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◇核燃料サイクル
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日本国内には水力、地熱や僅かに産出する化石燃料による4%の国産エネルギーしかない。これに原子力発電を加えても20%であり、残りの80%のエネルギー源は、長期的展望からは不確実で不安定な海外からの輸入に頼っている。
このような不安定で不確実な日本の将来エネルギー資源問題を解決し、安定供給の確保を図ろうとするのが核燃料サイクルである。
原子力発電の燃料として使用されているウラン資源も可採年数は約60年といわれており、現状のように天然ウランに0.7%しか含まれていないウランを数パーセントに濃縮して使用しているだけでは、何れ化石燃料と同様に枯渇する運命にある。しかし、ウラン資源は一度使った燃料の殆どをリサイクルできるという、他の資源に無い特徴がある。使用済燃料に含まれているウランとプルトニウムはリサイクルしなければ廃棄物であるが、これを回収して再び燃料として加工すれば、純粋の国産エネルギー資源として利用できる。
このように核燃料サイクルとは、原子力発電所の使用済燃料を再処理し、ウランやプルトニウムを回収し、再び燃料として利用することを言う。当面の利用方法がプルサーマルである。プルサーマル燃料は元の燃料の最大2割から4割程度に相当する燃料として活用でき、その分ウラン資源可採年数を延長できることになる。さらに、将来技術開発によって高速増殖炉が実用化されれば、天然ウランをエネルギー資源として最大限に活用することができ、飛躍的に多くのエネルギーを生み出すことが可能となるのでウラン資源の有限性を事実上克服でき、日本の超長期にわたる安定エネルギー供給問題が解決されることになる。(後藤征一郎) |
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◇再処理
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天然ウランは核分裂しにくいウランが99.3%を占めており、核分裂しやすいウラン235は僅か0.7%しか含まれていない。日本の原子力発電所はこのウラン235の含有率を3〜4%程度にまで濃縮したものを燃料として使用している。原子炉の中で使われた燃料はウラン235が燃焼して約1%に減っているが、使用済燃料の中には天然ウランに含まれている以上のウラン235が残っており、加えて核分裂しにくいウラン238が原子炉中で中性子を吸収してプルトニウム239という核分裂物質が生成され含まれている。使用済燃料を化学的に分離して、燃え残りのウラン235と新たに原子炉中でできたプルトニウム239を取出すことを再処理という。
日本は国民の理解を得つつ、使用済み燃料を再処理し回収されるウラン、プルトニウムなどの資源を有効利用することを基本的な考えとしており、消費した以上の燃料資源を生産する高速増殖炉の実用化までは、当面プルサーマルでこれら資源を有効に利用しようとしている。(後藤征一郎) |
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◇プルサーマル
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プルサーマルとはプルトニウムを装荷した燃料を熱中性子炉(サーマルリアクター:通常の原子炉、現在我が国を含め実用化されている原子力発電所は殆ど全てが熱中性子炉である)で利用することを言う。燃料の全重量(正確に言えば、燃料中のウラン、プルトニウムの全重量)に対するプルトニウムの装荷量(正確に言えば核分裂を起こすプルトニウムの量)のをプルトニウム富化度と言い、現在計画されているプルサーマルでは6〜7%程度である。プルトニウムを含む燃料をMOX燃料(Mix
OXide fuel:混合酸化物燃料)と呼ぶ。なお、通常のウラン燃料を装荷した原子力発電所においても炉心で燃料が燃焼するのにつれてプルトニウムが生成し、プルトニウムも燃焼するので、プルサーマルと言っても、新規に装荷する燃料にプルトニウムが含まれるかどうか、プルトニウムの燃焼量が多いこと等、量的な差があるだけで、質的な差のあるものではない。
プルサーマルは欧州を中心に海外では積極的に実施されており、現在までに50プラント以上、3,000体以上のMOX燃料の使用実績がある。我が国においても、軽水炉では日本原子力発電(株)の敦賀発電所(1号機)、関西電力(株)の美浜発電所(1号機)では昭和60年代より数体(美浜:4体、敦賀:2体)のMOX燃料が試験的に装荷され性能上も安全上も問題のないことが確認されている。また炉型は異なるが、旧動力炉・核燃料開発事業団(現核燃料サイクル開発機構)が敦賀に建設し、運転中の新型転換炉「ふげん」においては、既に700体を超えるMOX燃料が使用されており、燃料に起因するトラブルは皆無である。
MOX燃料の装荷量は、現在の軽水炉では当面、炉心の1/4程度を目標にしているが、電源開発(株)が計画中の大間原子力発電所では全炉心をMOX燃料とする予定となっている。MOX燃料の装荷により、炉心の特性、燃料の性状は通常炉心に比べて若干変わる。一例として、制御棒の効果が多少減少する、燃料及び炉心内の温度分布が多少変化する、燃料体の内部の圧力が多少上昇する等の影響はあるが、何れも炉心設計、燃料設計での対応が可能であり、安全上は通常の燃料と同等に保ちうると評価されている。また、MOX燃料の取扱についても遮蔽等通常燃料より若干注意を要する点もあるが、取扱実績もあり、特に問題となるような点はない。
プルサーマルの経済性については、MOX燃料はウラン燃料に比べれば割高になるが、原子力発電の原価に占める燃料費の割合が小さいことにより、その増減は仮に再処理費用を含めてもその影響は軽微であるとされているが、軽微と見るかについては反論もある。何れにしてもコスト評価自体試算の域を脱しておらず、またコストを現時点における瞬間値として見るか、長期的な視点を入れるかによっても評価は変わり得る。
