中学生にきちんとしたエネルギー教育を

 

                 林    勉

              元日立製作所 理事

     

 元日立製作所で原子力関係の仕事に従事し、リタイアした現在、ボランテイア活動として「エネルギー問題に発言する会」のまとめ役をやっており、わが国のエネルギーに関する多角的問題、特に原子力問題に取り組んでいる。

 

 現在は東電問題等もあり、原子力発電に対する世間の風当たりは強く、原子力の負の面が一般には強調されすぎて、わが国のエネルギーに占める原子力の重要性に対する議論が十分にはなされておらず、特に子供達へのきちんとしたエネルギー教育、とりわけ原子力発電の重要性の教育が十分になされていない点を憂えている。

 

 エネルギー資源については、その殆どを輸入に頼らざるを得ないわが国の状況を考えると、その重要性は言うまでもない。しかも現在エネルギー消費の比較的に少ない発展途上国の消費拡大は避けられず、エネルギー資源争奪を巡る、国際、経済、社会面の様々な問題が発生してくることが予想される。湾岸戦争や今回のイラク戦争もその根底には石油を巡るエネルギー利権問題が深く係わっている。特に現在の子供たちが社会の担い手になる20年、30年先どうなるかについて、子供達が自分達の問題として考えることが出来る教育がなされなければならないと考えている。

 

 私の友人が、ある中学校の課外授業として、原子力の利用を含めたエネルギー問題について話をしたときの体験話をしてくれた。子供たちは皆真剣な態度で聞き入っていたとのことである。授業後の感想文では多くの子供たちが、こんなに重要で、自分達の将来に係わる話をなぜ今まで教えてくれなかったのか?という疑問を書いていたとのことである。この話に私は大きな衝撃を受けた。

 

 エネルギー教育については、新学習指導要領では、社会の地理的分野に「資源や産業からからみた日本の地域的特色」の項が追加され、「日本はエネルギー資源や鉱物資源に恵まれない国であり、環境やエネルギーに関する課題を抱えていることを大観させる」となっている。しかし実際にはその優先度が低く、カリキュラムの最後の方に廻され、時間的制約から結局はやらず終いになっているのが実状のようである。優先度が低いのは高校の入学試験問題に出ないからだとの話も聞く。またエネルギー教育をきちんとできる先生が少ないという実状もあると聞く。このような状況で放置されていて良いのだろうか?適任の先生不足の場合は企業のOBの力も活用していただきたいと思う。

 

 子供達がエネルギー資源問題を通じて、わが国の特殊性を理解し、国際社会の中でどのように対処していくべきか十分に認識し、その中で使命感を持って重要な問題に取り組む意気込みを持てるような教育をしていただきたいと思っている。