座談会議事録

原子力産業の現状と将来

メーカーの立場から見た新プランと端境期問題―

(第39回運営委員会に引き続き実施)

 

 

1.日時 : 2005年4月27日(水) 15;30−17:20

.講師 : 電機工業会 原子力部部長 中川晴夫氏

.座長 : 杉野 補佐:伊藤

 

講演の要旨

第一部として3月16日、原子力委員会の長計策定会議に経産省が報告した原子力政策の現状と課題、

第2部として3月2日電気工業会が原子力委員会のご意見を聞く会に報告した原子力の研究開発のあり方、そして、

第3部で2月14日原子力産業会議の原子力国際展開懇話会に電気工業会が報告したメーカーの原子力国際展開に対する意見を

合計92枚のパワーポインターで説明された。夫々要旨は次の通り。

1.第1部 国の原子力政策

我が国のエネルギー政策に於ける、原子力の位置付けと今後の方向、海外における原子力発電の動向、原子力発電を取り巻く環境、電気事業者の対応、原子力産業の現状と課題、今後の政策化課題について概ねこれまで各方面で言われていたことを整理した内容の説明であった。

この中で注目すべきことは、

1)原子力の今後の活用方向として、これまでタブー視されていた2030年以降について、現在の水準程度(発電電力量の3〜4割程度)かそれ以上の役割を期待すると数字を明示したこと。

2)これに対応して電気事業者側は、既設炉の少なくとも60年以上の長期運転を視野に入れて最大限活用することを基本として、2030年前後から既設炉を順次新設炉に代替すること、そしてFBRについては、経済性などの諸条件が整うことを前提に2050年ごろからの導入を見込み、遅れた場合にも改良型軽水炉の導入で対応することを基本として、経済性、信頼性の高い新型炉の導入が可能となっていれば柔軟に検討するという姿勢を示している。

3)原子力産業の状況と課題では、今後新規プラントの建設が途絶え、早ければ、2030年ごろに来る大規模建設時代までに、技術・安全・人材の各面で、必要な厚みを維持しうるかが深刻な課題であると指摘。

4)今後の政策課題として、電力自由化の中で、民間の長期投資戦略の判断要素に対応して、将来にわたり、一定規模の原子力発電規模を確保し得るよう、所要の環境整備を行うことが求められる。

 

2.第2部 メーカーから見た原子力の研究開発

原子力の研究開発の意義、役割と考慮すべき視点を述べ、主要原子力研究開発のあり方として、軽水炉、FBRそして原子力の利用拡大ついて、国への期待などを述べている。

注目すべき点は、

1)電気事業者の開発投資が激減する中で産業界の技術基盤維持に繋がる、国の研究開発のあり方と官民の分担が緊急の課題であると指摘。

2)軽水炉の技術開発では、従来機能していたNUPECに代わる国の中核機関の設置と、テーマ選定,成果評価を行う中立的な委員会の設置を国に要望している。

3)FBRサイクルの技術開発では、FBR技術、再処理技術、燃料製造技術を同時並行的且つ段階的に開発することが重要とし、開発推進のロードマップの明確化を求めている。

 

3.第3部 原子力の国際展開

原子力の国際展開(輸出、技術協力)をするに当たり、市場の動向、問題点・課題を整理し、輸出可能なケースを提示し、国への要望などを述べている。

その中での注目点は

1)基本認識として原子力プラントの輸出には、核不拡散問題と技術移転の問題が常に付きまとうこと、市場ニーズとして中国、ベトナム、米国などを挙げて、輸出体制として日米企業連合、日本企業単独が主なケースとして考えられるとしている。

2)米国の原子力輸出規制の現状、日米原子力協定の制約,IAEAとのかかわりを展望して、未だ多くの障壁があることを指摘。

3)原子力プラントの輸出は、当面は米国起源とする軽水炉であり、将来の輸出競争力の強化という観点からは、自主技術による新型炉の実用化が重要としている。

4)輸出相手国の基盤整備への協力がきわめて重要であり、国際的枠組みや二国間協力を通じ、国が主導的に戦略的な国際協力を展開していくことが重要と指摘している。

 

