討論会記録   テーマ: 電力自由化

 エネルギー問題に発言する会

文責:池亀、益田

日時:   1回  平成15年714日 15時―17
2回  平成15年917日 15時―17

講師:  池亀氏、
司会:  第1回:益田、 第2回: 林氏

参加者: 阿部、天野、荒井、池亀、石井、石井(正)、石川、岩井、大井、小川、加藤、神山、斉藤、斉藤、澤井、篠田、柴山、杉野、土井、林、平山、益田、松永、松岡、松田、水町、小笠原、太組、西郷、堀、武藤、藤井、佐藤、税所、山名

 

概要

グローバリゼーションの波を受け、わが国においても電力価格低減を狙いとし、電力の自由化が進められている。

自由化はメリットがある反面、日本のエネルギー問題を考えると慎重な対応を要する点も多い。自由化の問題点を整理すると共に、それら問題点に対しどのような対応をすればよいか考える。

 

講師説明概要

1.    電力価格の低減を狙い平成7年(1995)卸電力分野に競争原理が導入されることが法律により定められた。平成13年度には小売の部分自由化の制度改革が行われた。そして、2000kW以上の大口需要家から適応され、現在、日本全体では市場規模の26%が自由化されている。平成16年4月にはさらに500kWまで、平成17年4月からは50kWまで拡大され全体の60%まで自由化されることになっている。一般小口電力についての自由化は平成19年4月以降その進め方について検討が開始されることになっている。

2.    1995年の法改正によって電力市場に競争原理が導入されたが、送電線の利用料金は変わらないので、需要家の選択は発電料金の高低にしぼられる。こうして原子力発電もまた必然的に化石燃料との競争にさらされることになる。現在も自由化されていない部分には料金認可制度が存続しているが、発電市場での競争は既に始まっている。

3.    一方、二酸化炭素削減を目指し「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法」(RPS制度[@])が成立し、平成15年4月から年度毎に定めた目標値まで、新エネルギー[A]発電による電気を利用することを電気事業者に義務づけている。若しそれが達成できない場合は最高\11/Kwhrを限度とし、新エネルギーによる電力を他所から購入することが義務付けられている。

4.    電力の自由化には電力の供給義務と電力の確保をどうするかという問題が付随する。詳細については未だ何も決っていない。

5.    電力自由化制度改革について審議してきた総合エネルギー調査会、電気事業分科会が2002年12月に纏めた報告では、最大の論点の一つであった自由化と原子力の位置付けに関する論議は先送りされてしまった。電力供給の40%近くを占める原子力を自由化市場でどう扱うかを決めずに自由化市場の設計を論ずる理由は理解しがたい。当然電力市場の自由化の論議の最初に行うべきものであった。
電力自由化の
原子力発電に対する影響には次のような問題があると考えられる。

*  原子力の事業者リスクは、@投資が巨大で資金の回収に長期を要する、Aバックエンドを中心にコストが不確実で、かつ管理が超長期に亘る、B立地地域住民の原子力への恐れに起因する予測不能な停止等のリスク等、規制下でも他電源に比して高い。

*  規制下では事業者は国策実現の当事者として努力を求められた。その代わり、電気事業者の投資は認可料金によって回収できるという暗黙の了解があった。

*  電力の価格が総括原価主義の査定による認可制から、競争原理にもとづく価格へと移行する。従って長期にわたる開発も競争の中で行う必要がある。経済が安定成長期に入り、電力需要の伸びが少なくなる中、競争者の参入などを考えると、電力事業者としては長期的視野を目指した投資よりも、むしろ短期的視野での競争ということに力点を置かざるを得ない。

*  原子力は100万kW、1基3000億円と、ガスタービン等の600億円等に比べ、建設費が高く、償却負担が大きくかつ長期間を要する。即ち長期に亘って経済情勢の変化の影響を受ける。競争市場では事業者は長期のリスクを可能な限り避けたい。現状の化石燃料価格が続けば原子力への新規投資のリスクは大きい。  

* 民間事業者にとって最大のリスクはバックエンド問題である。再処理を含むバックエンド事業には、技術のみならず、政治的、社会的な不確実性が大きく、民間事業者が取り得るリスクを超えている。規制下では事業者は国策実現の当事者として努力を求められた。その見返りとして、電気事業者の投資は認可料金によって回収できるという暗黙の了解があった。

* 事業者に全面的にリスクを負担させる現在の政策は明らかに行き詰まっている。国は原子力にどこまでコミットするのか明らかにする必要がある。

 

電力自由化座談会

                  

