東海発電所の廃止措置について

(会員座談会議事録)

 

日時   平成19320日 15時〜17

場所   NUPEC 6階会議室

テーマ  東海発電所の廃止措置について

講師   佐藤 忠道氏 日本原子力発電(株)理事

       廃止措置プロジェクト推進室長

座長   篠田

説明資料 『東海発電所の廃止措置について』

 

1.講演の概要

  座長から講師のプロフィールが紹介された後、説明資料に基づき下記の説明があった。

(1)東海発電所の概要

原子炉は天然ウラン黒鉛減速炭酸ガス冷却型で出力は16.6万kw。

昭和41年に営業運転を開始以来、平成10年に停止するまで31年強に亘って約290億kwhの電力量を発電してきた。

(2)廃止措置計画の概要

原子炉等関連設備を解体撤去して更地に復すること

原子炉領域は約10年の安全貯蔵後に解体に着手

その他設備等は順次解体撤去

廃止措置工事はV期に分けて実施。(全体で約17年)

第T期  準備、附属設備解体撤去(実施済み)

第U期  熱交換器等撤去等(着手)

第V期  原子炉本体等解体撤去(平成23年頃から29年頃まで) 

第T期工事は、計画通り順調に進捗したことが、写真と図により示された。第T期工事では、作業人工数が53,416(人・日)、作業員線量は283(人mSv)、撤去物量は10,320(トン)となった。物量の内、金属が約6,500(トン)、コンクリートが3,600(トン)であった。また、放射能レベル別には、低レベル(L2)が180トン、極低レベルが240(トン)、クリアランス対象物は1,150(トン)、その他8,750(トン)であった。

第U期工事については、燃料取替機等や熱交換器等の撤去工事方法の説明。

計画、工事の全般に亘って原電社員による作業直営化を進めている。これは技術習得、ノウハウ蓄積に大いに役立っている。今後は熱交換器の遠隔解体、クリアランス検認、遠隔切断装置等の設計開発などの分野にも活動範囲を広げ、直営化要員も拡大の方向で計画中である。

(3)安全規制の改善

廃止措置計画の当初、安全規制は旧来の運転中の原子炉施設の規制体系に概ね準拠して行われたが、計画の進捗に伴い、手続き面や安全管理の細部で廃止措置の実態により即した明確かつ透明性のある規制体系に法改正がおこなわれた。主な改正点は、廃止措置計画の承認手続き、施設の保安管理、保安規定、定期検査のあり方、廃止措置完了時の確認、等である

(4)廃棄物の処理・処分

放射性廃棄物は性状および放射能レベルに応じて、減容、固化等の処理後貯蔵庫に一時保管し、廃止措置期間終了までに廃棄施設に搬出する。(搬出先が確定できるまでは安全貯蔵期間を延長する)

放射性物質として扱う必要のない物および放射性廃棄物でない廃棄物は、可能な限り再利用。

レベル別には、

比較的高い廃棄物(L1) 炉心構造物等 約1600トン 余裕深度処分

比較的低い廃棄物(L2) 原子炉まわり等 約8900トン 専用ピット

極低レベル廃棄物(L3  熱交換器等 約13,100トン トレンチ処分

クリアランス対象物    約40200トン 制度整備後再利用・廃棄

非放射性廃棄物      約128,700トン、再利用・廃棄

となっており、廃棄施設の一部は既に実用化されているが、法令整備の段階にあるものもある。

クリアランスレベルの検認については、一部測定を実施済みであるが、今後国の確認を受ける必要がある。クリアランス基準は国際原子力機関の基準に対応して省令で定められている。

東海発電所ではクリアランス対象の金属については溶融等の加工後原子力や電力関連施設で限定的に再利用する事を計画している。

(5)廃止措置費用見積

炭酸ガス冷却炉はその炉形式の特質として、図体が大きく、放射化された構 造物の量も大きいため水冷却型炉に比べて解体費用も廃棄物処理処分費も嵩む。

16.6kwの東海発電所の費用と110kwクラスの水冷却炉の費用を比較すると、解体工事費は0.9倍程度であるが、放射性廃棄物処理処分費で3倍以上、総費用で1.6倍程度となるものと推定される。

(6)海外の状況

廃止措置を完了したもの 8 基

廃止措置中(含準備中) 95

廃止措置のシナリオは国によって異なる。(詳細略)

2.質疑および討論

質問 Q,回答 A,意見 C で示す。

Q わが国の規制は、規制見直しの後で、外国と較べて厳しいか?

