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座談会記録
 『みんなで選ぼうエネルギー』

「エネルギー問題に発言する会」座談会記録から

文中__*印があるものは技術・用語解説欄に解説記事が出ていますので参照して下さい。

司会エネルギー*は文明社会の維持向上に最も大切なものであるにもかかわらず、エネルギーに関連して人間社会が抱える問題について、国民の理解が得られていないように感じます。この座談会の議論を通し、国民皆がエネルギー問題を自分達の問題として考える一助にしていただけたらと思います。

それではまずエネルギー問題についての関心という点から入っていきたいと思います。

1.国民はエネルギー問題にどのくらい関心があるだろうか

メーカーOB.A:エネルギー問題について国民はどの程度知っているか考えてみますと、実際あまり知らないし、知る必要もないのが現実であろうと思います。
電気は電力会社の努力で安定に供給され、水や空気と同様の感覚で得ているので危機感が薄い。今年の原子力産業会議の大会でもエネルギー教育の必要性が話題になっていましたが、我々が以前から主張していた点であります。もし電気がなければどうなるのかなど、卑近な例から教育のテーマとすべきであると考えます。

大学教授S:大学の学生はエネルギー関連の問題についてあまりにも何も知らないのが現状です。天然に放射線(自然界からうける放射線*)があることを知らず、ただ放射線は怖いになっています。文系と理系の合同教育があるものの、ここでエネルギーについて教えるにはレベル合せに苦労します。社会は文系の人がリードする場面が多いので、文系の人にも理解できるような理科の教育が是非とも必要であると考えます。

メーカーOB.A:今朝(7/7付け)の読売に野依さん(ノーベル賞科学者)が「早い段階で文系、理系に分割され、国の舵をとる文系の人々の自然科学理解力は本当に十分だろうか。国民全員が基本的な科学知識と文化的素養を持ち合わせる必要がある」と指摘しておられましたが、私も同感です。

出席者:あまりにも急激な分割教育、教科の自由選択は問題が多い、会としても反論して行かなければならない点ではないだろうか。

電力OB.S私は30年間発電を担当し、その間発電所を運転する諸君が個人的な家庭生活を犠牲にしても電力の安定供給のために尽力している姿を見てきましたが、電気が安定に供給されていることに対し消費者に感謝の気持ちが見えないのは非常に残念です。巷の朝市での『おいしいものをありがとう』などの会話の中にも消費者の感謝の気持ちがあります。電気に対してはそれがみられません。

司会:発電所サイトの人々はエネルギー問題に関心が深いと思いますが如何でしょうか?

電力OB.S:技術に関する知識は都会の人々と変わらないと思いますが、何か問題が発生した際には問題の理解の程度や判断は深かまったと思います。

メーカーOB.D学校で教えた経験からすると、エネルギー問題について認識の度合いは低いが、よく知っている人も結構います。問題は、知識はあるがそれが実生活と結びついていないことにあるのではないでしょうか。冬は暑すぎ、夏は寒すぎる部屋にいることなどであります。知識と行動に差があるにせよ、少なくとも知識は教えたいと考えます。

メーカーOB.I:個人の自由、権利をはき違えた教育に問題があると考えます。学科選択等の教育体系、受験制度など教育制度からくる結果であると思います。教育基本法*も良くならず、基礎学力が身につかず、大学に入学後に補修しているのが現状です。教科書にも放射線やエネルギーや原子力の話題がみつかりません。

司会:しつけ教育の問題もあるのではないでしょうか。

メーカーOB.B:戦後、豊かになり過ぎ、明日食べることを心配する世の中ではなくなり、国民の価値観が変わってしまいました。こうなってしまったことは我々戦中組みの伝承が不足していた点も反省すべきで、この点を認識した上でスタートすべきでしょう。

司会:その通りだと思いますが、そこでどうするかが問題です。

メーカーOB.H:第二次世界大戦は資源、エネルギー問題がその発端でした。戦後、米国は、経済封鎖は必ずしも益がないことに気付きました。しかし、今後も依然、資源やエネルギーが紛争の種になる可能性は消えていません。若い人達にもこのことは理解してもらう必要があると考えます。

