「エネルギー問題に発言する会」座談会議事録

題目:軽水炉開発についての課題

日時:平成17720日および817

司会:益田恭尚
     

はじめに

司会:世界のエネルギー情勢は益々厳しさを増しています。その中で原子力の開発は世界の一部においてはその必要性が唱えられ、或いは実行に移される動きはあるものの停滞状態が続いています。日本においても、国民の放射線についての誤解、高レベル廃棄物の処分問題、Pu問題に加え、原子力発電所のトラブルにも関連し原子力が国民の理解を得られるには程遠い状況にあります。さらに、原子力発電所を建設する電力会社の側にも、電力自由化に端を発し、原子力のバックエンド、住民運動、運転の強制停止、核拡散などの国際リスク等により、コスト回収の保証がないという投資リスクがある上、原子力発電所が初期投資、初年度発電コスト等の点で経営者としては好ましくない要因があります。そこに、少子化などによる電力需要の伸びの停滞から新規原子力発電所建設を躊躇する状態にあり軽水炉の新規建設は停滞気味であります。一方、最近の雑誌(原子力eye vol.51 No.6 原子力の中長期展望を語る)の対談で、原子力政策課長が次のように述べています。「原子力が前に出にくい状態に構造的になっている。国の政策は電力自由化に注力してきた。電源選択は電力の判断として国は一歩退く傾向がみられた。国も電力も将来の原子力の方向性をはっきりいわないため、メーカーも目先の生き残り策に注力するという“三すくみ”状態になっている。先ずは国が一歩前にでないことには話が始まらない。そこで原子力委員会新長期計画策定委員会に2100年に向けてのエネルギー提示し、“2030年以後も總発電量の3040%程度という現在の水準程度か、それ以上の供給割合を原子力発電が担うことが適切である。”という方向性をだした。これは電力会社と事前に十分協議し、国と電力の共同作業で裏付けをしっかりさせてだしたものである。」と述べ、それに対し電力からも「国から政策的な取組みとして、原子力の将来性についての方向性が明示され、今後の展望が分かりやすくなってきた」と応じています。
このような経緯で、つい先ごろ原子力委員会から原子力政策大綱(案)が発表され意見公募が行われています。そして、この大綱を受けて816日から総合資源エネルギー調査会、電気事業分科会、原子力部会で具体的審議が開始されました。
本日は原子力のこのような状況は果たして放置してよいのか、また我々として何ができるかについて、軽水炉を中心にして自由なご意見をお願いします。

大きな問題点は

メーカーOB,H3040%程度か、それ以上という方針が出され、我々は“それ以上”というところに期待していたのですが、どうも事態は逆で、30%が電力会社の一つのターゲットとなってしまっているようです。要するに現状維持です。本当にこのままの状態にしておいてよいのかというのが我々の心配です。心配であれば何らかのアピールをしなければならない。その辺の認識について皆さんで議論しなければならないと考えます。

メーカーOB,I:京都議定書が発効しましたが、第一期間についてはある程度認識されているものの、国としても本当にそれを守る気があるのか疑問です。2013年以降の第二期間の更なる低減については殆ど認識されていません。もっと厳しい状況を想定しなければならないのではないでしょうか。

メーカーOB,D:二酸化炭素の取引は3,800/トンと新聞に出ています。これですと、石炭火力発電は3/Whr近くの負担となり、発電単価は倍近くになることになります。それをどう考えたらよいかが問題です。

メーカーOB,D:我が国のエネルギー需要がどうなるかは一応出されています。今後何十年間も70%を化石燃料に頼っていけるのかという点について皆さんがどう思うかがポイントです。今後も70%を化石燃料に頼っていけるのであれば、原子力の増強は不要だということになるでしょう。電力設備の建設は電力の判断に任せればよいことになります。私は疑問だと思っていますが、その点から議論を絞っていって、意見を言うべきでしょう。

電力OB,Ik:経産省が2030年を予測し昨年発表した報告書のモデルでは石油価格を27.4$/バレルとして予測して計画しています。それが60$/バレルになってしまいました。石油価格が30$/バレル上昇すれば発電コストは34円上がり大変なことです。その意味から云えば勝負は付いています。