議長:電力価格低減を旗印に、一般の消費者の関心が薄いまま、電力自由化が急ピッチで進んでいる現状を再認識しました。自由化の影響、なかんずく原子力分野に及ぼす影響は皆さんが想像した以上に厳しいものがあることが、現実の問題となってきております。この座談会ではできるだけ一般消費者に分かりやすい形で問題点を整理し、自由化の悪い面の影響を少しでも緩和するにはどうしたらよいか、率直なご意見を頂きたいと思います。本日はその第一回目として電力自由化に対する皆様の率直な感想をお聞かせください。(2003/7/14の議論)

 

1.電力自由化に対する会員の感想

*  エネルギーのように国のセキュリティーに直接関係するような大切なものを欧米が自由化したからといって、わが国も自由化しようというのは大きなリスクがあることを皆が強く認識すべきだと思います。米国が自由化したのは豊富な石炭資源と石油の入手にも一定の見込みが立つようになったからであります。その後、ヨーロッパの主要国が自由化に踏み切ったのも、天然ガスのパイプラインが整備され、さらにEUという強力な組織ができたことにより可能となったのです。日本のようにエネルギー資源の供給に不安があり、エネルギー態勢が脆弱な国で自由化を進めるのは国益に反する暴挙であると言っても過言ではないと考えます。

*  自由化というのは言葉の響きは良いのですが、分かりやすく言えば弱肉・強食の競争社会を作ろうということです。バブル崩壊で苦い経験をした例を挙げるまでもなく、競争社会では、余程のメリットが見込めない限り、経営者は不安があるものの採用を控えるのは当然であります。リスクの大きな分野は自然淘汰される運命にあり、国がいくら国策だといってもそれだけで経営者がついていくとはとても思えません。

*  国策を進めるためだといって、無駄なコストを負担すれば即競争に敗れることになってしまいます。従って電力はコストに見合うインセンティブ(誘因)がなければ、国策と雖も協力できないのはやむをえないでしょう。原子力発電も例外ではありません。自由市場では、国策を達成するために必要なインセンティブのコストがその国策のコストとなるといえるでしょう。

*  原子力のコスト評価には不確定な要素(アンサーテンティー)が多く存在します。特に燃料サイクル関連のコストには不確定要素が沢山あります。また、ウランやプルトニウムは核兵器の原料であることから、核不拡散政策など国際政治の影響を受けるという不安定要因があります。

*  さらに、原子力施設の安全性に対する住民の不安から、予測不能な或いは事業者にとって不合理ともいえるコスト負担を強いられることがあります。原因が事業者や規制当局の失態に起因するところが大きいといえなくはありませんが、住民や地方政治の首長の情緒的ともいえる理由により施設が停止に追い込まれることは、電力事業者の意欲を大きく殺ぐことになります。

*  このようなリスクを考えると、自由市場で原子力発電を進めた場合、電力事業者が背負い切れない事態の発生が懸念される可能性を否定できないのですから、電力事業経営者はそれに耐えられないと感じているように思います。

*  競争市場で原子力が淘汰されればそれはそれで止むを得ないという考えもあるのではないでしょうか。ここ十数年という短い期間を考えた場合には、原子力抜きでもやって行けないこともないので、市場が必要になった時に原子力を復活させるという考え方もあり得ると思います。

*  電力事業者はそれで持つかもしれませんが、技術の継承はどうなるのでしょうか。今でも原子力発電所の建設が進まず、厳しい経済情勢の中でリストラが進み、原子力技術者は減少の一途をたどっています。我々原子力OBは、常々技術の継承という点で憂慮すべき事態にあるとの警鐘を鳴らし続けてきた積りです。原子力の建設が停滞してしまえば、次に立ち上げるときに技術者の払底、溶接を初め現場の技術力の衰退に悩まされることは明らかです。これはなにも原子力メーカーだけの問題だけでなく、原子力向け特殊材料などの製造技術や設備能力、ポンプ、バルブを始めとする要素技術の維持もできなくなり大きな問題となるでしょう。

*  もう一つ大きな問題は電力供給責任という問題があります。電力は個人で買い溜めしておくわけにはいきません。外国から買うこともできない商品です。これは皆知っているようでいて、意外に認識されていないのではないのでしょうか。だれが電力供給責任を持つのか。停電はないとだれが保証するのか。電力自由化の影響で、米国ではカリフォルニアの電力不足による停電が発生しました。英国では競争激化による卸電力價格の異常低下によって原子力発電会社の経営が大幅悪化し、政府の援助を受けなければならなくなるという大きな失敗を既に経験しています。自由化論議の中でこの点はどうなっているのでしょうか。