メーカーOB.S:市場経済の中では感謝の気持ちを持ちにくくなってしまいます。国民に極限の状態を考えてもらう方策が必要でしょう。
識者の間ではエネルギーは戦略物資であるとの認識があります。我々はエネルギー問題についてなにか大切なものを見過していないかもう一度考える必要があると思います。
最近、エネルギー政策の方向が一地方の人々の投票で決まってしまう傾向が出てきています。国全体を考えた政治の立場での啓蒙とコンセンサスづくりが是非とも必要です。

司会:昨年電力不足に悩んだサンフランシスコの人々(サンフランシスコの電力不足*)はどう感じているのでしょうか。今年も電力不足が再びおこるとの情報もあるようですが。

電力OB.I:カリフォルニアの電力危機は電力をキャベツや白菜のような商品と同じように扱うことの恐ろしさを教えてくれたと思います。識者の多くは自由化そのものには肯定的で、自由化の制度設計に問題があったという理解をしているようですが、一般の人たちは、自由化で電気料金が安くなるはずと思ったのが逆に高くなって、自由化は誤りだったのではないかと感じているようです。

メーカーOB.M米国ではこの対応としてStageTを省エネルギー、StageUをクリスマスの照明中止、StageVを停電と提案したが、クリスマスの照明中止は国民の反対が強く、結局停電という事態にまで進んでしまいました。このため、カリフォルニアでは原子力への反応も、世論調査の結果によると昨年は2/3が原子力反対であったものが、今年は2/3が賛成に変わりました。しかし、今後どう推移するかは分りません。

電力OB.I日本で似たような経験といえば石油危機*があります。あの時、石油の中東依存の大きさや、備蓄の重要さが議論され、原子力の支持者が増えました。しかし、“喉もと過ぎれば熱さを忘れる”の喩えの通り、今は、あのときの騒ぎを知らない人たちはエネルギー危機についてまったく関心がありません。

2.このままでは近い将来問題は起らないだろうか

司会:このままの状態を続けていくと、中東の紛争等予期せざる事態が起らないとしても、どのようなエネルギー問題が発生するでしょうか。
資源問題だけから言うと1972年に発表された『成長の限界*』でローマクラブは、石油は30年で枯渇すると予測しました。その後、推定埋蔵量は年々修正され、ずっと30年のままで推移しています。最近は、深海にメタンハイドレイド*が沢山存在し、これを含めれば天然ガスの埋蔵量は相当量存在するとの説もあるようです。化石燃料*の枯渇の恐れは薄れてしまったのでしょうか。

メーカーOB.B2050年には人口は96億人となり、この人々を支えるだけの資源が不足することはかなり明白です。これに対する危機感がないのは大きな問題だと考えます。

研究者OB.S:資源不足を早める要因として、膨大な消費、リサイクルへの配慮不足も問題です。これと共にゴミ量の増大も大きな問題の一つです。国民は自分の便利さのみを求める傾向にあります。

メーカーOB.H資源枯渇の前に、国際間の取り合い問題が発生するでしよう。急成長を遂げている中国はすでにエネルギーの輸入国で(中国の石油輸入の伸び*)、この国を中心に問題が発生するような気がします。軍事評論家は中国が海軍を増強しているのはシーレーン防衛のためであると言っています。

メーカーOB.I:資源の絶対量の不足より、エネルギー資源の確保が先ず問題となると予想されます。これは輸入量の確保という点と、経済性の二面から見る必要があります。

メーカーOB.B食料、水も同じであり国際争奪戦が始まると予想されます。食料を40%しか自給していない日本*は大きな弱みを持っています(日本の食糧自給率*)。もっと関心を持ってほしい点です。

