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◇エネルギー | |
物理的な仕事ができる能力の総称であり、適切な日本の言葉(訳語)がない。高い所にある物はエネルギーを持っている。燃える物は酸化するとき熱を出す。これもエネルギーである。エネルギーにはいろいろな種類*がある。エネルギーは他のエネルギーに形を変えることができるが、無からエネルギーを作ることはできない。
動物が生きていくためにはエネルギーが必要である。食物を消化し、蓄えたエネルギー源を呼吸による酸素で酸化させ、これをエネルギーとして生活している。動物の採る食物の基は植物である。植物は葉緑素の働きで、空気中の二酸化炭素ガスと、根から吸い上げた水を太陽の光で合成し炭水化物とすることができる。人間は食物からのエネルギーだけでなく、火を発見し、植物を燃やして得られるエネルギーを巧く使って生活を改善してきた。
18世紀の終わり頃、蒸気機関が発明され、石炭が動力源(エネルギー源)として使われるようになると人間の暮らしは一変した。間もなく電気が発見され、内燃機関が発明された。今までの再生可能エネルギー*に頼っていた人間のエネルギーの主流は化石燃料*に移っていった。文明を勝ち取った人間はエネルギーなくしては何もできないが、エネルギーさえあれば相当のことができるようになった。一人当たりのエネルギー消費量は急速に伸び、それと共に人口も増加の一途をたどった。この相乗効果により化石燃料の消費量は加速度的に増加した。
これにより何が起こるだろうか。一つは化石燃料資源の枯渇の問題である。更にもう一つは化石燃料の燃焼により発生する二酸化炭素ガスの影響である。空気中の二酸化炭素ガスの増加は、地球を覆う空気が太古の昔に帰って行くことを意味し、地球温暖化*等さまざまな影響が心配されている。それでは化石燃料以外にエネルギーの基はないのであろうか。石油代替エネルギー*の項目で調べてみよう。(益田恭尚) |
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◇エネルギーの種類 | |
高い所にある物は、地上にあるものに比べより多くの仕事ができる可能性を持っている。これを位置エネルギーと呼ぶ。スピードを出して走っている自動車は運動のエネルギーを持っている。燃える物質はお湯を沸かすことによりタービンを回すことができる。従って高温な物質は熱エネルギーを持っている。燃焼に限らず化学変化に際し熱をだすものもある。これを化学エネルギーと呼んでいる。電気はいろいろな仕事ができるので電気エネルギーと呼んでいる。光や電波もエネルギーを持っており電磁波エネルギーと呼んでいる。どのような単位があるかはエネルギーの単位*を参照されたい。
高い所の水が水車を回して電気を起こすように、エネルギーは互いに変換することができる。しかし、変換する際にエネルギーが全て変換できるわけではなく、多くが熱や音などになって失われる。この変換の程度を示すものが効率である。水力発電などの効率は95%以上にも達するが、蒸気機関などは30%にも達しない。
エネルギーでもう一つ忘れてはならないものに原子力エネルギーがある。今から100年程前アインシュタインにより相対性原理が発見(1905)され、質量もエネルギーになりうることが予言された。その後間もなく原子力発電*が実用化されるようになり、人間はエネルギーから解放されたと考えられた。(益田恭尚)
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◇エネルギーの単位 | |
単位を国際的に統一しようという動きがあり、日本ではこの国際単位(SI単位)を積極的に受け入れることにした。SI単位は合理的に決められているが直感的には分りにくいものが多い。
エネルギーの単位は仕事の単位と同じ、ジュール:Jで表わす。仕事とは、ある力でどれだけ動かしたかを示し、1ジュールは1J=1N・mである。 力の単位ニュートン:Nは単位質量を持った物体に加速度を与えることで定義される。(1Nは1kgの物体に1m/s2の加速度を与える力)
エネルギーの単位として以前は重力単位も使われていた。物体を重力に抗して持ち上げる仕事で定義し、1kgの物体を1mの高さに持ち上げる仕事が1kg・mである。(1kg・m≒9.8J)(Nは感覚的に分りにくい、1気圧は約101,300N/m2=1013ヘクトパスカルである)。
