エネルギー問題に発言する会座談会議事録
高レベル放射性廃棄物処分について
日時:平成16年3月17日(木)、14:00〜17:00
場所:(財)原子力発電技術機構、会議室
講師:(財)原子力発電環境整備機構、顧問 鈴木康夫氏
演題:高レベル廃棄物処理・処分問題について
座長:神山弘章
参加者(敬称略、順不動):
斎藤、池亀、石川、天野、林、益田、阿部(進)、石井(正)、尾崎、阿部(史)、石井(亨)、岩井、小川、篠田、佐藤、小笠原、松永、太組、柴山、饗庭、松岡、武藤(章)、土井、杉野、澤井、武藤(正)、税所、松田、堀、山名
資料: 1)高レベル放射性廃棄物処分について
26−5
2)高レベル放射性廃棄物の安全・確実な処分に向けて 26−6
3)高レベル放射性廃棄物はどのような対策をとればよいのですか? 26−7
4)高レベル放射性廃棄物処分に係る海外の動向 26−8
講演要旨:
1)高レベル放射性廃棄物問題の世界の趨勢
高レベル放射性廃棄物処分場が決定した国------米国、フィンランド
高レベル放射性廃棄物処分場を調査中の国------ドイツ、スウェーデン
高レベル放射性廃棄物処分場が未定な国--------英国、フランス、スイス、カナダ
2)日本における高レベル放射性廃棄物問題
@法の整備
「特定放射性廃棄物の最終処分に関する法律」が2006年6月に公布され、これに基づいて
経済産業省の認可を経て「(財)原子力発電環境整備機構」が設立され、最終処分を実施することになった。
火山帯、活断層を避け、地下300m以下の深い地層に処分することが規定されている。
A最終処分施設建設地選定の手順
第1段階 概要調査 2007年頃選定を目標
第2段階 精密調査 2008年〜2012年に選定を目標
第3段階 最終処分施設建設 2023年〜2027年を目標
B安全規制については法20条に以下のように述べられている。
法20条:「安全確保に関する規制については、別に法律で定める。」
3)高レベル放射性廃棄物処分場の立地情勢
2001年11月 市町村を応募主体として公募することを決定。
2002年12月 高レベル放射性廃棄物処分の概要調査区域公募を発表。
その他公募の実情について説明があった。
質疑応答:
I :原子力発電環境整備機構が予定通り実施できなかったら、誰が面倒をみるのか?
S :国の指導などもあると思うが、結局、国会で対策を考えることになろう。経済事情の著しい変 動、天災,地変などで実施不能の時は別に法律で定めることとされており、それまでの間、経済産業省が原子力発電環境整備機構の機能を代行する。
T :第1段階と第2段階の間が空き過ぎるように思うが、地域にどんなメリットがあるのか?
S :第1段階終了後、第2段階の精密調査は地下施設で行うので、この間施設の建設、調査などに時間がかかる。資材の調達、雇用、人材の確保など地元の協力が必要になる。雇用としては年間2200人、固定資産税としては年間約27億円、事業の期間は百年近いと見積もられている。
D :高レベル放射性廃棄物の崩壊熱をパイプで導いて利用できないのか?
M :処分地の地層に傷をつけることは絶対に避けるべきである。
A :海底の処分場についてはどのような規制があるのか?
S :ロンドン条約で、高レベル放射性廃棄物の海洋投棄は禁止されている。低レベル放射性廃棄物もロンドン条約で海洋投棄が禁止されるようになった。人工島を作って処分場を作ることも禁止されているが、陸から斜めに海底に掘り進むことは認められている。
O :応募が公表されれば、メディアに漏れ、予定地の周辺に反対が起こり、知事は承認できなくなる。公募で知事の承認を得ることは困難ではないか?
S :そのようになることもあるかも知れないが、理解を得るように努力する。
B :応募には知事の同意は要らないのか?
S :必要ではない。しかし、調査地区の選定には知事の意見を尊重することが必要である。
A :前の知事が承認して、新しい知事が不承認の場合どうなるのか?
S :法律上場所の選定は国の計画に書き込まれているが、国の「最終処分計画の変更」については、経済産業省が知事の意見を聴き、これを充分に尊重することになっているので、その時の知事が不承認ならば、難しい。
H :日本には適地が無いと言う人がいるが、どのようにお考えか?
S :活断層、火山地帯を除いても、わが国には多くの適地がある。サイクル機構の2000年報告書に述べられている。
R :低レベル放射性廃棄物処分の時の10μSv*と同様な規制が布かれると、如何なるインパクトが生じるのか?
S :研究開発についてはサイクル機構の2000年報告書に述べられている。人工バリアおよび天然バリアを含めて、これに触れないように申請をする。
B :安全に関する考えは妥当と思うか?
S :サイクル機構の2000年報告書に実施し得る見通し,見解が述べられている
M :長期の不確実性はあるが、リスク評価の結果では、定常状態では基準以下の非常に小さいリスクで問題はない。最近の評価では、断層が処分場に起きても大きな事態とはならないと言うことが示されている。
S :埋設した後、300年間モニタリングを実施する費用を計上している。原子力安全委員会は埋め戻しまでは再取り出し性の維持を考えている。
E :再取り出しはおかしい。余分なことを考え過ぎる。
M :回収可能性と言う考えは国際的な傾向となってきている。しかし、実際には可能性を示せば良いと考えられている。
D :フランスでは第3段階まで決めている。日本は先送り主義か?何故〆切を決めないのか?
S :第2,第3段階の目標は閣議決定である。第1段階の目標は原子力発電環境整備機構で決めた.応募が出たら、〆切を発表するようになると思う。
U :2027年より遅れたらどうなる?長くなるとゴネドクと言う考えも出てくるが?
S :毎年および5年毎にチェックする。10年目には政府が施行状況を勘案して,必要な措置を講ずる。50年もずるずる行くことはない。
O :ロシアが使用済燃料の受け入れビジネスを始めると言っているが、それに対してはどのように考えているか?
S :特定放射性物質の処分については日本の法律により実施するので、日本国内で行うのが建前である。
Y :高レベル放射性廃棄物の地層処分は従来の技術問題だけでなく、社会心理学的な要素が大きい。東電シュラウド問題で経験したように、技術的な事実よりも社会がどのように受け止めるかが重要な問題である。地層処分では先ず,安全規制を明らかにして,地元の人に理解してもらうことが第1歩ではなかろうか。
*:規制除外線量。300年後、処分場における一般人の個人被ばく線量はこの値を超えないことを要求された。 (平成16年3月20日 神山弘章)