メーカーOB.H:天然ガスはシベリア等に新しいソースがあり導入計画*が検討されていると聞きますが、建設費、セキュリティー等の問題があるように思います。

電力OB.S原子力長期計画*の議論の中で原子力がなければどうなるのかの検討をすべきとの話が一時ありましたが結果的には検討はされなかったようです。CO2削減問題に関連しては、原子力なかりせばの試算が行われています。それらを国民の前に分りやすく示す必要があると考えます。

メーカーOB.A:近年長期的に物を見る習慣がなくなってしまったように感じます。長期的にものをみる習慣を養うには、若いときの教育が大切です。
現在は戦後教育の歪が出てきています。ある識者は、戦後の大学教育の歪として、専門教育偏重になり、総合的に物を考える教育がなくなってしまった点を指摘しています。一般教養がないと長期的視点で物事を考えることができなくなってしまいます。

司会:1000年先のことを考えてほしいというと、今の時代20年先もわからないではないかとの反論が出てきます。確かに先端技術の分野では、携帯電話の例を挙げるまでも無く、20年先は不明のものも多いでしょう。しかし、エネルギー、食料問題などは20年先の状態は十分予想ができる問題です。

メーカーOB.Dエネルギー問題を考えるに際しては、どのくらいの時間スケールをおくのか決めないと議論になりません。20年先であれば、大問題が発生する可能性が低いとしても、50年先、100年先となると問題は別で、ほぼ間違いなく大きな問題が生じてしまうでしょう。

電力OB.I50年先、100年先には大問題になるにしても、変動がゆっくりしていれば、価格が上昇して消費を抑制するとともに、新技術の開発を促します。エネルギー界では原子力がすぐにでもバックアップするでしょう。
会社経営の立場で考えても、近代経営では、経営者はどうしても数年先を捕らえた近未来的思考になってしまいます。これは自由化と競争という立場からは、あまり先のことを考えた経営はしにくくなってしまうためです。
長期的な立場で考えるのには、一企業の立場ではなく、物事を総合的に捉えることができるなにかが必要でしょう。例えば急激に問題が進行したときの衝撃をどう避けるかという手立て(エネルギーセキュリティー*)が必要で、これは国の責任です。

3.エネルギー問題解決の救世主たりうる候補には何があるだろうか

司会:原子力を含め、将来期待できるエネルギー源としてどのようなものがあるか議論して頂きたいと思います。

メーカーOB.S:一般国民には新エネルギー*への期待が大きいようです。
   資源論、戦略論のみでは説明できないのが現状です。環境を含めた総合的な考察でエネルギーベストミックスは何かを論じ、その中で原子力オプションを示すべきでしょう。 

司会:次世代エネルギーは何かというアンケートを行うと、必ず太陽、風力などの自然エネルギー*という結果がでます。原子力を推進する識者でも、将来再生可能エネルギー*が利用できるまではと述べている例がみられます。自然エネルギーは科学が進歩しても、エネルギー密度の点から大きな期待はできないことは明らかなのに、十分説明されていないのが現状だと思います。環境問題については回を改めて議論しましょう。

メーカーOB.I:再生可能エネルギーは、皆でもっと使えば安く、良くなると説明されています。しかし、保守点検の手間、寿命等使ってみての問題点が一般国民に知られていないのではないでしょうか。太陽光発電*も、本当に20年も寿命があるのだろうか?と心配です。山手線の内側全部を使っても、100万kW程度であるという現実が理解されるのは何時になるでしょうか。

メーカーOB.Y:識者といわれる先生方ですら自然エネルギーをサポートしている方が多いのが現状です。このことは一般国民に誤解を与え問題だと思います。

司会:太陽エネルギーの利用としては、昔から利用している水力を除けば、風力発電*が一番可能性は高いと考えますが、日本の海岸全面に最新の風力発電機を並べても全電力を賄いきれないという現実を知らされていないと思います。

メーカーOB.A:太陽エネルギーに大きな期待はできないとする説明が一般の人になかなか分りにくいのです。1972年『成長の限界』がでたとき、食料問題などは深い議論がなされていますが、エネルギー問題は人間の英知である原子力で解決できたとして、それ以上の議論はされていません。この経過などを説明していく必要があると思います。