熱量の単位も仕事の単位と同じくジュール:Jで表わす。 食品の熱量の単位としてkcalを使うことも認められている。1calは1gの水を1℃温めるのに相当する熱量である。1,000cal=1kcal≒4,186Jである。
燃料の持っているエネルギーも本来はJで表わすことになっている。しかし、感覚的に分りにくいので慣用的に石油換算で表わされることが多い。 石油1t≒石炭1.5t≒天然ガス1,100m3≒1,000万kcal≒1.16万kWh=420億Jに相当する。(よく使われるバレルでいうと、7.3バレルが約1tである)
単位時間当たりどれだけの仕事をするかを動力と呼ぶ。これをワット:Wで表わす。1W=1J/sである。 電力の単位ワット:Wは動力の単位と同じで、電流(アンペア:I)と電圧(ボルト:V)の積として、W=I×Vとして計算できる。1Wの電力を1秒流せば1Jのエネルギーを使ったことになる。慣用的に時間の単位として時間:hを用い動力の単位もkW=1,000Wを用いてkWhで表すのが一般的である。1kWh=360万Jである。(益田恭尚) |
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◇化石燃料 | |
人間は太陽エネルギーから毎年得られる再生可能エネルギー*に頼って生活してきた。そして、やがて燃える水(石油)や燃える石(石炭)を発見した。これらは薪に比べ火力が非常に強いことが分った。始めは燃料や灯りとして少しだけ使っていた。しかし、蒸気機関の発明(1775)で産業革命が起り、燃料を動力として使うようになった。
石炭や石油はどのようにして地球上に存在することになったのだろう。石炭は何億年も昔、太陽の光の同化作用で育った木材が、また、石油は海の底の大量のプランクトンが地球の熱と圧力で変化してできたものと考えられている。このように太古の生物が変化してできたものであるから化石燃料と呼んでいる。
化石燃料はこのように何億年もかけて太陽と地球が人類に与えてくれた恵みなのである。化石燃料を燃やし続けると、燃料中の炭素が漸次二酸化炭素ガスに変化し、大気は太古の状態に戻っていくことになる。これは地球環境が人間の暮らしに適さない状態に戻っていくことを意味している。
化石燃料は化学工業の材料にも使われている。化石燃料のような有機物は現在の人間の力では化学的に合成することができない(酵素を利用するという考え方はある)物質で、人類の続く限り有効に利用していく必要がある。単に燃料として燃やしてしまってはもったいないのである。(益田恭尚) |
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◇石油代替エネルギー | |
石油は火力も強く、灰もでない、輸送や貯蔵にも便利である。第二次世界大戦後、中東に大量の石油が埋蔵されていることが発見された。戦後の経済の発展に合わせ、石油は利便性と経済性から火力発電用の燃料、工場の動力や熱源として、そして自動車、飛行機、船舶を始めとする輸送機関の燃料として、急速に消費量が増大していった。
「このままでは地球資源が枯渇して大変なことになる」とのローマクラブの警告*が出されていた矢先、石油供給量の減少から1972年オイルショック*が発生した。エネルギーの安全保障*の点から考えても、石油資源の枯渇から人類を守るという立場から言っても、また、石油価格の異常な上昇を防ぐためにも、石油に代わるエネルギーの開発導入の必要性が叫ばれるようになった。
新エネルギー*の研究などが加速したが、石油代替エネルギーの旗手と考えられたのが、当時、漸く開発が軌道に乗り出していた原子力発電*であった。(益田恭尚) |
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◇メタンハイドレイド | |
天然ガスの主成分であるメタンガスが低温・高圧の環境でシャーベット状の固体物質(CH4・5.75H2O)になっているもので,シベリア,アラスカ,カナダなどの極地の石油・天然ガス田の永久凍土下層下部付近や水深300m以上の海底地層中に存在する。その総量は従来の化石燃料資源を上回ると言われており,しかも我が国周辺の海域においても2.7兆立方メートルと,100年分の天然ガス使用量に匹敵する量が推定されている。