プルサーマル利用の最大の目的は炉心で生成されるプルトニウムを再処理により回収し、燃料としてリサイクルすることにより、ウラン資源を節約、有効に利することにある。再処理で回収したプルトニウムは最終的には増殖炉で使用し、より効率的な利用を図ることが本来の姿であるが、プルサーマルの利用によってもウラン使用量を25%程度削減できるとの試算もあり、当面プルサーマルの技術を確立し、資源の有効活用を図ることも必要である。また、我が国は核不拡散の観点より「余剰プルトニウムは持たない」と言うことを国の方針としており、この点からも再処理で回収したプルトニウムを有効に利用することが必要となっている。
これに対して、原子力反対の立場からはともかく、原子力を容認する立場からも、ウラン資源の埋蔵量(現在海水中からのウラン抽出の研究も進められており、実現すればウラン埋蔵量は飛躍的に増大するが、経済的に採取が可能な見通しは得られていない)は現在想定されているよりも多く、今後の経済成長率を考慮すれば現段階では敢えてプルサーマル、ひいては再処理も不要又は増殖炉が実用化されるまでは凍結してはとの意見もある。これに対して詳細に反論することは本項の目的ではないので、@再処理はプルトニウム回収だけではなく、使用済み燃料中の核分裂生成物を分離し容量を削減すると共にガラス固化体として安定に処分可能とする機能を有すること、Aウラン資源の埋蔵量はともかく、今後発展途上国の経済発展とエネルギー需要の爆発的な増加に対処するためには、資源の価格上昇への対応を含めて、自前のエネルギー源を確保しておくことが国益上有利であること、B増殖炉の開発に時間を要するとしても、将来のエネルギー源の確保のためには技術開発を推進する必要があり、そのためには今の段階から再処理を含めたプルトニウム利用技術を確立しておくことが望ましいことの3点を指摘しておくに止める。(柴山 哲男)
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◇バックエンド問題
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原子力発電所で使用するウラン燃料は、天然ウランに含まれているウラン235を濃縮して作られる。燃料の内部にはウラン235の核分裂によって核分裂生成物が発生するが、同時にそのままでは核分裂しないウラン238の一部がプルトニウムに変わり、このプルトニウムの一部も核分裂することによって発電に寄与する。やがて燃料の中では核分裂に寄与できるウラン235あるいはプルトニウムが減少し、かつ核分裂生成物が蓄積して原子炉が運転できなくなるため、使用した燃料を取り出し、新しい燃料と交換して再び運転する。このように、ウラン鉱山から天然ウランを取り出してウラン235を濃縮しそれを原子炉で使用できる燃料集合体に成型加工するまでを原子力発電のフロントエンドと云う。
これに対して、発電を終えて原子炉から取り出した使用済の燃料の中間貯蔵、再処理*、放射性廃棄物の処理・処分*の部分をバックエンド云う。
フロントエンドに比してバックエンドがとかく問題となるのはここで取り扱う物質の放射能レベルが高く、かつそれが長期間減衰しないことにある。このため、これらの物質を人間の居住空間から長期間にわたり安全に隔離しておく必要があり、たとえば再処理で発生する高レベル廃液を固めたガラス固化体は30〜50年間一時貯蔵した後地下数百メートル以上の地層に埋めて処分する計画である。地下処分する地層は地殻変動などを考え安定な地層が選ばれる。しかしそれでも尚、予測できない天変地異の可能性について不安を表明する意見もあり、バックエンドの問題が議論されるのである。(土井 彰) |
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◇高レベル放射性廃棄物の処分
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原子力発電所の燃料の内部にはウラン235の核分裂によって発生する核分裂生成物が蓄積するが、同時にそのままでは核分裂しないウラン238の一部がプルトニウムに変わり、このプルトニウムの一部も核分裂することによって発電に寄与している。やがて燃料の中では核分裂に寄与できるウラン235あるいはプルトニウムが減少しかつ核分裂生成物の蓄積量が増してしてくると原子炉が運転できなくなるので、使用した燃料を取り出し、新しい燃料と交換する。
取り出された燃料は『使用済燃料』と呼ばれ、再処理工場に送られる。再処理工場では、再利用できるウランやプルトニウムを回収するが、そのあとに放射能レベルの高い核分裂生成物を含んだ廃液が残る。この廃液をこのまま保管するのは安全上問題があるので、ホウケイ酸ガラスと混ぜてガラス状の固体に変え、ステンレス製の容器に入れて保管する。これを高レベル放射性廃棄物という。
高レベル放射性廃棄物は、内部に半減期28年のストロンチュウム90や半減期30年のセシウム137のように放射線を出しながら熱を出し続けるものを含んでいるので、冷却のための施設に30〜50年間一時貯蔵し、その後地下300メートル以上の深い地層に処分するということが計画されている。
高レベル放射性廃棄物の処分を具体的に進めてゆくのは、2000年2月に設立された経済産業省の認可法人『原子力発電環境整備機構』で、この機構は操業開始の目安を2040年代後半として処分場の設定を進めてゆく予定である。
アメリカは商業用の再処理・リサイクル路線を早い時期に諦めたので、原子力発電所の使用済み燃料は再処理されないまま『高レベル放射性廃棄物』として廃棄する計画である。処分地としてネバタ州のユッカマウンテンが決まり、2010年に操業を開始する目標となっている。
フランス、ドイツ等もガラス固化体、使用済燃料とも地下処分の計画である。(土井 彰) |