会員座談会報告
持 続 的 成 長 へ の 提 言
―C O P 15 を 超 え てー
期 日 2009年12月16日 15.00〜17.00
講 師 参議院議員 加納時男
場 所 原技協会議室
司 会 竹内哲夫
T.講演概要
「持続的成長への提言―COP15を超えてー」と言うテーマで、COP15を巡る日本の取組みや、国際協議の課題、さらに非化石エネルギー(原子力発電や再生可能エネルギー)の拡大の方向性等について講演をお聴きし、質疑応答を行った。
1.基本的な考え
エネルギー政策は「エネルギー政策基本法」の定めた原則に基づき推進している。
(1) この法律では、エネルギーの安全保障(エネルギー・セキュリティー)と環境への適合性を最優先している。
(2) さらに、エネルギー利用の効率化と脱炭素、ならびに特定地域からの輸入に過度に依存する体質の改善を目指している。
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特定地域からの輸入に過度に依存する体質を数字で見ると、一次エネルギーに占める石油の比率は日本が50%、アメリカが40%とあまり差はないが、中東の石油への依存度では日本が45%であるのに対し、米国は6%と小さい。
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朝日新聞は「エネルギー政策基本法」に対し、この法律が原子力の推進の法律であり、またエネルギー政策は国が決めるとしていることはおかしいとの立場から反対の主張を社説で述べていた。
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この法では「再生可能エネルギー」も必要だが、原子力の重要さを明確にしている。また国と地方との関係では、地方自治も大切だが、エネルギーの基本政策は国が決めるものとしている。
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エネルギーの効率化の点ではGDP当たりのエネルギー、粗鋼トン当たりのエネルギー、石炭火力発電の熱効率、旅客輸送における公共輸送(鉄道、バス等)の分担率等で日本は世界に誇れるレベルにある。
2.気候変動に関する国際協議
(1)
COP15で、京都議定書を延長しようという意見がでているが、京都議定書には次のような欠陥があり反対である。
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中国、米国といった最大級の温室効果ガス排出国が入っていない。
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京都議定書に加盟している国の温室効果ガスの排出量は、世界の温室効果ガス排出量の30%弱でしかないこと。
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1990年といった特異な年を基準としていること。
(2)
新しい国際枠組みの視点
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温室効果ガスの削減について、条約を先に決め、その後国内の法制化を決めるトップダウン方式では駄目(京都議定書において、アメリカは国際的に取り決められたものを、後に議会が否決した)で、国内法を先に決め、その後において国際協議をするボトムアップ方式を取るようにすべきである。
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中国はGDP当たりの温室効果ガスを40%〜45%削減すると言っているが、GDPが10年間で2倍、ないし3倍になるとすると、温室効果ガスは現行の1.2倍ないし1.8倍に増える計算となる。
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COP15では先進国と開発途上国との主張が対立しているが、中国はGDPがやがて日本を追い抜き世界で第2位になろうとしている国であり、能力に応じて責任を発揮して貰いたいと思う。
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公平性の点からは、限界削減費用の均等化を考慮したIEAのコメントでは、2020年での公平な削減幅は米国▲3%、EU▲23%、日本▲10%としており、米国、EUは既に表明している削減幅(▲1%、▲20%)と概ね同じだが、日本の▲25%は突出している。
(3) 鳩山首相の国連演説(2009.9.22)
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鳩山首相は温室効果ガス削減の中期目標について、主要国の参加による「意欲的な目標の合意」を前提に「1990年比で2020年までに25%削減を目指す」と表明したと日本のマスコミでは報じているが、英文のテキストでは、「2020年までに25%削減を目指す」「あらゆる政策を総動員して実現を目指す」と先に述べており、その後でHowever 全ての主要国の参加による意欲的な目標の合意が「前提」になると述べている。約束が先にきており、後で条件をつけていることに留意する必要がある。
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今後の課題として京都議定書の暫定的な延長が話題になっているが、日本は安易な妥結をすべきではないと考える。