*  正直いって、完全自由化に向けて、なにも決まっていないのが現状だと思います。エネルギー基本計画の策定が進んでおり間もなく閣議決定される見込み[B]と聞いておりますが、そこにどのように盛り込まれるかを注目しています。

*  何故、電力会社は自由化にもっと強く反対しなかったのでしょうか。問題点の認識が甘かったと言わざるを得ません。

*  皆さんから自由化の問題点について多くの指摘がありました。一つ一つはもっともですが、電力自由化問題が起こった時のことを思い出しておく必要があると思います。グローバリゼーションの大きなうねりの中、製造業において国際競争が激化し、日本の電力価格が高いことが問題になりました。その時分、中小企業の経営者から「物は何でも、何処ででも自由に買えるのに、電力は決った電力会社からしか買えないのはどうしてか」と素朴な質問が投げかけられたことも忘れてはなりません。自由化によって電力の値段が下がったことも事実ですし、自由化は避けて通れない方向でしょう。「エネルギー問題に発言する会」としては、皆さんの言われるような問題点をどう克服して、自由化を進めたらよいか提言をして行く必要があると考えます。

 

議長:どのような問題点があるか整理してみたいと思います。

*  やはり一番大きな問題点は燃料サイクルの完結という点でしょう。これらを誰の責任で、どう進めていくか、そして、それらのリスク負担、コスト負担をどのようにしていったらよいかが大きな問題点だと思います。

*  高速炉を含め将来に向けての次世代炉の開発の問題もあります。このような国策に沿って長期間掛かって進めなければならないものについて、だれがどのように開発を進め、長期に亘ってのリスク負担をどうするかはっきりしていく必要があると考えます。

*  発電原価の計算法も償却をどうするか、長期にわたる準備金をどうするかなど、皆に見える形にして、どのようにすべきか議論する必要があるのではないでしょうか。

*  二酸化炭素削減を目標として、平成15年4月に全面実施となった、「電気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置」(略称:RPS)に原子力発電は含まれていません。原子力との関係についてももう少し考える必要があると思います。

*  電力の安定供給に対し誰が責任を持つべきか、という点も忘れてはならないでしょう。

*  エネルギー基本計画の策定の前に、自民党の政務調査会のエネルギー総合政策小委員会で、「エネルギー基本政策に関する中間報告」がこの6月27日にだされました。加納議員の努力もあったのでしょう比較的よくまとめられているように感じます。

*  エネルギー問題はセキュリティーという問題が大きくからんで(外的セキュリティーと内的セキュリティー)います。リスクにも国民のリスク、国のリスク、電力のリスク、メーカーのリスクが存在します。エネルギー基本政策のような重要な問題は国会でもっと真剣に議論すべきではないでしょうか。

 


議長:前回の皆様の感想をもとにもう少し議論を深めていきましょう。(9月17日の議論)

 

2.電力の自由化を何処まで進めるべきか

(1)小口電力

*  一般小口電力についての自由化検討が開始されていますが、40%を越えるこれらの需要について枠外にすることは不可能だと思います。家庭用を自由化することにより、例えば供給拒否を受けたらどうするかなど、一般家庭が受けるデメリットもあるでしょう。ユニバーサルサービス[C]の問題もあります。しかし、制限付きででも自由化することが必要となるでしょう。

*  家庭用電力は需要者の数も多く、コストも掛かることから競争の原理でむしろ高くなるのではないでしょうか。電力は大口電力との差を説明する必要がでてくるでしょう。

*  通信の自由化の場合もNTTの回線を利用することで自由化が進みました。電力配線が確保されているので、対応できるのではないでしょうか。

 (2)電力輸送の問題

*  自由化により遠くの電力から電力を購入することも可能になりますが、当然、遠方から電力を移送すれば送電コストが掛かります。しかし供給区域にとらわれない選択ができるようにしようという建前からパンケーキ問題[D]にはならないようにすることだけが決りました。不思議な選択です。実際にどう運営するかは今後の実施に当たって決めていくべきでしょう。

(3) 事業者リスクと自由化

*  今までは電力は認可制度のもとで決められてきました。発電所の建設費の償却期間は事業者の自由です。しかし、法律で認められた最短の16年の定率償却をするのが一般で、それを越えた年数の償却で申請した例はありません。自由競争となり、競争力を維持するため長い期間の償却とすればそれは電力事業者のリスクとなります。インフレ時代であれば楽ですが、コスト回収は保証されません。石油価格の先行きにも大きく影響されます。企業ですからそれなりのリスク負担は覚悟しなければならないでしょう。しかし、最大のリスクはバックエンド[E]に集中しています。この部分を除いて、自由競争とすべきでしょう。今日の焦眉の急は使用済み燃料の再処理と、それによって生まれるプルトニウムをどうするかということであります。この点は国が責任を持って進めるべきだと考えます。

