会員座談会報告

低炭素社会を支える新しい電力供給利用インフラの構築

 

講師 電中研 システム技術研究所 栗原郁夫 氏

期日 20081120日 15:0017:00

場所 原技協会議室

司会 益田恭尚

 

講演概要

21世紀中葉の低炭素社会実現に向け、燃焼から電気利用の需要形態が進み、供給サイド、需要サイドとも電気の役割が需要になってくる。

供給サイドでは一つの方法が特効薬でなく、いくつかの方法を組み合わせる必要があろう。太陽光発電(PV)の導入シナリオでは、2030年には2005年の約40倍、5300kWを導入目標としている(福田ビジョン)。

これに対応する次世代グリッドは、大規模停電のリスクが少ないことはもとより、分散電源の有効活用、省エネとエネルギーの有効活用を需要家と一体になって実現することができる必要がある。これを実現する次世代グリッドとして、電気と情報を一体化して扱うTIPSTriple “I” Power System、知的、相互影響的、総合的)システムを研究している。このシステムでは火力との分担や周波数変動予測調整など、系統運用上の問題を緩和することができる。

需給一体化により、特に分散電源導入量が増えた時に、供給サイドにみによる対応にくらべ、系統対策費や電気料金などの社会コストを抑制する効果大きい。

これまでの赤城試験センターでの研究から、一定規模で電圧の適正化の成果があられた。福田ビジョンのPV5300kW規模に対しては、今後新たな取組みが必要である。

PVの大量導入に対しては、需要家側に蓄電池を設置、揚水発電による系統コントロール、系統側に蓄電池設置による系統コントロールの3ケースの余剰電力対策費は、それぞれ18兆円、5.3兆円、6兆円で、系統側でコントロールした方がコストが低い。

需要家負荷との自律的需給の一体化をはかるためには、情報を有効に使うことが求められ、セキュリティーの高い需要家との通信ネットワークが必要となる。既にメーターの電子化による新計量システムへの取組みが、関西電力で行われている。欧米でもSmartGridとして取組みが行われている。

 

おもな議論

     PV導入目標の5300kWは設備容量で、設備利用率は10%程度なので、約500億期kWh(年間)程度である。CO2削減効果もそう大きくはない。

     余剰電力対策費には蓄電池や揚水発電を対象にしたが、出力抑制の方法もある。

     欧州では風が一定していることや、系統連携がしっかりしている(系統容量が大きい)ことから、小変動の吸収が可能。日本は自給を原則としてきたため、連携が弱い。

     PV5300kWが全部止まった時の対策として、別設備が必要になるので、電力の設備は変わらない。

     バックアップのコストを、どこまで需要家が負担できるかが課題。

     負荷変動への追従と言う点ではPVのタイムコンスタントに火力が追従できるか問題。揚水は立ち上がりが早いが、立地場所がもうない。

     一方、瞬時変動は広域では平準化される。現在、時刻と瞬時変動、同期のデータはないので、今後データの取得が必要。

     電気自動車の電池を負荷調整に活用する方法もあるが、電池の劣化や自動車の使用時の関係から難しかろう。

     発電方式によるコスト差を電気料金に転嫁する議論を進める必要がある。このためには数値を算出する必要があるが、数値の信頼性によってはミス・リーディングの可能性もあることに留意する必要があろう。

以上