3.エネルギー利用の効率化とクリーン化
産業部門、民生部門、運輸部門、発電部門それぞれに、エネルギー利用の効率化とクリーン化の課題がある。
発電部門の効率化の関係では米・中・印3カ国の石炭火力の熱効率を日本並みにすると、それだけでCO2は▲13億トン(=日本の総排出量と同程度)減少する。
4.非化石エネルギーの拡大
(1) 原子力発電、原子燃料サイクルの拡充
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原子力発電所の稼働率の回復、向上が課題。(80%〜85%以上が目標)
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今後、非化石発電の比率を50%、うち原子力比率を40%以上とすることが目標。
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MOX燃料の軽水炉での利用がスタートしたことは喜ばしい。
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FBR原型炉「もんじゅ」は2010年に運転再開予定。
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高レベル放射性廃棄物の最終処分地が未決定。先進成功例(フィンランド、スウェーデン、フランス)を参考にしつつ、国の役割の強化を図って解決に努める必要がある。
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最近、日本の世論も「原子力支持」が6割と増えているが、一方「不安」と言う意見もまだ54%ある。
高レベル放射性廃棄物について、「我々の世代が責任を持って処分地を選定すべき」と言う意見に「賛成」が8割にのぼるが、一方「自分の住んでいる市町村または近隣の市町村に計画された場合」は「反対」と言う意見が8割にのぼる。
(2) 再生可能エネルギー
長所もあるが、密度の薄いエネルギー(効率が低い)、変動が激しい(設備計画に組み入れ困難)、系統に及ぼす影響が大きい等の短所もある。
U.質疑応答
Q. 原子力政策について、民主党と自民党の違いはどこか。
A. 二つ懸念がある。1つは、民主党は原子力利用について、安全を第一としつつ、国民の理解と信頼を得ながら着実に取り組むといっているが、連立を組む社民党は反原子力の考えである。2つは、民主党の中にも旧社会党系で反原子力の人がいること。
Q. 高レベル廃棄物処理の問題で応募制はうまくいっていない。国が前面に出て行こうという動きになっているか。
A. 公募方式では手を挙げにくい。国から文献等により調査候補地を複数地点同時に働きかけることなど、国が一歩前へ出ることが必要。
Q. 環境税の方向についてはどう考えるか。
A. 環境税には反対である。石油・石炭税も実施されており、これに加えてでは重課税となるので、産業界は反対している。日本独自の重課税は産業の国際競争力を弱め、国内産業の空洞化と失業の増大をもたらしかねない。一方地球レベルでのCO2増加を招く。
Q. 民主党は原子力推進だというが、原子力比率を30%から、増やす考えはあるだろうか。太陽光発電が2800万kWにもなると、原子力発電の建設は繰り延べる方向になってしまうのではないか。
A. 今後、非化石発電比率50%、うち原子力比率40%以上が政府の目標として決められている。再生可能エネルギーの発電電力量に占める比率が国会の中でも話題になった。ドイツでも原子力発電は22.3%を占めているのに対し、風力は6.3%、太陽光は0.5%にしかすぎない。日本でも太陽光発電を2800万kW造るより原子力発電所の建設の方がはるかにコストが少なくてすむ。また、原子力発電の稼動率を上げることも重要なポイントだ。
Q. 中東の石油への依存度が6%と小さいアメリカでも中東への依存度を1/4にしようとしている。日本は民主党になって、どういう姿勢で臨もうとしているのか。
A エネルギー基本計画には.民主党も賛成した。これから民主党もセキュリティーの観点から中東依存の問題について重く捉えると思う。
Q. エネルギー政策はエネルギー・セキュリティーのためにやっている面が強い。ピークオイルの問題もあるが、どんな風に国会の場で取り上げられているのか、マスコミや国民の目に見えない。
A. エネルギーや環境の問題を国会で取り上げてもNHKがなかなか中継放送をしない。
Q. 原子力プラントの国際展開について、民主党はどう考えているのか。輸出産業としての原子力の育成について発言して欲しいと考える。
A. 国際展開は日本のビジネスになる。セキュリティーや環境のためにも重要である。国として一番大事なことは国のトップの動きである。フランス大統領のように日本の総理大臣が経済人を同行して自ら行くことが重要である。
Q. 高校、中学、小学校のエネルギー教育が大切だと思う。
A. 原子力エネルギー教育には民主党も賛成している。小、中、高校向けの副読本を30位の都道府県で作っている動きもある。
以上(佐藤祥次記)
出席者
荒井利治、石井正則、石井陽一郎、上田 隆、小川博巳、小野章昌、加藤洋明、金氏顕、川人武樹、後藤 廣、紺谷健一朗、西郷正雄、税所沼南、齋藤健弥、佐藤祥次、清野 浩、宅間正夫、竹内哲夫、辻 萬亀雄、土井彰、中神靖雄、西村 章、野村勇、橋本哲夫、林 勉、古田富彦、益田恭尚、松岡強、松永一郎、水町渉、若杉和彦