会 員 座 談 会 報 告
今後の資源エネルギー政策の基本的方向について
~「エネルギー基本計画」見直しの骨子~に対しどう考えるか
期日: 2010年4月15日 15.00〜17.00
場所: 日本原子力技術協会会議室
司会: 益田恭尚
座談会のねらい
主題に関する見直し案が提起されパブリックコメントが求められている。この案について、下記のたたき台を纏めてみたが、室効果ガス削減目標実現のため、経済効果を含めた総花的な政策が並べられているが、具体的に実現可能な計画は何も述べられていない。(詳細参考資料参照)
この座談会では、基本計画の骨子の問題点を明らかにしたい。また、われわれとして何をすべきか、PAに際しどのような発言をしたらよいか議論したい。
議論(太字は発言者略号)
IY 安定供給、環境適合、効率性の確保という主旨は賛成。スマートグリッドは電気料金転嫁が心配。太陽光や風力は余程よい蓄電池ができないとバックアップ用火力のアイドリングが必要。太陽光のCO2削減能力は大まかに云うと原子力の10倍以上が必要である。これらのことを考えると原子力を増やすことをターゲットとすべきである。
ON 主な問題点は以下の5点である。
@ 自主エネルギー比率70%は海外投資分含めて云っており、海外に持っている権益にすぎず、安定的に確保できるものではない。またオイルピークも考えていない。
A 環境省のロードマップと経産省のロードマップが調整されていない。
B FITは破綻している実績がでているにもかかわらず、未だにフィードインタリフに依存している。
C CO2排出権取引は適正配分が問題
D 再生可能エネルギーへの過度な依存
TA 日本はコンベンショナルな供給には強いが、残念ながら電力会社は政治的な議論に参加してこなかった。一方、スマートグリッドのようなものは、変動吸収用以上に活用するとなると、コンセプトはできあがっていないといえよう。
FU 国民負担の目途(国民が負担できる範囲、負担を求める範囲)を明らかにしてゆくことが重要と思う。
HA 25%ありきで進めていることが問題。FOR CAST と BACK CAST の両面から見てゆく必要がある。
AR 目標を決めた場合には、短期的、長期的視点にたった具体的対策を決めるべきである。COPでいっているPledge and Review という手法も考えられる。
注 Pledge and Review : 各自が自分でできることを宣言、各国がそれをレビュー
MA 基本計画では2020年のことは25%削減目標鑿で何もコミットしておらず、ぼやかしている。METIもできないと思っているのではないか。そうであれば、25%ありきに対する反論もできるのではないか。
SA 実現するには具体策が必要。たとえば25%にするには原子力を60%にするとか。
HA 2020年に無理がある。アメリカみたいに2050年にどうするかを決め、その中間を議論すべきである。
MO エネルギー基本政策では環境、セキュリティー、経済の3つを骨子としているはず。これらのバランスはどうなっているのか。
IY 現実無視はダメ。技術動向を良く見極めて進めるべきである。電気自動車もよい蓄電池ができれば状況はだいぶ良くなる。現在8基増設にとどまる国の計画、続いて電力の方針は考え直す必要があると思う)
MI CO2の25%削減がこれだけ問題になっていることを、逆手にとって、原子力のメリットをもっと強調する必要がある。サルコジ大統領を見習うべき。
SS 原子力の利用拡大に政府はもっと真剣に取り組んで欲しいと言うことを強調していく必要がある。
まとめ
温室効果ガス削減目標達成を主眼とした総花的な対策となっているが、基幹エネルギーとしての原子力が果たす役割が各段の大きいことは明らかである。それにも関らず国民の理解が進んでいないのが最大の問題であり、首相の意思表明と、広聴・広報の努力が必要である。
我々としては、原子力の役割に主体を置き、何をしなければいけないかの議論を深めていくことが必要である。この線に沿って、政府に対する提言をまとめてみよう。
以上(石井正則記)
参考資料
今後の資源エネルギー政策の基本的方向について
〜「エネルギー基本計画」見直しの骨子〜 に対しどう考えるか
2010/4/15 益田恭尚
○ 温室効果ガス削減を初め目標が実現不可能と考えられる計画が総花的に並んでおりメリハリがない。正に「最大原経済効果を重視したエネルギー供給を実現する必要がある」
○ 原子力を如何にして進めるかを、長期的視野に立って、明確に示す必要がある。
○ 2020年について1990年比▲25%に向けた政策総動員
○ 2050年について1990年比▲80%に向けた対策の必要性
○ 自主エネルギー比率70%を目標(現状18%)
○ 化石燃料の50%{非化石エネルギー50%と仮定すれば40%の権益が必要ということになる}
○ 省エネ GDPの伸びを期待する以上、エネルギー消費量の低減には繋がらない{GDP弾性値が低い}。
○ 国内資源の探査と、メタンハイドレードの実用化推進
○ CCSの早期実用化のための技術開発を加速、新設石炭火力をCCS Readyの導入検討
○ 再生可能エネルギーの固定価格買取制度と一貫した施策体系整備
○ 系統運営ルールの見直し。{?}卸電力需要を30億kWh→現在の2倍
○ 2020年代初めには原則総ての需要家にスマートメーター導入、稼ぎの主力として経済成長につなげる内需の中心的役割と雇用の確保
○ 新築住宅のZEH化、ヒートポンプ設置1,000万台、(くらしのCO2半減)
○ 洋上発電に対する開発支援策と海外展開
○ 2020年までに8基の増設、設備利用率85%
○ 2030年までに更なる増設
○ 電化に向けて大きく方向転換を図る必要がある。家庭の電化をどう達成するか。交通エネルギーについて、プラグイン・ハイブリッド車と、電気自動車の導入が話題→一つの光明、どのように促進するか
○ 化石エネルギーに頼らない電力への転換、なかんずく原子力発電の大幅導入(電力価格の高騰のためbridge energyとしてガスシフトを推進すべしと云っている)
○ 電力需要の伸びが認められない現状→電力事業者{電力自由化、RPS法、FITに向けての動き、住民パワーの増大}に歓迎されない原子力は経営者にとって魅力が少ない→新規着工が進展する様子が見えない
○ 稼働率向上を如何にして達成するか
○ われわれは一般国民に対しどう説明したら良いのか
○ 総理の原子力開発への確固たる意思表示
○ 国民への公聴・広報活動の促進・強化 住民に受け入れやすい環境づくり(高レベル廃棄物の処分を含み)、NIMBYからPIMBYに
○ 児童へのエネルギー教育の完全実施
○ 世界に通用する許認可制度と規制の合理化
○ 電力事業者に対し火力発電の廃止に向けての助成措置 自然エネルギーの過度な押し付けについての配慮
○ 原子力発電所建設に向けての強力な政府の指導
○
温室効果ガス80%の低減→原子力発電の割合、原子力の熱利用、原子力による水素製造に向けて開発の促進(産業部門の熱エネルギーについて原子力の付言なし)
出席者
林 勉、竹内哲夫、金氏 顕、松永一郎、小川博巳、加藤洋明、斎藤 修、紺谷健一朗、斎藤健弥、松岡 強、伊藤 睦、斎藤伸三、佐藤祥次、小野章昌、荒井利治、西村 章、古田富彦、石井正則、清野 浩、若杉和彦、上田 隆、石井陽一郎、水町 渉、税所昭南