*  バックエンドにリスクのあるのは分かりますが、それが発電コストに比べどの位になるのでしょうか。少ないのであればそのくらいのリスクは負担すべきではないかと思います。

*  バックエンドの費用は発電コストに比べれば僅かな比率であるでしょうが、火力との競争上は重要です。使用済み燃料の処理・処分をどうするかは高速炉とプルサーマルの計画が頓挫している現状では、リスクは競争市場で民間企業が負える分を超えており、経営者が不安を抱くのは当然です。国がある程度の責任を負担すべきだと思います。いろいろな方法が考えられますが、米国のように使用済み燃料を国が引き取る方式が一番明確だと考えます。これにより国策として原子力を推進するための国民の負担すべきコストも明らかになり、国民的議論も可能になると思います。ただし、電力が国に支払う引き取り価格は直接処分の米国とは違ったものとなるでしょう。

*  電力が自由化されることにより、原子力の割高感が出てきた場合それをどう補償するかは大きな問題です。いろいろな案が検討されていますが、大きく分けると供給のルールを変える案、助成する案が考えられるでしょう。
新エネルギーについてRPS(新エネルギー等の利用に関する特別措置法)が適用されることになったのは、この法律ができても新エネルギーが大きな割合を占めることはないだろうとの観測があったからで、電力供給の40%も占める原子力に同様に一定量の原子力義務付けるNFPS[F]を適用するとしたら、自由化全体に歪みをもたらし、必ず利権を生むことになりますからこれは避けるべきです。

*  助成策の一つとしては、化石燃料に炭素税のような何らかの課税案についても検討が必要ではないでしょうか。

(4)供給責任をどうなるか

*  自由化になれば供給電力が需要に比べ少なくなれば高くなることは経済原理です。しかしそれでは需要者が困るので、最高電力価格について何らかの規制が必要となります。米国カリフォルニアの停電はそのような状況の中、新規発電所の建設をリスクが大きいからと発電事業者がためらったために起こりました。

*  自由化によって供給責任はどうなるのでしょうか。

*  今までは認可の際に電力需給の長期計画を立てて経済産業省に説明し査定を受けていました。完全自由化により料金認可制度がなくなれば当然変わるはずです。自由化で複数の供給者ができれば供給責任を一供給者に負わすことは出来ません。わが国では今のところ供給予備力が20%程度ありますのでそのような心配は当分の間ないでしょう。しかし、例えば新規参入者にも予備率を義務付けるなど、なんらかの方策が必要になるでしょう。未だ具体策については議論されていません。

 

3.核燃サイクルの完結

1)核燃料サイクル施設の特殊性

*  エネルギー基本計画でも示されたように、地球環境維持と、エネルギー問題を考えたとき、国の政策として原子力は進めていかなければならないことはいうまでもありません。その場合、未だ完結を見ていない核燃料サイクルを誰の責任で開発していくかという問題があります。いままでは国の方針に沿って電力事業者が進めてきました。そしてそれらの費用は料金認可制度のもとで電力料金の一部として回収されていました。しかし、自由競争のもとでは、プルトニウムの利用計画も不透明な中、電力事業者が負担することは困難です。

*  アメリカの核燃料サイクル施設(ウラン濃縮施設・再処理施設)は、国費で軍事から出発しました。核燃料サイクル施設数も多く、わが国がそれらと対抗競争するには、国の大きな支援(開発リスクの低減と初期投資の支援)が必要だと考えますが。

(2)燃料サイクルの完結に向けて

*  高速炉の開発ももんじゅのトラブル以来頓挫したままになっています。リスクを背負って開発する余力は民間にはとてもありません。国の政策として早急に開発を立ち上げるべきです。

*   

1.  全体を通しての意見

*  話はもとに戻りますが、電気事業者がリスクがあるから原子力止めたということになったら日本のエネルギー政策はどうなるのでしょうか。また、バックエンドを国が責任を持つことが一般国民の理解が得られるでしょうか。このような問題を抱える中で、電力の全面自由化をやらなければならないのかという疑問は消えません。

*  それこそ国の責任です。エネルギーセキュリティーと二酸化炭素問題解決のために原子力をやらなければならないという国の責任を明確にするというチャンスではないでしょうか。一般国民にも納得して貰う必要があると思います。