先進国よっては、これからの有望な資源としてすでに試験的に採掘を開始している。膨大な量のメタンガスが凝縮されているため、点火すれば勢いよく燃え出す。そのため安全性のほか、回収率が悪いと地球温暖化ガスを放出する結果になるなど乗り越えなければならない多くの問題もある。(岩井正三) |
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◇新エネルギー | |
わが国の新エネルギーについての研究開発は、これまで通産省を中心として、サンシャイン計画が推進されてきた。サンシャイン計画は、1974年に主に新エネルギーの技術研究開発を目的としてスタートし、太陽エネルギー、地熱エネルギー、石炭ガス化・液化、水素エネルギーなどの開発に取組んできた。
その後、1993年から、これまでのサンシャイン計画と省エネルギーについての研究開発として進めていたムーンライト計画とを統合し、合わせて地球環境技術の研究開発にも取り組むことを目的としたニューサンシャイン計画(エネルギー・環境領域総合技術開発推進計画)を策定し、持続可能な成長とエネルギー環境問題の同時解決を目指した革新的な技術開発を開始した。
1994年12月わが国では「新エネルギー導入大綱」を閣議決定したが、新エネルギーとしては、次のものがあげられている。@太陽光発電、A太陽熱利用システム、B廃棄物発電等、Cクリーンエネルギー自動車、Dコージェネレーション・システム、E燃料電池、F未利用エネルギー活用型熱供給システム、Gその他の両生可能エネルギー(風力発電等)。
新エネルギーについては、長期的にはある程度の潜在力を有しているものの、自然条件、経済性、需要の確保などそれぞれ課題を抱えており、その導入は決して容易に達成できるものではない。
総合資源エネルギー調査会は2001年7月の長期エネルギー需給見通しで、新エネルギーの項目を整理するとともに導入目標を示し、エネルギー供給に占める新エネルギーの割合を、2010年度には3%程度まで高めることを目標にしている(1999年度の実績は1.1%)。(下表参照)(加藤洋明)
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1999年度(実績) |
2010年度(目標ケース) |
原油換算(万kl
) | 設備規模(万kW) |
原油換算(万kl ) |
設備規模(万kW) |
・太陽光発電 |
5.3 |
20.9 |
118 |
482 |
・風力発電 |
3.5 |
8.3 |
134 |
300 |
・廃棄物発電 |
11.5 |
90 |
552 |
417 |
・バイオマス発電 |
5.4 |
8 |
34 |
33 |
・太陽熱利用 |
98 |
- |
439 |
- |
・未利用エネルギー |
4.1 |
- |
58 |
- |
・廃棄物熱利用 |
4.4 |
- |
14 |
- |
・バイオマス熱利用 |
- |
- |
67 |
- |
・黒液・廃材 等 |
457 |
- |
494 |
- |
新エネルギー供給計 |
693 |
* |
1970 |
* |
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◇再生可能エネルギー(自然エネルギー) | |
使用してもエネルギーが補給されて、枯渇しないエネルギー源。
現在人類が利用しているエネルギーの大半は化石燃料*と呼ばれる石炭、石油、天然ガスで、一度しか利用できない。これに対し再生可能エネルギーとは太陽エネルギーや水力、風力、波力、潮力、バイオマス、地熱などのエネルギーで、これらは自然の中に常に存在することから自然エネルギーとも呼ばれている。
再生可能エネルギーのほとんどが太陽エネルギーによって補給されているために枯渇しない。水力は太陽熱によって蒸発した水を高所に溜めて利用する。風力は太陽熱による気流の変化で起きる風を利用し、風によって出来る波を利用しているのが波力、海面の太陽熱による温度上昇を利用しているのが温度差発電である。
太陽から地球に到達するエネルギーは、1平米あたり1.37kWで、その約70%が地表に届いている。 化石燃料も地球上で動植物が太陽エネルギーを蓄えたものであるが石炭や石油となるまでに数億数千万年が必要であり、再生可能とは言えない。しかし、生物体を直接燃料などに利用するバイオマスエネルギーは放出二酸化炭素を植物の生育で再生することができる。
