本文に戻る      ◇ 原子炉熱利用・天然ガス水蒸気改質法

 現在、水素の製造法として最も一般的に使用されている天然ガスの水蒸気改質法に原子炉の熱を供給して、天然ガス使用量の節減、炭酸ガス排出量の低減を図る方法である。図の反応式に示したように水蒸気改質反応はかなり大きな吸熱反応なので、反応に必要な熱を供給する必要がある。通常の方法は、天然ガスの一部を燃焼させて(自燃式と言う)反応熱を供給している。この熱を原子炉から供給すると、この燃焼分の天然ガスを30%程度節減することが可能になる。
 水蒸気改質反応は、その反応平衡から750℃〜900℃の温度を必要とするので、高温ガス炉と組み合わせる方法が研究されている。この方法による水素製造は、原研が高温工学試験炉(ガス冷却炉)を使用して2008年に実証する予定になっている。
 図に示した反応式において、水素、炭酸ガスなどの生成物を反応域から取り除くと、低い温度でも反応は進行する。反応領域にパラディウムなどの水素透過性の良い膜を置いて、水素を除去しつつ550℃程度で反応を進行させる方法(メンブレン・リフォーマー法)が研究されれいる。この方法は、温度的に高速炉などのナトリウム冷却方式と組み合わせが可能になる。この方法で得られる水素は、膜を透過しているので99.999%以上の純度になっており、燃料電池にそのまま供給できる。なお、生成した炭酸ガスの分離プロセスがこのシステムに組み込まれているので、将来炭酸ガス固定が必要な際は有利である。(堀 雅夫)