「エネルギー問題に発言する会」座談会議事録
日時:平成18年3月16日(木) 15時15分より17時40分
講師:小野章昌氏(元三井物産)
出席者:順不同、敬称略
下田秀雄、松田泰、竹内哲夫、中神靖雄、林勉、益田恭尚、高木伸司、小川博巳、松永一郎、伊藤睦、石井正則、柴山哲男、天野治、土井彰、石井亨、松岡強、金氏顕、山崎吉秀、森雅英、石井陽一郎、佐藤祥次、川人竹樹、税所昭南、神山弘章、武藤正、斎藤修(座長・文責)
1.
座談会主旨
石油資源ピーク到来は極近年に起きるとの警告的報告が唱えられているが、わが国におけるエネルギー資源に対する動きが鈍く、国家的見地からのエネルギー政策論の議論がほとんど見られない現状にある。石油をはじめ、天然ガス及びウランなど重要なエネルギー関連資源の現状と将来見通しについて、論者の意見をただし、今後のわが国におけるエネルギー政策の進むべき方向を定める為に、この座談会が開催された。
2.
講演概要
主な資源の耐用年数は、石油=40.5年、天然ガス=66.7年、石炭164年、ウラン67年と言われているが、果たして本当か。私はもう少し早く終わりが来ると考えている。
1)
石油
次の理由により石油のピークは言われているよりも早く来る。
@・有機物起源の石油には資源量に限りがある。
・ 新規発見量は1960年代をピークに減少しており、生産量は新規発見量を大幅に上回っている。
A 産油国は1980年代後半埋蔵量を大幅に増加させたが、OPECの輸出枠が埋蔵量を基準に計算されることになり、サウジ1.5倍、イラン2倍、イラク2倍など、各国が埋蔵量を増加させた。 生産の実態は多くの油田が自噴状態を終わり、水圧による二次回収の段階にある。
・ OPECの生産余力は224万バレル/日あるが、その大部分はサウジ(重質油)とイラクが占めている。
サウジ油田は6%/年の率で減退しており、毎年60万バレル/日の代替源が必要。2010年までの5年間で300万バレル/日追加が必要である。
現在の2010年までの新規計画は、フライス油田他3箇所で230万バレル/日しかない。
B IEA/DOEの見方は、早くて2026年、長くて2047年、中間で2037年のピークを想定している。
DOEは6兆バレルの資源量を想定し、そのうちの半分の3兆バレルが採掘可能としているが、これには未発見の油田分7千3百億バレル、埋蔵量の成長分6千900億バレルを見込んでおり、今後の生産可能量を2兆3100億バレルとしているが、仮に三次回収技術を駆使して回収できたとしても長期の時間(200年)を要する。彼らは時間的要素を無視している。
C キャンベルの想定では最終採掘可能量を1兆8千億バレル、生産可能量1兆バレルとしている。
同氏の想定によれば、石油ピークは2010年に来る。
スエーデン、ウプサラ大学の見通しでは、2006~2007年がピークとしている。
D ハバート曲線は統計に裏付けられている。
E 今後の新規油田の可能性のあるのは超深部海洋と北極圏であり、開発に多くの問題を抱えている。
F オイルサンド:EPRが1.5で、加熱に必要な天然ガスの価格が上昇すると採算が取れなくなる。
2)天然ガス
天然ガスの埋蔵量は179.5兆立方米と見られており、新規ガスの発見量はすでに減少している。
北米の価格は2000年頃から上昇し、現在は90年代の約4-7倍になっている。
石油に天然ガスを合算してもピークはあまり伸びず、2010年頃と見られる。
対策は20年前から開始する必要がある。10年前から対策を始めても、10年以内に不足が生じる。
3) 石炭
埋蔵量は9,091億トンあり、164年の耐用年数と見られている。
・ 品質の良いものから不足してくる。
・ 液体化が進むと枯渇が早まる。耐用年数が半分になるとの見方もある。
・ 2030年までに4,000億ドル、石炭火力発電所を含めると1.7兆ドルの投資が必要。
・ 中国の増加が著しい。
4) ウラン
ウランの埋蔵量は459万トンで67年の耐用年数があると見られている。
・ 2017年までは二次供給があるので需給はバランスしているが、それ以降は供給量が不足する。
・ ウラン生産は寡占化の傾向にあり、世界で8社に絞られている。
・ 天然ウランの利用効率:軽水炉(ワンスルー)0.5%、プルサーマル0.75%、高速増殖炉60%
5) エネルギー収支比(EPR)
電中研報告によれば次のとおり。
現在は米・仏はガス拡散を利用しているが、2010年以降は遠心分離に変更になる。従って将来問題を検討する場合は原子力のEPRは76でよい。
原子力: 76(遠心分離を利用)
原子力: 24(ガス拡散を利用)
石油火力:21
石炭火力:17
LNG火力:6
風力: 6
太陽光: 5
3.
質疑
Q:ウラン需要は21世紀後半にピークになるが、リサイクルになるまで価格は上がるのか。
A:長期的には30−50ドル/ポンドU3O8の範囲に収まるだろう。FBR増殖比1.0でも、21世紀後半にはリサイクルになる。
Q:2030年の置き換えは軽水炉だ、21世紀は軽水炉と考えられる。
A:そうすると少し異なる。フランスは2035年より高速炉を入れる予定だ。日本もそうすべきだ。
Q:2050年実施目標のFBRは、2030年のリプレイスに間に合わない。
A:そうなるとウランが何処までもつか、検証して行く必要があろう。
Q:銅と違って、ウランは資源制約を心配しなければだめなのか。
A:資源量的には銅と同じで十分あるが、需要に合う生産が行われるかどうかの問題がある。しかし、価格が上れば、探鉱開発が活発になり、生産量も増えるのが金属資源の通例。
: Q:オイルサンドはだめか
A:駄目ではない。開発スピードが問題。
Q:EPRが1に近いのでは問題だが、天然ガスでなく高温ガス炉を利用すればEPRは上がる。
Q:オイルピークになれば価格が上がる。何時ピークになったのか、分かるのか。
A:サウジの出荷は新聞に出ている。日本向けの枠どおり出荷しなくなれば、証拠になる。
クエートのブルガン油田は、昨年11月にピークを超えたと公表。ロシアは過去最高が1050万Bだ。
サウジとロシアが下がれば限界だ。
Q:15年後にはウラン不足時代が来る。FBRにすべきだが、2050年では間に合わない。前倒しをすべきだ。
資源論から見たFBRの議論をすべきだ。
Q:もんじゅは増殖比1.2を達成できるが、経済性を挙げる為に1.01を狙っている。
Q:次の政策大綱にこの問題を出すべきだ。
Q:海水ウランをやれば問題ない。
A:掘る方が安い。
Q:劣化ウランとプルトニウムとの混合燃料でやれば、リサイクルできるのでは。
Q:Mox再利用は、再処理が難しい。FBRならば出来る。
Q:天然ガスはどうなるか。
A:天然ガスもいずれピークが来る。アメリカは過去の経験で学習した。最近カタールから輸入している。
以上