会員座談会議事録

原子力政策大綱の見直しの要点

 

期日:20101216日(木)15:0017:00

場所:原子力技術協会 会議室

講師:東京工業大学助教 澤田哲生氏

司会:斎藤修

 

講演概要

「原子力政策円卓会議2010」は「二項対立」を超え「タブーと建前論」を排し、多様なステークホルダーが個人として集まり、立場を超えて議論する場である。世話人4名、会員約30名で構成、これまで5回の会議を開き、原子力政策大綱に見直の提言をまとめた。

見直し提言の相手は内閣府原子力委員会、原子力問題のステークホルダー、ならびに原子力問題に関心をもつ国内外のすべての人々である。

原子力研究開発利用に対する大枠的な立場の差を越えて、多様な人々が自由な立場から政策討議を行うことができる機会を実現すべきであると考えた。5回の会議で得られた意見や議論に基づいて、世話人を含む10名程度で以下の各事項について提言をまとめた。これらの提言は、原子力委員会に提出するとともに一般に公表した。

提言1:政治主導のガバナンス確立と行政組織の抜本的見直し

提言2:地域主権時代の政府と自治体との関係

提言3:熟議民主主義の時代に沿った意思決定プロセスの見直し

提言4:政策論議の実質化

提言5:柔軟かつオープンな事業・政策評価への見直し

提言6:実質的に機能し信頼される安全規制への見直し

提言7:創造的な人材養成の必要性

提言8:国際関係の視点からの原子力政策の再検証

提言9:原子力政策とメディアとの関係性の再考

なお、原子力のコアステークホルダーは従業員、消費者、株主・投資家、地域住民、供給者および取引先である。マスメディア、行政、NPO、反対派や研究機関などはその他のステークホルダーであるが、政策大綱の見直しなどでではこれらの方々が主体となっている。重要なコアステークホルダーが充分な厚みをもって人選されていないのは問題かもしれまい。特に、原子力政策への安心感の醸成には、コアステークホルダーの意見の充分な取り込みが重要であると思われる。

 

質疑討論

Q:政策大綱は原子力基本方針を実現するための政策であり、政策大綱の見直しでは、原子力の基本方針を見直すわけではないにもかかわらず、提案された事項には基本方針に関わる内容が含まれている。基本方針の見直しと誤解しているのではないか?

A:そのような内容が含まれていることは承知している。切り分けが必要となると思う。

Q:東工大が飯田、吉岡両氏に利用されているのではないか?本来地元の意見が重要。立地地域の意見を入れる必要がある。

A:立地地域からも参加を頂いた。立地地域(の推進派)も問題を抱えている。実施(建設)の方針が決まっているがうまく進んでいないところをどう進めるかに、知恵を出す必要があることは理解されている。

Q:提案の相手方には原子力委員会のほか、一般市民も含まれるのか?

A:提案の第一の提出先は原子力委員。しかし、その内容は国民に向けて発信する性格のものであり、一般市民に開示してある。

Q:重要度や時間軸がない。

A:大綱にはもともと時間軸がない。

意見:大綱が何を意味しているかはっきり分かっていない。もともとファジー。原子力委員会も執行機関でないので、委員会がなにをするかを表明したことがない。

意見:基本方針と政策大綱と仕分けしないと、反応がないではないか?

Q:概要に「多様な人々が自由に議論する状態の実現」といっているが、現状では議論する場がないと云っているのか?

A:政策大綱がどういうプロセスで誰が決まっているのか、そのプロセスかはっきりしていないのが現状である。

Q:「原子力政策円卓会議2010」には30名ほどが参加していると言っているが、4名しか名前が掲載されていない。反対派の意見を開陳したように見えるが?

A:30数名には実態がある。特に反対派の意見を開陳したわけではない。

Q:従業員、消費者、株主・投資家、地域住民などコアステークホルダーの意見は重要であるが、現実とはなじまないのではないか?

A:この方々が実は原子力政策と一番関係の深い重要なパートナーである。こうした重要なステークホルダーの意見を広くかつ深みをもって聴取し、それに応えて行く機会が必要だと考えている。コアステークホルダーとして、的確なパートナー(意見表明者)がいないとすれば、そういう土壌ないしは言論空間を育んで来なかったことがむしろ問題であり今後の課題である。

以上

出席者

林勉、金氏顕、益田恭尚、税所昭南、石井陽一郎、堀雅夫、佐藤祥次、清野浩、若杉和彦、竹内哲夫、土井彰、古田富彦、荒井利治、伊藤睦、小川博巳、小野章昌、後藤廣、三谷信次、辻萬亀雄、紺谷健一郎、松岡強、中神靖雄、泉渓鹿、斎藤修、加藤洋明、齋藤伸三、松永一郎、石井正則(記)