地熱と潮力は太陽とは直接関係なく、地熱は地球内部にマグマとして蓄えられた熱エネルギーの利用であり、潮汐エネルギーは太陽と地球と月の引力による海面変化を利用するものである。
地球温暖化防止のための二酸化炭素放出量の低減、化石燃料資源の有効利用のためにも再生可能エネルギーの利用促進が望まれるが解決しなければならない技術的経済的問題が多く現状の利用率は全体エネルギー使用量の数パーセントである。(白山新平) |
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◇太陽光発電 | |
太陽のエネルギー量は膨大なものであり、また環境汚染を起こさないクリーンなエネルギー源である。しかしながら、太陽エネルギーの密度は低く、天候・時間に左右されるエネルギー源である。数字で示すと、わが国の夏の晴れた日中では1平方メートル当たり1kW程度になるが、年間に平均すると1平方メートル当たり140W程度になる上、光電池の変換効率は最大でも15%が限度である。このような特性を認識し、用途に応じた太陽エネルギーの利用方法が研究されている。
太陽光発電とは、太陽電池と呼ばれる半導体によって太陽光を直接電気に変換する発電方式であり、早くから人工衛星や灯台等の主電源として使用され、その利便性とコスト引き下げの努力の結果、電卓、腕時計などの民生用に利用されてきている。しかし、一般の電力供給用としては、価格が高く、かつ広大な設置面積を必要とすることから、応用範囲は限られていた。
太陽電池本体の価格は、1973年の石油危機当時1W当り数万円していたものが、現在400円程度まで下がってきている。最大のデッドスペースである住宅の屋根等を活用して導入を拡大するためには、量産効果による価格低減を換起することにより、太陽光発電市場を早期に自立化させることが不可欠であるとの立場から、国は1994年度から個人住宅を対象に太陽光発電システムの設置に対して、設置費用の一部の補助を行なっている。また、余剰の発電電力は電力会社が適正な値段で買取る方策なども実施されている。このような施策によって、個人住宅用などで使用され始めている。この結果、わが国の太陽光発電の導入実績は1999年度末約20万kWとなり、世界第1位となっている。
他方、太陽電池の変換効率は研究開発の進展に応じて向上してきているものの、天候・時間等を考えると設備利用率は12%程度(最近の原子力発電所の設備利用率は80%を越えている)と低い。例えば138万kW級原子力発電所1基分を代替する場合に必要な面積は、業務用の場合約92km2(山手線の内側の面積の1.5倍)、住宅用の場合約262万世帯(全世帯の屋根が利用できるとした場合、愛知県の全世帯数と同程度)と膨大なものになる。我が国の電力供給の一翼をになうことは期待できないが、環境負荷が低いという点からは、導入をさらに進めることが必要である。総合資源エネルギー調査会は2001年7月の長期エネルギー需給見通しで、太陽光発電の開発目標を482万kW(1999年度実績の約23倍)と定め、これの実現のための諸々の研究開発や施策がなされている。(加藤洋明) |
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◇風力発電 | |
風力発電では風の速度エネルギーを翼(風車)の回転力に変換したのち、発電機を回して発電する。風車発電技術の焦点は、変動の激しい自然風からいかに安定した電力を得るかということと、耐久性の実証にある。
風力エネルギー=0.5×(空気密度)×(受風面積)×(風速)3 で示されるが、実際には増速機の機械損失等があるため、最終的に風車出力として利用できるエネルギー比率はこの25〜40%である。また運転範囲はせいぜい風速2~3m/sから20~30m/sの範囲で、強風時は強度上より停止する。
欧米では平坦地域でなお且つ安定的に風が吹く地域が多いが、我が国では起伏に富んだ地域が多く、風の変化が激しく、風力発電に適した地が少ない。また台風地帯であるので強度上の問題のために大型化がむつかしく、コスト増要因となっている。また隣接風車の影響を受けるので離して設置する必要があり、約2000m2/kWと広大な面積が必要となり、大容量発電には適していない。我が国の場合には風向の良い場所でも年間稼働率は20%前後であり、独立電源としては成り立たず、離島や岬等での補完電源として適している。
