自由討論「今後の原子力を取巻く政策課題」議事録
2006年9月25日
文責:斎藤 修、松永一郎
原子力立国計画が通産省の総合資源エネルギー調査会で決定されたのを機会に「今後の原子力を取巻く政策課題」について2006年8月16日の運営委員会で自由討論を行った。その要旨は次のとおりである。
1.原子力の促進
A:2006年の電力の原子力建設計画は2017年度までに13基となっているが需要の見通しをどう考えているのだろう。電源は需要の裏づけがあって作るもの。需要の伸びがない状態で原子力を優先して建設する為には、それなりの強力な政府の指導が必要である。
B:原子力発電屋は、原子力、原子力と言うが、国民は何を選ぶのか。
C:原子力部会での話しでは、向こう10年の電力需要の伸びは13基分あると推定している。今回の原子力立国計画は、その電力需要の伸び分を全て原子力建設で満たそうという国と電力の決意表明である。これが実現すると原子力発電の設備容量は、現在の5,000万kWから6,700万kWになる。
D:原子力立国計画で、国の姿勢が変わった。今後われわれは一般の人に向かって言うのか、国に向かって言うのか。我々は一般の人と立場が違う。国に向かっていうのならば、それなりの裏づけが必要である。
E:13基の建設計画は無理ではない。本当に実現する為に何をなすべきか。常にコメントを出していくべきだ。
F:アクションプランだけでは民間は動きにくい。政府が強く旗を振らないと駄目な部分がある。
G:METIは、「OBは議論のエネルギーを内部向けに使っている。もったいない」といっている。外部への働きかけが大事だ。特に立地地域に対しては、役所も企業も言えないことがある。
H:METIはよくやった。昔のMITIとは違う。しかし国民への公聴・広報など問題は一杯ある。
I:今後のウオッチが大事だ。OBの活用も取り入れられた。我々にもそれなりの責任が生じている。
J:国はシニアの知恵を使っていくということに気がついた。
K:議論の進め方を整理しないといけない。
L:アクションプランをウオッチする。そのための会議を持つことが望ましい。政府に対してアクションプランがどう進んでいるか、尋ねることが必要。
M:我々も具体的な考えをもっていなければ、ただ聞くだけでは駄目だ。
N:役所は既に担当を決めて、予算作りに入っている。
O:19年度予算は始まったばかり。今アクションプランを云々するのは早すぎるのでは。形が決ったら手助けするところはしていけばよい。
P:OBの活用に絞って、広報・公聴を議論したい。
Q:我々になにができるかを国に対して言っていく。人材育成と広報に関してはもう動いている。
R:米国では大きな方向変換を進めている。NRCは新しい原子力を進めるために、新たに350人の職員を採った。本当に原子力を進めるための議論をしている。
S:国民の認識が問題。国民は情報が不足している。マスコミを改革することが必要。
T:NHKと議論する場を作りたい。
U:マスコミは自虐史観の反日論者が多い。マスコミが口を噤んだ。異様なマスコミだ。
敵は何処にいるか、よく識別の必要がある。おかしなことを言う者に対しては繰り返し反論することが必要だ。若手の政治家との勉強会を作るのもよい。
V:欧州の情勢は変わっている。原子力に対して好意的な見方が多くなりつつある。
W:見た番組についての批評を集めるとよい。マスコミ対策が分かってくる。
政府の予算については、早く話しておく方がよい。考えてくれる。
X:現状をメーカーがよく分かっているのか。首相がものを言うべきだ。旗振りが必要。
Y:シニヤー・ネットワーク(SNW)の活動について周辺の動きが、一月以内にはっきりしてくる。学生との対話だけでなく、力の許す限り協力しようというスタンス。
2.原子力立国計画について
A:直近の話だけだ。2050年以後どうなるのかについての話が無い。
B:将来ビジョンが無い。
C:電化を進めて需要を開拓する。
D:深夜電力利用などの負荷率向上策が必要である。電気自動車もある。
E:省エネルギーも大事だ。経産省と文科省は思っていた以上に一緒にやっていこうという気概が感じられた。特に教育について動きがよい。
F:経産省と環境省との間はどうなのか。COP3の実施に対して、あまり協力しているようには見えないが。
G:政策当局の施策の推進状況をウオッチする。そのために進行状況を適宜聞きたい。
H:政府の政策展開をバックアップするための合同の小グループ研究WGを設けたい。
I:民間がやる気になるような制度設計を本当に進めていただきたい。
J:若手官僚と対話する場がほしい。Kさんの話にあったように「アメリカでは、こんなに真剣に原子力を推進している」といった外部の圧力を利用するのも手だ。
L:EEE会議で電事連の話を聞いてがっかりしていたが、原子力立国計画で動きが変わってこよう。
M:今回の原子力立国計画に対する我々からのコメントを、ホームページに出したい。
―整理が必要だ。整理は大変だからそのまま出す、などの意見があり、結論が出ず。
政府との対話については、ただ話を聞かせてほしいというだけでは無理だ、こちらからの提案が必要などの意見があり、とりあえずWGは見送ることになった。
3.まとめ
テーマの割りに時間が多くなかったこと、さらに我々の司会のつたなさもあり纏まった議論にならなかったが、自由討論として皆さんが思っていることを述べられたのではないかと思う。
まとめとして
(1)原子力立国計画は今の段階としてはベスト。今後はアクションプランを見守っていく必要がある
(2)2050年あるいはそれ以降の展望が無い。その時でも原子力の比率が30〜40%でよいのか。
もっと比率を増やすべしと主張していかねばならない。
(3)原子力立国を超えるエネルギー戦略について、国に対して提言していく必要がある。
討論の中から浮かび上がってきたものとしては、
(ア) 政府担当部門との対話―やり方は工夫する必要があるが、意見交換の場を持つこと
(イ) マスコミ対策
(ウ) 広報・公聴におけるOB活用
などであろうか。一部はすでに政府との話し合いも持たれているが、これらについて今後検討を続けていくことが望ましい。
(以上)
出席者(敬称略)
太組健児、崎山茂子、林勉、今村敬一、竹内哲夫、益田恭尚、神山弘章、伊藤睦、小川博巳、金氏顕、柴山哲男、石井正則、待場浩、水町渉、杉野栄美、村田扶美、西郷正雄、土井彰、荒井利治、山崎吉秀、石井陽一郎、石川迪夫
司会:松永一郎、斎藤修