質疑応答および意見の要点

 

国の原子力政策について

1)2030年以後の原子力発電の活用を現在の水準程度の3割から4割以上としたことは、わが国のエネルギーの安全保障の観点から少なすぎるので、容認すべきでないが、電力自由化の中で、短期的な視野でしか見ない最近の電気事業経営者に、このことを言わせたことは一歩前進と見るべきである。

ただ、これは電気事業者の言い分に沿ったもので、国としてのエネルギー安全保障としてのビジョンがない。この様な意見は、電工会に言っても致し方ないので、小泉さんのホームページに、各人が積極的に意見を出すのが良い。

2)メーカーは既設発電所の寿命を60年と決めしまわないで、いろいろ工夫し保守保全をしっかりやれば、より長く持たせられることを言うべきである。そのための研究開発や機器リプレイスなどのビジネスが相当あるはずで、その規模を維持していけばある程度の仕事量は確保できるはずである。ただし、技術者の育成、技術伝承という観点では。機器設計や炉心、核燃料などの個別技術は良いが、プラントの設計取り纏め的な総合的な技術の維持には欠けるので、新規プラントの建設は必要である。

電工会はそのような検討・議論もするべきである。

 

新型炉の開発について

1)電力事業者の買い気が起こる(より安くて、より安全な)革新炉の開発が必要との議論があるが、今の電力は買う必要が無く、従って買う気がないのだから、電力事業者の意向を良く確かめる必要がある。

2)FBRに実用化開発と新型軽水炉の開発との整合性も議論すべきである。

 

国際展開について

1)原子炉の輸出には、技術移転、技術協力の問題が付きまとい、機器の輸出など技術移転の伴わないものは積極的に進めるとしても、技術移転の伴う輸出は慎重にすべきである。

2)輸出のために自主技術での新型炉を開発しても、燃料や核拡散の問題から輸出は無理であり、意味がない。炉の開発は、米国企業と一緒にやっていくしかないのではないか。また、特許問題など基本的な技術移転が絡む輸出は米国企業とやるしかない。

3)技術者の維持、技術の伝承に輸出の環境作りが大切であるが、この問題は、原産中心に動いており、電工会はこれをフォローアップする必要がある。

 

FBRの開発主体について

1)FBRの開発に対してメーカー側の関与は、(2015?年)国の開発成果を見極めてからとしているが、電力やメーカの意見の入ってない実証炉は使えないという意見もあるので、もっとメーカーの意見を出すべきでる。お金を出せということでも良い。

2)緊急性が無く、関係者に本当のやる気が無いので、開発体制の話も実が入ってない。本当にやる気なら、官、民を含めた新しい開発機関を作る議論をすべきである。

3)サイクルの技術基盤維持として、失われた10年を取り返すために電工会の関わり方を検討して欲しい。

 

全体について

1)最近の各方面の意見、問題点、課題などは良く纏められているが、産業界として、主体的に何をしなければならず、そのためには国に何をやって欲しいのか、そうしないと日本は持たないという様なことを明確に言うべきでる。

2)情報公開の時代であるので、萎縮しないで役所に対してもっと言いたいことをはっきり言ってもらいたい。その方が、国の関係機関も遣り甲斐が出る。

3)メーカーは、原子力産業が縮小するのに合わせて、自分も小さくして行かなければならず、その結果いろいろな問題がでてきますと言うのが本音であるが、現実これを言うのは難しい。

 

なお、今日の議論の内容を電工会の上部に伝えてもらうことにした。

以上

出席者(敬称略、順不同)

石川、竹内、益田、小川、伊藤、山名、杉野、荒井、土井、太組、和嶋、松永、小笠原、松岡、石井(亨)、金氏、石井(正)、石井(陽)、堀、畑、武藤(章)、西郷、柴山、川人、佐藤、今村、天野(治)、林