風車の羽根(ブレード)の数は1〜3枚が用いられている。枚数が少ないと回転数が上がり騒音が大きくなるが、軽量化・低コスト化・設置が容易という利点がでる。一方3枚ブレードは振動が起きにくく安定性がよく、現在では主流になっている。
ブレードの材質は軽量で耐久性が良いガラス繊維強化プラスチック(GFRP)が主流となっているが、風力発電を環境面で特徴付けるには、台風地域の我が国の環境下でのこれら設備の耐用年数とその廃棄物量についての考察も必要である。
単機最大出力は1995年頃までは500kW程度であったが、2000年頃になると600~1000kW(翼径約60m)の機種が主流となってきて、さらに最近では2000kW以上の機器の開発/実用化が行なわれている。
現在日本における風力発電設備は36万kW(2001年)で、2010年度までに300万kW(稼働率20%として年間約50億kWhとなり、我が国の総発電量の0.5%程度)にするとの政府目標である。(松岡強) |
| ◇揚水式発電 | |
水車の歴史は古く、蒸気機関が発明される以前から動力として利用されていた。発電事業が始まると間もなく、水車を動力として利用する水力発電が始まった。水力発電は大きな水源があれば、一度設置すれば動力費が掛からない上、必要なときに何時でも発電できるという自然エネルギーの利用方法としては非常に優れた方法である。最新式の水力発電所は遠隔地からの指令で流量を変え、出力を変えるという無人運転が可能で、保守要員以外人手が不要である。 しかし、わが国などでは水源の容量が少さく、必要なときに水を確保することが難しくなってきている。一方電力は貯めておくことができないという基本的弱点を持っている。このお互いの弱点をカバーするため、下流側に下池を設け、電力が余っている時に下流側の水を上流側の上池に汲み上げ、電力が不足する時にそれを利用しようと言う考えがでてきた。これが揚水式発電である。 特に、わが国のように昼間の電力需要が夜間の電力需要に比し極端に高い場合(2倍以上に達する)、そのピーク電力をどのようにして供給するかは、経済的にみて大きな問題である。 一方、原子力発電所は設備償却費が高く燃料費が安い特徴があり、最新火力と言われるコンバインドサイクル発電は従来火力に比べ発電効率が高いため燃料費が比較的安い、このような特徴を生かすには夜間部分負荷運転をするより全出力運転を続けた方が有利である。従って昼間のピーク電力に対応するには、従来型火力を朝起動し、夕方停止することで対応している。しかし、火力は起動に数時間を要しかつ急速な負荷変化に追随することが出来ず、即応性がない。 また電力システムの信頼性を確保するためには、系統事故等の場合のバックアップ電源を確保しておく要があるが、火力発電のみでは、即応性がなく十分な信頼性が確保できない。 このような用途には、数分で起動・停止でき、かつ起動後数秒で出力を大きく変えることが出来る水力発電が向いており、専用の揚水発電所が建設されるようになった。 揚水発電所には、揚水運転で汲み上げた水のみで発電する純揚水発電所と、在来水力同様、一部天然の河川水も用いて発電する混合揚水発電所がある。上池と下池が比較的高落差で得られるような立地があれば、これらの池は比較的小型ですむ。下池の水をポンプアップすると揚水効率は90%程度であり、この水を再利用する場合、発電効率は80?90%程度であるから、当然エネルギーロスが生ずる。しかし、それを計算に入れても、新規に火力発電所を建設するより有利と評価できる場合は、この揚水発電所が有利となる。 山が海に迫っているような立地が得られれば、海を下池に利用できるため経済的に有利であるため、海水揚水が一時検討されたが、海水が山の森林を枯らすなどの公害を起こす恐れがあり、この種の海水揚水は実用化されていない。しかし現在、これらの公害を起こさない海水揚水として、海を上池とし700-800m下の大深度地下に大きい空洞を掘削してこれを下池とする大深度地下海水揚水発電所の計画が検討されている。(益田恭尚)
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