏洩率を低減可能である。ギャップ3μ以下の間隙で高い密着度の二重管を試作できることは確認しており、今後は30メートル級の長尺管製作の信頼性、二重管の亀裂進展防止確認、寿命期間での信頼性維持などについて開発を行う。熱膨張対策ではシェルサイドへのベローズの採用、伝熱管相互間の熱膨張差の評価など実施している。本概念は、「もんじゅ」のそれとは全く異なっており、「もんじゅ」の安全性は本概念とは別に説明されている。また、決してメンテナンスフリーとは考えておらず、二重管検査用ISI装置も併せて開発している。
二重管とガードベッセルを組み合わせた二重バウンダリの系統構成でナトリウムと外部を隔離する方法をとっているが、配管二重化の目的が理解し難い。二重管の内管の検査、健全性保証、サポート、許認可性などの問題がどのように解決されているのか。二重管にすることによって破損確率は減るのか。
A4 二重管の採用はあくまでもナトリウム漏洩対策として、その影響を局限化するために採用したものであって、これで破損確率の低減を意図したわけではない。2重管としたことによって内管の信頼性が損なわれることのない設計が可能と考えている。まず、主冷却系配管そのものの長さが低減、小口径の枝管を設けない、計装類も配管バウンダリを貫通させないなどの設計思想を徹底し、バウンダリの信頼性向上を図っている。許認可性については内管のLBB成立性について解析及び実験データの取得を進めており、その成立見通しを得つつある。検査については、LBBが成立する見通しがあることから漏洩連続監視を基本としており、2重管構造でも問題なく対応可能である。許認可性から検査の必要は特にないが、財産保護の目的などでファイバースコープなどによる目視などが可能である。配管の支持については、2重管構造であっても対応可能である。
思い切った配置のコンパクト化をやっているが、補修性に照らしての検討はどの程度行ったのか。燃料交換系の存在はナトリウム炉の「泣き所」であるが全体構造や経済性に反映されているのか。保守・補修時のナトリウムドレン容量は十分か。
A5 ループ数を低減したため保守対象となる機器数が減り、ループ毎に独立した保守スペースを確保、またアクセスルートも十分に確保している。標準定期検査日数の評価例では37日という数字が出ている。ドレン容量としては、一次系は1ループ分のドレンが可能な166m3を、また二次系は1ループ分のドレンが可能な370m3を、ダンプタンクにより確保している。また、原子炉容器を含む1次系全体のドレンを行う場合には、1088m3の仮設のナトリウム備蓄タンクを利用してドレンすることを考えている。
燃料交換システムは指摘のように重要な検討点で、実績のある炉外燃料貯蔵槽(EVST)方式をベースに原子炉構造と整合をとりながら設備自体と運用の合理化を検討している。即ち、炉容器径の縮小化、燃料交換期間の短縮、設備物量の削減を狙った。
フェニックス炉、スーパーフェニックス炉、BN600などの海外の先行炉で発生した技術的問題は反映済みか。また、仏ではナトリウム冷却炉は止めてHe冷却高速炉に開発路線が変更されていると聞くが、日本は相変わらずナトリウム冷却炉でいいのか。
A6 仏、露だけでなく米英などの先行炉の経験は十分検討している。特にスーパーフェニックスの計画停止直前に行われた仏の原子炉規制局(DSIN)の指摘事項については入念な検討の上、概念設計に反映している。
指摘のように、仏では高温ガス炉を次世代の選択の一つとして特に水素製造の期待の下に開発に着手しているが5万kWtの実験炉の建設を2015年に想定している程度である。仏はナトリウム冷却炉の開発経験を豊富に有しており、EdFのタンチュリエ会長付顧問が1/20、日本の長計についての「ご意見を聴く会」で述べた展望ではEPRのリプレースとして40年頃にナトリウム冷却炉の導入を考えているとのことである。
今の段階で完成品に近い軽水炉を意識しすぎて建設費18万円/kWeといった無理な設計をする必要があるのだろうか。ナトリウム炉には予熱系、アルゴンガス系、窒素ガス系、ナトリウム純化&処理系、ライナーなどなど、軽水炉にない設備・系統があり、物量にしてもJNCの検討のように低減するとは急には信じられない。更にソフト面でも軽水炉に比較して検討事項が多いと考えており、物量だけで比較することも問題のように思う。
A7 ナトリウム冷却炉の開発が世間に認知されるための最初の関門は経済性の見通しがあるかどうかにあると認識している。現時点の問題と言うより、可能性の問題と認識して検討を進めて来た。
