座談会 「中・小型炉の開発」 議事録

第41回 エネルギー問題に発言する会 2005.6.15.

座長:太組 土井

 

講演 日本原子力発電(株)研究開発室 津久井室長、米野課長

 

講演概要

1.開発の経緯

    メーカー三社を加えて、約3年にわたって検討してきた。大型、中型、小型炉それぞれ開発レベルのものと実用レベルのものがあるが、500MWe以下の中、小型炉で実用レベルのものはない。

    中、小型炉には、投資負担の軽減、穏やかな需要の伸びに対する適用、立地の自由度が大きい、送電負担が軽いなどの利点はあるが、スケールデメリットがあるので、これを建設工法の簡素化等で、経済性を向上しなければならない。

    現在のABWRなど大型のものをただ小さくしたのでは、発電単価は上がるので、何か抜本的な改良をしなければならない。自然循環による冷却や高耐圧格納容器の採用などがその例である。

    基本概念設計の目標として、出力3040kWe、稼働率95%以上、建設費:直工費20万円/ kWe以下、建設工期:約2年、その他安全性、設計余裕、運転性能、許認可適合性などは現行と同等かそれ以上とした。

 

2.各炉の概念

DMS(Modular Simplified Medium Small Reactor),CCR(Compact Containment Water Reactor)及び IMR(Integrated Modular Reactor)の三種類の炉の成立性を検討した。

(1)DMS

  従来のBWR 及びSBWR等の研究成果を基にし、原子炉の簡素化を目指した概念。原子炉及び一次系は、自然循環、気水分離機と乾燥器の削除、制御棒の上部への引き抜き、自立型鋼製格納容器を採用した。さらに、非常用炉心冷却系では、注入系の蓄圧化により電源負荷を軽減した。

(2)CCR 

  格納容器にABWRの原子炉容器に近いものを使用し、原子炉系のコンパクト化を目指した概念。原子炉及び一次系は、自然循環、制御棒駆動機構の炉。

上部設置、高耐圧(約7MPa)化によるコンパクト化した格納容器を採用した。非常用炉心冷却系は、注入系を削除し、ICによる炉心冷却とした。

(3)IMR

  PWRを基に蒸気発生器等の一次系を原子炉に一体化し、原子炉系のコンパクト化を目指した概念。原子炉及び一次系は、原子炉に蒸気発生器を内臓、自然循環、バーナブルポイズンの最適化と制御棒体数を増加してケミカルシムを削除した。格納容器は自立型鋼製を採用した。非常用炉心冷却系は、蒸気発生器による炉心冷却で、注入系を削除した。

 

3.工法・工期の概念

具体化に当たっての狙いとしては、現地工事量の低減、仮設用地及び物量の低減、工期の短縮である。この目標を達成するため、機電・建築一体モジュール工法を採用した。建屋階層を9階から6階にするなどで、25ケ月程度に短縮できる。運転の長期化、定検の短縮、原子炉開放は2定検に1回で稼働率は約95%以上を確保する。

 

4.経済性の評価

初号機の建設費単価は20万円/kWeを少し超えるが、2号機以降になれば、設計削減により、20万円/kWe程度になることが期待できる。

 

5.概念設計のまとめ

DMS:最もコンベンショナルな技術でできる概念

CCR:受動的安全炉であり、最もコストが低いと思われる概念

IMR:冷却材喪失事故のないプラント

 

以上

質疑

Q1 狙っているマーケットは?

技術的な成立性をまず見たもので、国内で実証し、できれば海外にもでたいと考えている。

2 IMRのボイド率は?

20%で、加圧器はないが、RPVの上部がその役目を果たしている。自然循環のため、ボイドが必要である。

 

Q3 IMR内のSGの検査、補修は?

検査用機器は入れるが、SG配管は基本的には圧縮応力で、破損は少ない。SGの補修が必要の際は、一体で取り出す。

Q4 燃料はどうするか?

今までの技術で製造できる。発電コストは従来並と考える。

Q5 実用化へのステップは?

原型炉は不要であるが、IMRは沸騰が伴うので、少し実証が必要である。

6 CCRではPCV内はすべて高圧系の扱いか?

弁を含め、すべて高圧系となるが、現在までの実績を生かして実現できる。

7 電力会社は、立地点確保が難題であるので、小型のものを受け入れないのでは?

候補地点がないわけではないと考えるが、国内ではなかなか難しいと考えている。系統の容量からは、将来沖縄あたりが候補になるかもしれない。

8 コンパクト化による経済性向上という観点からではなく、新型炉の開発という観点に立てないのか?

従来の検討では、経済性が不利ということで、それから先、中小型炉の検討は進まなかった。新型炉の検討というだけでは支持が得られない。

Q9 発電単価はどの程度か?

現在の予備的評価では、1kwhあたり6.45円程度である。

10 メンテナンス方式が変わることはあるか?

いくつかあるが、物量を減らすことで、メンテナンス自体がなくなるとか、点検もしない方式も考えられる。具合の悪い機器はそっくり交換したい。小型炉の特徴は、結局はコストであり、ここにメリットを出したい。

11 化石燃料の価格上昇に競合できるか?中小型炉の存在意義としては、都市近郊の火力発電のリプレースがあるのではないか?

中小型炉の社会的受容性を活かして都市近郊立地も期待したいが、現在要求されている防災計画が中小型炉に適用されたり、小型炉でも地元補償金が同じという発想では実現しないのではないか思う。

以上