メーカーOB.B:当時は原子力発電*石油代替エネルギー*として成長し、50年先は原子力で解決できることになっていました。現時点でもう一度50年後がどうなるかを提案して、国民に勉強してもらいたいと思います。

4.原子力は何故頭から否定されるようになってしまったのだろうか

司会:原子力はなぜ皆に理解されないのか考えてみましょう。これは日本だけではなく、世界的な傾向である点大きな問題だと考えます。

電力OB.S:最近の原子力停滞の原因には、バックエンドの問題*JCOの事故*が大きいと感じています。発電所のトラブルで原子力発電のイメージダウンが起るのは、メデアの騒ぎすぎによるところが大きく残念です。一部の人の感情的意見が選挙に影響しているので問題が大きくなり、法治国家と思えない状態になっています。しかし、色々障害があっても前進の努力をしていかなければいけないと考えています。

電力OB.I:小さなバルブから水が漏れても、火力では新聞にも載らないが、原子力では大騒ぎになる。これを突き詰めてゆくと、放射線が怖いということです。放射線恐怖症(放射線の人間に対する影響*)は原爆の記憶と強く結びついています。マスコミも放射線は怖いと書かざるを得ない雰囲気があります。原子力が受け入れられるために基本的に必要なのは放射線恐怖症からの脱却です。

メーカーOB.Y:日本は、建設中、計画中プラント(日本の原子力発電所の建設計画*)として東通、敦賀、島根、志賀、もんじゅ等がありむしろ順調に進行しているのではないでしょうか。ヨーロッパにおいては、現在エネルギー危機感がないのだと思います。いずれ危機を感じる時期が来れば判断が変わるのではないでしょうか。日本はこの50年は米国のもとでエネルギーを含めセキュリティーについて自分で判断をしなくてすんだのですが、次の世代の人々がナショナル・セキュリティーの立場から原子力を考えなければならなくなるでしょう。今何をすべきか、政治家が中心になって考えないといけない重要な時期だと思います。国の政策全体を見た国策が必要な時代です。

メーカーOB.I:原子力の後退は、米国では主に経済性の問題からだと推測します。既設のプラントは稼働率の向上で発電コストを下げ十分経済的にも対応していますが、新たに造ろうという動きが出てくるところまでにはなっていません。ヨーロッパのエネルギー事情*はグリンピースの活動の影響と、電力需要がすでに飽和に近く、新設の必要性が少ない点にあると思います。日本は未だ原子力発電のメリットはありますが、最近は電力需要の増加が少ないため、ドライビングフオースが少なくなっています。

電力OB.I:今考えられる最大の要因はコスト問題です。原子力発電は資本費の回収に40年もかかります。自由化のもとでは40年先でないとペイしないのでは困る。例えば20年で回収できる安いプラントができることが必要で、メーカーの努力に期待しています。

メーカーOB.Bコストのかからないプラントはメーカーのみでは作れません。不要な付属設備も多いので、最初から見直して、安全で安価なものにしなければならないと思います。

司会グローバルスタンダード*の基では電力の立場も分りますが、回収期間、金利等、発電コスト*算出の基準を明確にして、長期的視野で考えることができるようにすることが必要だと思います。原子力で短期に利益を上げるのは無理ではないでしょうか。

5.原子力政策について

司会:いずれにしても、サイト対策や資本費が大きい点なども含め経済的な問題が多いと言わざるを得ないようです。短期的にみると発電コストの優位性のみでは原子力発電の推進は苦しくなっており、長期的視野にたった政策が必要だと思います。

日本の原子力政策について議論して頂きたいと思います。

電力OB.I:昔の人は国としての方向、安全保障を考えていました。石油は今では戦略物資ではなくて一般商品になってしまっていますが本当でしょうか?エネルギーの安全保障*に限らず安全保障そのものの考え方が欠けていることは問題であると考えます。現在の日本の安全保障を一元的に考えるところがありません。