発電プラントの建設費の算定は、これまで建設実績に基づいて評価されるのが一般的であるが、高速炉プラントは、実用炉の建設実績がないため、高速炉プラント概念設計データを元に建設費を評価している。具体的には、米国の軽水炉用原子力施設のデータベース(EEDB)と設計メーカのコスト分析手法やノウハウをベースに、プラントを構成する機器、容器、配管について、それらの物量、材質、冷却材流量や熱輸送量、各システム設計のエンジニアリング費などに基づき、建設コストを積み上げるボトムアップ方式の計算コードであるコマンドコストコード(CCC)を用いている。このCCCを高速炉プラントに適用可能とするため、米国の高速増殖原型炉CRBR設計に携わったベクテル社及びロックウェル社の技術者の協力の元、物量単価等のデータベースを高速炉用に拡張している。そこでは、各設備・機器毎にコスト評価式を設定する場合に、モジュール型炉の様な複数の原子炉施設を対象とする時には、治具、工具、図面等の第一基目にしか発生しない費用や製造技術の習熟によるコスト低減効果を考慮できるようにしている。また、物量単価はCCC作成時点での米国の物価や人件費ベースで作成されているため、評価時点の差による物価や人件費の上昇効果(エスカレーション)や日米価格格差等も反映している。このCCCは、高速増殖炉の設計研究に10年以上用いられてきており、実用化戦略調査研究でも、これを引き続き用いて検討している。
フェーズIでは炉型、燃料、再処理法を多岐に組み合わせて検討されたとのこと、そのようなことが可能なデータ、判断基準、根拠が存在するのか、そのための費用は?そして耐えられるのか?と懸念される。過去の蓄積も有ることであり、ナトリウム炉/UO2または金属燃料/湿式または乾式再処理ぐらいに絞って重点化すべきではないのか。フェーズII作業にフェーズIを引きずる必要があるのか、疑問に思う。また、実用化のステップの中で、初号機が必要になるのが何故2030年ごろになるのか、本戦略調査研究とGenIV(国際協力)との関係などを知りたい。
A8 フェーズIでは入手可能な資料の範囲で広範な組み合わせのスクリーニングを行ったが、フェーズIIでの今後は重点的に開発を進めてゆくべき概念を明確にしていく所存である。現在までの状況ではご指摘のような方向になると考えている。
2030年は商用炉導入の時期を2050年として逆算したものである。国際協力によって推進するのが趣旨であり、本実用化調査研究の成果を踏まえてGenIVに協力して行きたい。
「もんじゅ」のようなループ型に拘った炉型選定になっているように思う。ナトリウム冷却炉としてタンク型を検討しなかったのは何故であろうか。仏のPhenix炉、Super Phenix炉、米のEBR-II、現在稼動中の露のBN600など、発電炉としての実績ではタンク型の方が多い。一次系のコンパクト化の点ではループ型を明らかに凌いでいるように思うし、経済性のポテンシャルは高いと思われるがどうか。原型炉と実証炉が同じ型式である必要はないと思う。
A9 フェーズI作業においてメーカーなど提案のタンク型3炉型と大型ループ型の比較評価を行っている。タンク型は一次系機器に対する中性子遮蔽対策、炉心や機器の集中配置のもたらす課題、伴う保守・補修性の問題などがあり、二次系簡素化にも移行し易いループ型を選定した。但し、その他の問題では両者は同等と評価している。
○ 長計策定委員会におけるFBRの議論を伺うと、今回うかがったJNCが進めている実用化戦略調査研究の内容をベースにしているようで問題があるように思う。特にナトリウム冷却炉の概念設計についてはもっといろいろな考え方があるのではないか。現在JNCで検討されているような極端な物量低減を狙った革新的なものではなく、過去の内外の技術的蓄積をベースにした、もっと現実的な設計の実証が先に来ないと物は出来ないのでは。実証炉の段階ではコストより信頼性を重視してしかるべきで、物量低減を狙った無理な設計をしてはならないと思う。
○ FBRは軽水炉に比べて中間ループという余計な系統を有している他、アルゴンガス系、ナトリウム処理系、予熱系、ライニングなどFBR特有の設備を持っている。軽水炉より物量が少なくなるというのは直ちに納得できないが、例え物量低減が実現したとしても、物量評価がただちにコストの比較にはならないのではないか。但し、この議論に対抗して、FBRは低圧設計であり材料の肉厚は薄くてよいこと、ナトリウムの熱伝導率は水に比べて桁違いに大きいので炉心や熱交換器がコンパクトになることなど物量的には有利な面もあるとの議論があった。コスト評価については、JNCが用いている「コマンドコスト」と称する評価コードは米国でも実績があり、評価対象になった設計概念の成立性はとにかくとして、物量とコストの関係についてはかなり信頼できるものであるとの「援護射撃」があった。
○ 火力や軽水炉とのコスト比較はFBRに対しては不要との議論がある。2050年頃までは軽水炉(プルサーマル)が主役でやれるはずで、それ以降になると資源的にFBRによるリプレースに依存せざるを得なくなる、軽水炉の後の期待感としてFBRが見えてくる。コストの話はついて回るが、あまり大事な議論にはならなくなるのではないか。エネルギーコストは高価になるし、FBRが軽水炉より安価でなければならないと言う議論はなくなる。フランスのEdFやCEAでは、核燃料サイクル論はあっても、軽水炉/FBRの経済性比較論は存在しない。