*  原子力のコスト競争力はあると思っています。しかし、人的要因や、規制緩和が進んでいない現状をみると原子力が自由化される条件が整っていないのではないでしょうか。

*  原子力のコストは長期リスクが低いとみれば安いし、リスクが高いとみれば高いということだと思います。この40年の世の中の変化を見ても、長期間償却ということは大きなリスクです。料金認可制度がなくなった場合、将来の処理・処分も含め、資金回収の保証がなくなります。電力会社にとってはリスクを減らそうと考えるのは当然といえます。石油価格については、現在バレル30$位ですが、10$高くなれば発電コストで1円70銭に相当するといわれています。一般的傾向としては、石油は高くなるだろうと考えられます。長期的に考えられる経営者は原子力を選択すればよいわけですが、短期間で勝負するためには長期リスクは負いたくないというのが一般的な経営者です。バックエンドについては掛かった金が回収できないのではないかというリスクが特に大きいでしょう。

*  企業の責任外の社会環境の変化によって起こったリスクに対してどうすればよいと考えられるのですか

*  いろいろ考え方はありますが、それを国に期待するのは難しいと考えられます。焦点がぼけないように、バックエンドを除いては自由競争しようと言うのが私の案です。

*  食料や軍隊と同じように安心や、電力の安定供給を得るにはある程度のお金が掛かることを国民に納得して貰はなければならないのでしょう。

*  安定供給については食料や軍隊に絶対が無いように、完全は望めません。電力の安定供給も今程度の設備余裕を持っていればよいと考えるべきでしょう。

*  リスクをあまり強調されると違和感があります。アンサーテンティーとリスクを分けて整理し、アンサーテンティーに対しては国策から考えて国が責任を持つべしとすべきではないでしょうか。企業である以上リスクは負うべきです。そのような判断によればバックエンドは国が責任を持つべしという考え方が出てくるでしょう。

*  国は原子力を推進しようとするなら、何故バックエンドに責任を持とうとしないのでしょうか。

*  官僚としては、面倒な後始末はしたくないということだと思います。勿論再処理の仕事は国自身がやるのは金が掛かりますから、民間に委託すべきです。

*  わが国のエネルギー・セキュリティーは原子力があってなんとか保たれています。短期的な経済原則が要求される自由化の中で長期的視野を要する原子力には弱点がある上、アンサーテンティーの部分の多い原子力をどう取扱うのか、十分な議論がなされたのでしょうか。広く門戸を開いて、継続的に議論をする場を作ることを会として提案すべきではないでしょうか。

*  全くその通りです。このような問題は今までクローズされたところで議論されて来ました。時代遅れの考え方ではないかと考えます。もっとオープンな場でいろいろな意見を出し合って議論すべき時代でしょう。

*  一般の消費者は安い電力が停電なく供給されればよいので、難しい議論にはついていけないでしょう。自由化については国と電力の専門家の間で良く議論し、その過程を世間に公表していくというのが一番現実的ではないかと思います。そして、エネルギー基本法にしっかり謳うべきです。その際自由化の基本理念を明確にし、バックエンドについて国が責任を持つ理由を示すことが大切です。



[@] RPS : Renewable Portfolio Standard

[A] 新エネルギー:RPSにおける定義は太陽光発電、風力発電、バイオマス発電、中小水力発電(水路式で1,000kW以下)地熱発電である。二酸化炭素を排出しない大型水力発電、原子力発電は含まれていない。

[B] 平成15107日エネルギー基本計画は閣議決定された。「需要に見合った信頼性の高いエネルギー供給システムを構築する。とりわけ電力はリスクを最小限にとどめるため適切な対応を図る」とある。しかし、供給責任については触れていない。 http://www.meti.go.jp/kohosys/press/0004573/参照

[C] ユニバーサルサービス:一般電気事業者が需要密度の低い地域や遠隔地の需要者にも一律の料金体系で電力供給を行うこと。

[D] パンケーキ問題:振替供給料金制度:発電した電力を最終消費地に売るために、供給区域をまたぐ毎に課金される制度。パンケーキのように積み重なっていくことからパンケーキ問題と呼ばれるようになった。

[E] バックエンド:核燃料サイクルの内、原子力発電の“発電”を基準にして、それより前の工程を“フロントエンド”、後の工程を“バックエンド”と呼んでいる。使用済み燃料の再処理、回収プルトニウム等の再加工の各工程から発生する廃棄物の処理処分等を指す。

[F] NFPS : Non-Fossil Fuel Portfolio Standard