A 厳しい事はない。外国でも規制体系は整備進行中とも思われる。国によっては廃止措置は許可制であり、申請から許可までに時間がかかっているようだ。その点日本は進んでいる。一般的に、トラブルや事故があると国の規制関与が強くなると思われるのでこのような事態は避けたい。

Q 安全貯蔵期間に基準は定められているか?

A 日本には規制はない。引当金算定用の標準工程には5〜10年程度を想定している。

Q クリアランスレベル基準値は日本は厳しいか?

A 国際原子力機関の基準値と同じ。1999年に原子力委員会が決めた値より低い。

  国によっては原子力機関の値より緩やかな基準の国もある。

Q 圧力容器の切断開放時の内部の密閉はどうして保つのか?

A 生体遮蔽をコンパートメントにして、補助換気装置と追加の遮蔽シールで外部への放散を防ぐ。

Q 放射性廃棄物の放射能種別は?

A 炉心・燃料を除けば、金属やコンクリートが放射化されたものが殆んどでアルファ核種は少ない。

Q 直営化の目的は?

A 特殊技術・技能の習得、プロジェクト企画・運営のノウハウの蓄積に力をいれている。写真撮影等イメージ集積に専任者をつけている。また、工事の品質向上や労働安全の確保にも実績をあげている。

Q GECや富士電機の関与は?

A メーカーからは図面や設備知識の援助を受けることになっている。当初、富士電機・川重・清水建設を元方とした請負体制も検討したが、直営を中心とした工事体制で臨むこととなった。ただ、熱交換器は川重、原子炉本体の解体工事には富士電機の援助が必要である。

Q 廃止措置期間の17年は経済的な工程か?

A 最短工程に近いが、廃棄物処分場の完成が必要条件である。

Q 第V期工事(7年間)の工程は?

A 原子炉本体の遠隔解体工事が主体であるが、廃棄物の輸送能力(港湾の荷扱い等を含む)も重要因子であり、これ如何では短縮の可能性は残されている。

Q 軽水炉の工程はどうか?

A 110kw級で3〜4年で解体可能と想定している。

Q 当初の計画立案は大変だったと思うが何処主体で実施したのか?

A 原電自身で実行した。初めのうちは本店主導で計画と諸手続きに当たったが、工事が開始されるにつれ現場の陣容を拡大していった。現在現場に約30人、総計50人程度。U期工事では工事設計、廃棄物の仕分け、遠隔機器の開発等に注力していく。

Q クリアランスレベルの設定は?

A 省令の値は国の方針で国際原子力機関の値にあわせた。

Q 当初はクリアランス物の限定的な再利用を計画しているようだが限定的再利用であれば省令値に適合しなくても良いのではないか?

A 法律は非限定が主旨なので低い基準値となっており、限定的再利用の場合でもこれに従わざるを得ないが、早く非限定的な再利用実施に持ち込みたいと思っている。ドイツでは限定的再利用は基準地は4~10倍高くてよいとしているようだ。

Q レベルVの廃棄物は容積が大きいが何処に処分するのか?

A 敷地内が候補であるが、地元との調整による。

C アルファ、ベータ核種の測定評価が難しいので先行例では説明に困ったことがある。

Q L1廃棄物の処分方法の外国との比較は?

A 外国でも処分場の整備はまだ進んでいない。フィンランド、スウェーデンが日本と近い。フランスでも余裕深度処分場の計画はこれからだ。

A あと30年もすれば廃炉が多く進められるようになり、廃棄物の輸送問題がクリティカルとなるかもしれない。L1廃棄物の処分場については軽水炉55基が60年寿命で廃止措置を行う前提で計画を検討中である。また輸送についても輸送船の建造計画は同じ前提に立っている。

C 今回の講演は貴重な経験の紹介であった。将来への提言は?

A 廃止する炉の建設や運転保守にかかわった人が年と共に去って行くのが心配だ。炉についての経験、知識を如何に蓄積しておくかが重要である。経験者の居る間に計画を固めなければならないが。

C 廃止措置については工事進捗のステップ毎に今回のように結果を纏めて公表し、工事がキチンと実施されていることを世間に知らしめて欲しい。

以上 (文責 篠田)

(平成19410日作成)