○ 現在はJNCの中間報告までの内容を勉強した段階である。JNCの立場にたつと、実証炉の概念を検討するにしても経済性に全く見込みのないものではプロジェクトを立ち上げることが出来ないのではないか。JNCの概念設計はそれほど進んだ段階にあるのではないので、実用炉としての経済性見込みを見通した段階で、実証炉実機の設計概念はこれから検討されることになるのではないかと思う。
○ 「もんじゅ」の役割は重要である。にも拘らず、何故約10年も計画を止めたかが問題である。国際共同研究を含め、「もんじゅ」を次の開発路線に有効に繋げて行くことが重要である。設計手法の確認、検査技術、燃料交換の問題、ナトリウム取扱い技術、設備上無理をしている問題点の発掘などの運転経験に基づく技術の習得の他、照射炉としての長寿命燃料、材料の開発などのR&Dの実施(国際協力を含む)に大きな期待が寄せられている。ただ、日本には原子力船「むつ」の苦い体験がある。「もんじゅ」で貴重な経験を培う必要があるが、「もんじゅ」を「むつ」にしないような十分なPA対策が必要である。日本原燃が六ヶ所再処理工場のウラン試験に臨み実施した事前トラブル想定分析とPA対策には学ぶべきものがある。また、「常陽」などの経験が有効に「もんじゅ」以降に生かされるよう、JNCと国のリーダーシップに期待したい。
○ 高速増殖炉開発については、実証炉を含めた開発体制が問題である。将来は電力会社が運転するのであるから、民間の使い勝手の良いプランとでなければならないが、「もんじゅ」の時とは異なり電力は自由化で縛られメーカーは疲弊している現在、開発資金は国に依存せざるを得ないのではないか。
この場合の体制として次の二つが考えられる。
国主導・民間協力型
石炭ガス化の例では、開発費は国が出し、民間がやるようになっている。
開発体制としては原子力研究開発機構(仮称)が中心になることになるのであろうが、PNCが実施してきた過去の国家計画の例を見るとATR、FBR、ウラン濃縮すべてについて工業所有権の帰属問題を始め技術移転が円滑にいったことがなかった。これらの問題をも含めて、プロジェクト再立ち上げの初期の段階で、きちんとした枠組みを作っておく必要がある。
民間主導型
メーカー体制については、米国GE社のPRISMや東芝の小型FBRのように、国が資金を出して入札による「トップランナー方式」によってメーカーを選択する 案が提案されたが、「もんじゅ」のケースでもメーカーは基本設計の段階で全体を掌握することが不可能であったこと、収益分岐点も見通せない段階で開発リスクを負担し得るメーカーが存在するであろうかなどの議論となった。思い切ったリスク挑戦型の企業が現れたとして、技術的に信頼できる建設に結びつくかどうか懸念されるとの議論である。
○ FBRについては原子力委員会がここまでやってくれたことを多とすべきであり、体制を含めた今後の展開については、もう行政庁の仕事であろう。当会としても積極的に提案して行くべきであろう。
活性化分科会での検討を含めると、4回にわたって報告討議がなされ、ナトリウム冷却型高速増殖炉に関する、サイクル機構での研究開発の現状を、相当程度把握することが出来た。その内容は相当程度詳細なつめが行われていて、次の段階、実証炉の設計に進む準備がかなりの程度に進んでいることを、認識させられた。
この座談会においても、そちらへ進む体制などの論議を行うべきかとも考えたが、今回は現状の把握までというところで一度幕を閉じることとした。今後の展開については、関連部門の動きなども見ながら、方向付けたいと考える。
何回もの会合において、参加された方々の、熱心なご討議に感謝申し上げたい。
(1) 核燃料サイクル開発機構、「サイクル機構技報」No.24別冊、2004.11
(2) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)資料第2号「高速増殖炉サイクルの意義」
(3) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)資料第3号「高速増殖炉サイクルの研究開発に関する我が国の政策について」
(4) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)資料第4号「高速増殖炉サイクルに関する国際的な研究開発の現状」
(5) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)資料第5号「我が国における高速増殖炉サイクルに関する研究開発の現状」
(6) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)参考資料1「高速増殖炉サイクルの実現性について」
(7) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)参考資料2「高速増殖原型炉「もんじゅ」で得られたこれまでの主な成果(総合機能試験以降の成果)」
(8) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)参考資料3「高速増殖炉サイクルの研究開発投資効果」
(9) 原子力委員会新計画策定会議(第16回)参考資料4「世界の高速炉サイクル開発の動向」