メーカーOB.I:経済産業省自体が電力の自由化*とセキュリティー確保というあい矛盾した政策を進めているように思います。

メーカーOB.S:戦後の日本は、電力会社が独占する代わりに(電力)供給責任*が負わされ、電力とメーカーの責任で運営されてきました。電力自由化になり、リーダー不在の問題が出てきました。今こそどうあるべきかを考える時期です。

メーカーOB.A::国益を考えなくなったのは、戦後、国益ばかりを考えるな、と教育されてきた結果でしょう。
日本にも本省レベルのエネルギー省が必要ではないかだろうか。エネルギー庁では政策の立案・実施に無理があります。
総合的視野でエネルギー問題に対応するためエネルギー基本法*がようやく出来ました。エネルギー問題が政治の俎上に上がったという点では進んだといえるのでしょう。

メーカーOB.Bエネルギー基本法は現在を論じているのみで、将来に言及していません。また、原子力という言葉が入っていません。これは法案を通す手段であったのでしょうが、こんなことをしないといけない日本の縦割り行政に失望しています。いずれにしても、総合的に物を考える習慣が弱く、日本の将来は暗いのではないでしょうか。

メーカーOB.I:自由化など国のやり方はまずいし、環境庁も原子力は自然への負荷が大きいと説明している。国は電力の責務ではないことまで電力に押し付けてはいないか? 核燃料サイクル*、高レベル廃棄物の処分*は国レベルで解決すべき問題であるはずです。

メーカーOB.S:電力会社が原子力発電の推進することにより、余剰発電設備ができてしまったとき、それについて国が何も担保しないのは問題だと思います。

メーカーOB.B:炭酸ガス問題を考えると、自動車のCO2排出量は日本の全排出量の20%を占めている上、その伸び率は大きく、10年で60%増加することが見込まれています。これはトータルで12%の増加となってしまいます。これを避けるためには電気自動車*の普及しかないと考えています。

電力OB.I政府はCOPV(京都議定書)*の約束値を本気で守る気があるのだろうか?

メーカーOB.A守れなかったときは、その時と安易に考えているのではないでしょうか。ペナルテーも軽すぎるのではないだろうか? ヨーロッパは石炭から天然ガスへの転換が進めやすいので、救われているという事情があります。

司会:政府、マスコミ、原子力委員会*、原子力安全委員会*の役割、動きが今一つよく見えません。エネルギー問題解決のためにそれぞれの責任を果たすべきではないでしょうか。

メーカーOB.Yプルサーマル*がうまく行かないと再処理*はどうなるのか? 再処理施設はコールドで止めよとの話も出ているが?

電力OB.I再処理とプルサーマルは論理的に接続しています。これはどちらも実現しなければならない。しかし、今プルサーマルが出来ていないから再処理工場を中断するというものではない。再処理工場の起動をコールドで止めるという話もありますが、六ヶ所工場は原子炉で云えば実証炉ですから、いろいろトラブルもあるでしょうが、実証炉を実証せずに中止するのはお笑い草です。

メーカーOB.S:再処理プラントは稼働率、諸経費等コスト不明の部分も多く、回収計画が難しいのではないか。米国のように使用済燃料を国に返却して電力は使用料を払うとの考えはないのでしょうか?

電力OB.I:再処理プラントの経済性については不確かな部分の多いのは事実ですが、これは実証プラントには付き物で、原子炉でもそうでした。問題は、そのコストを既存の電力がずっと負担し続け、新規参入者は負担しないのか?それとも、自由化で条件が変わったのだから、ストランデッドコストとして国が電力消費者への転嫁を認めるか?という話になるのではないでしょうか。

メーカーOB.H:外国はそれぞれ事情が違うが、自国の問題として方針を決めていると思います。日本は国策がなく、他国の様子をみて決めている。自国の主張を持ちたい。省庁間のバラバラもなくしていかなければならないと思います。

