会員座談会報告
エネルギー技術戦略と燃料電池技術開発
講師:(財)エネルギー総合工学研究所 高倉 毅 氏
期日:2009年5月21日 15:00〜17:00
場所:原技協会議室
司会:宅間正夫
出席者:末尾
講演概要
エネルギー技術戦略
エネルギー総合工学研究所では、2006年にエネルギー分野の技術戦略マップ策定に向けた調査、2007年にはCool Earthエネルギー革新技術計画に関する調査を開始した。2009年には30分野に関する技術戦略マップを作成した。
Cool Earthエネルギー革新計画では、世界全体で2050年に温室効果ガスを半減する目標に対し、世界をリードできる分野に研究開発資源を重点的に投入することが不可欠と考えた。革新技術の選定に当っては、2050年に大幅なCO2削減に寄与する技術、従来の延長線上にない革新技術、世界をリードできる技術に着目した。
エネルギー源毎に供給側から需要側に至る流れを俯瞰し、効率向上と低炭素化の両面から21の技術を選定した。供給側としては高効率天然ガス、超伝導送電、石炭火力発電、CCS、革新的太陽光発電、革新的原子力発電、需要側としてはプラグイン・ハイブリッド・電気自動車、革新的製鉄技術、省エネ住宅、次世代高効率照明、燃料電池などがある。これらについて2050年までのロードマップを作成した。
エネルギー技術面から見た2050年の社会システムへの技術革新への寄与度は、高効率火力発電(CCS含む)12%、先進的原子力12%、革新的太陽光7%、次世代自動車11%、既存技術の普及等40%など「である。
これらを実現するには、技術開発の進捗度と市場化の状況などを踏まえた適切な官民分担と資源配分が必要である。また、CO2削減はグローバルな課題であり、業種間・分野間の連携や国際的な連携が必要となる。
Cool Earth50策定以降、H20FYには革新的エネルギー技術開発推進予算の増額や、革新的太陽電池国際研究拠点の選定など、具体的な対応も始まっている。
燃料電池技術開発
日本ではこれまでにリン酸形燃料電池(PAFC)、溶融炭酸塩形燃料電池(MCFC)、固体酸化物形燃料電池(SOFC)、固体高分子形燃料電池(PEFC)の開発が進められてきた。
MCFCはH12〜16年度にかけ高積層スタック技術の開発と加圧小型発電システムの開発を目指したが、ガスリークなどの問題から規模が縮小する結果となった。この過程でスタック前処理の難しさなどMCFC特有の問題、電源特会に縛られた対艦巨砲主義や開発体制(研究組合中心体制の疲弊と参加メーカーの撤退(最終的にIHI 1社になり、競争原理が働かなくなった)などの問題が明らかになった。現在はIHIも撤退、国内にはMCFCのメーカーは無くなった。
SOFCは早期にわが国におけるSOFCシステム技術を確立するため、2004〜2007年度にシステム技術開発、2005〜2007年度にかけては要素技術開発が進められた。対象はコジェネレーションシステム、およびコンバインドサイクルシステム開発である。2008年(H20年)には事後評価が行われた。目標の達成状況は参加各社で相違があるが、耐久性に関してはいずれも未達である。また、20kW級コジェネシステムの試作自体はほぼ順調に進展したものの、電圧計測線一本の地絡により発電試験ができず、全ての目標が未達というケースもあった。コンバインドシステムでも多数のセルが損傷し、その後の耐久試験が実施不可能となった。
総じて言えば燃料電池開発における今までの主な問題点は「度重なる計画変更」「課題克服見通しへの甘さ」「不具合続出による時間切れ」が挙げられ、また材料問題の壁も高い。
H20年度からは耐久性・信頼性向上と実用性向上を目指し、要素技術開発がはじまった。
なお、小型SOFCは京セラが独自開発し、独走している。小型機はPEFCが脚光を浴びているが、SOFCは高効率かつ貴金属触媒が不要なことを考えると、強敵となりうる。
以上(石井正則記)
荒井利治、石井正則、石井陽一郎、池亀亮、伊藤睦、上田隆、小川博巳、加藤洋明、金氏顕、金子熊夫、斎藤修、斎藤健弥、佐藤祥次、菅原剛彦、宅間正夫、竹内哲夫、力石浩、辻萬亀雄、土井彰、中神靖雄、西村章、野村勇、橋本哲夫、林 勉、古田富彦、松永一郎、松岡強、益田恭尚、水町渉、若林和彦