6.エネルギーについての常識教育

司会:原子力発電の公開の原則、および故障と事故のすみ分けなどについても議論したいと思いましたが、また別途機会を設けて議論しましょう。
最後にネルギーの常識教育をどのようにしたらよいかについて議論したいと思います。一般の人々はどうやってエネルギー関係の知識を得、どのようにして国民全体が参加する『みんなで選ぼうエネルギー』とすることができるか考えてみたいと思います。

メーカーOB.B:人間は必要を感じないと勉強しません。危機感をクローズアップして、一人一人にそれを感じさせないと駄目だと思います。エネルギー、森林、環境問題、食糧問題等をとらえて、マンガでも良いから『2050年の地球の姿*』などを見せて危機感をもたせるべきだと考えます。

メーカーOB.O:最近のTVで、ある家庭で年1回電気のない生活を経験し、子供たちにどのような生活が望ましいか実感させているという良い話があった。このような教育が必要なのではないでしょうか。

メーカーOB.B2050年には世界の電力使用量は現在の3倍と予想されているが、これをどのようにしてまかなうことができるかについて国民の前に提示すべきでしょう。食料不足も同じで、今世紀半ばには世界人口96億人に達しますが、今のままではその人々がどう暮らしていけば良いかの発想が出てきません。

大学教授S:エネルギー問題は一般人の認識が薄いため、政治家が問題を指摘しても票にならないところに問題があります。政治家には啓蒙する責任があるはずですが、基本は一般の人々の認識不足が原因です。なんとかこれを深めなければならないでしょう。

メーカーOB.I:今の教育の現状を見ると、子供より親の方に問題があるケースが多い。子供はすなおに事実関係を認識する。親はもう間に合わないので、次の世代を教育しよう。戦後50年でここまで来たのであるから、回復にも50年かかる覚悟が必要でしょう。

メーカーOB.B教育改革など議論はいくらでもありますが、本日は「エネルギー問題に発言する会」に何ができるかという点で議論してはどうでしょうか。

メーカーOB.Hホームページもようやく充実しつつありますが、折角設けた技術解説欄にまだ一件も出ていません。これを使うのが良いと考えています。
先日ある監査役会で原子力の話をしたところ、監査役のような常識のあるはずの人でも、たとえば飛行機に乗ると放射線被ばくを受けることや、自然界にも多くの放射線があることを知らないので驚きました(自然界から受ける放射線*)。技術解説欄を使って啓蒙するのが一つの方法だと思います。

大学教授S教育の現場で大学生のレベルが低いのに驚いています。例えば、石油は化石燃料で炭酸ガスを出すからまずいが、天然ガスは天然物であるからいくら使用しても良いと思っている学生も多いのです。このレベルの人をどのように教育するか考えていく必要があると思います。

メーカーOB.O:電気事業連合会などで電力供給の1/3を担う原子力を止めたらどうなるかを一般に問うてみて、問題点を知らしめては?

メーカーOB.Bチエリノブイル(事故*)JCO(事故*)など、大きな事故についての解説を出してはどうか? 例えばチエリノブイル炉はブレーキを踏むとエンジンが早くなるようなタイプの炉であることまでは分っても、詳細は良くわかっていません。

出席者:世の中で話題になった技術用語について解説を出すことが必要であろう。原子力の基本技術以外にエネルギー関連の一般論も載せよう。

司会:会員一人、最低一件出す努力をしましょう。

出席者:技術解説のレベルを一般人の知識レベルに合わせたものとし、内容を充実し、大学でも使えるものにしたい。学校の先生にもこのホームページで学んでいただき参考にして頂きたい。本日直接話題に出なかった用語、TMI事故*放射線と放射能*放射線の種類*放射線とガンの関係*なども記載してあります。

以上

座長 益田恭尚  土井

日 時: 2002.7.17.()  14001700

出席者:(座席順)   、松永 一郎池亀 亮、篠田 義幸、小笠原 秀雄、松岡 強
柴山 哲男岩井 正三石井 亨杉野 栄美澤井 定、白山 新平、小川 博巳、土井 彰、
益田 恭尚、天野 牧男、水町 渉荒井 利治