司会:それにも関わらず、石油価格が60$/バレルになっても、電力を初め誰も困らないのは何故でしょうか。代替燃料がない状態だからでしょうか。

電力OB,Ik:天然ガスの長期契約等もあり石油価格の上昇の影響は、経済的にゆっくりした形でしか現れません。円価格の上昇もあり嘗てのオイルショックの時のように厳しい状況にはありません。長期的にみれば経済的影響ははっきりして来るでしょう。しかし、競合するエネルギーがない状況では石油価格が上昇しただけでは電力会社は大きな痛手は受けません。従って、直ぐには原子力発電所を建設しようというインセンティブにはならないでしょう。

電力OB,Is:長計というのは今後10年のことであります。先の見通しについてみますと、需要にしても、将来の水素利用についても、核燃料サイクルにしても、もんじゅにしても、将来どうなるか全く分からない状態です。ちょっと待ってくれというのが偽らざる所でしょう。

電力OBIk:自由化はどうなるのか、需要の伸びはどうかなど考えると、電力がヘジテイトするのも尤もだと思います。施設計画も県や地元の合意が必要で、計画通り達成できるとは限りません。世の中が石油価格の上昇に直面し肌で感じるようになり、矢張り原子力をやらなければならないといった考え方が変わらないと結局は解決しないのでしょう。

国のエネルギー長期計画はどうなっているのか

電力OB,T:日本はエネルギー計画という点では非常に弱く、国としてやっていないのが現状です。エネルギーの価格は世界が決めていくものです。LNGは一年遅れで値上がりしますが、これからは高価格の時代です。その時はもっと深刻なシェアの問題になります。さらに決定的な問題は地球温暖化問題をどうするかということです。若し、強権発動してでも徹底的にやるということであれば状況はガラット変わってしまいます。私は間もなく原子力にとって順風が吹いてくると思っています。

メーカーOB,K:二酸化炭素問題ももっと真面目に検討しなければならないと考えます。総合資源エネルギー調査会の原子力委員会ではなく、総合部会とか企画部会に意見を出さなければならない問題でしょう。

電力OB,T:原子力発電所をどの位建設しなければいけないかについても、これらを総合的に考えて、総合資源エネルギー調査会で決めるべき問題でしょう。

メーカーOB,S:電力全体の3割から4割と言っていますが、需要の減退などで現在の新設計画さえも削られる可能性があるのではないでしょうか。新設プラントを確保することが大切ですが、古い原子力を廃炉にしてやるのか、火力をつぶしてでもやるのか、どのように実現していくかのプロセスをはっきり議論しておかなければならないと考えます。

メーカーOB,H:現在の原子力政策大綱には石油がこんなに上がったことを織り込んでいないのではないでしょうか。先を見るのは国の責任だと考えます。

電力OB,Ik:石油価格の高騰で原子力の経済的優位性が明らかになれば、原子力のリプレースで新設プラントを計画するだけではなく。火力のリプレースに入り込むようにしなければならないのだと思います。

メーカーOB,H:電力事業者が原子力を進めるという選択ができるよう、エネルギー政策として税制改革も含め国としてやっていくべきだと考えます。最近の報道によると米国も補助金やリスク負担等の助成策を考えているようです。この点も勉強し、政府に対しぶつけていかなければならないでしょう。

研究所OB,Mu:米国のエコノミスト系のジャーナリズムRaul Roberts(光文社版:久保恵美子譯:石油の終焉)が、「間もなく石油に頼れなくなるが、その時、原子力も「技術、経済、政治の各面で問題が山積していて、その将来性には疑問が残る」と書いています。その本がベストセラーになっています。その本を読むと米国で原子力が上手く行くかには疑問が残ります。

電力OB,T:米国はエネルギー政策に敏感な国です。いろいろな機関でエネルギー状勢を良く調べ、国が主導して権益を確保しています。日本は自由化以前には電力会社ができるだけ国の指導を避け、政府・電力・メーカーが阿吽の呼吸で整合が取れていました。今は端境期で、これから国の政策をどのようにとって行くかが問題です。なんでも原子力委員会に押し付けますが、原子力委員会は政策決定機関ではありません。意見の正非は云えても、これをやれとはいえないのです。国の政策をどうするかが抜けています。こんなエネルギーに鈍感な国はありません。

メーカーOB,K:大きな問題は廃炉問題です。廃炉のための事前計画を計画的にしていかなければなりません。少なく見ても廃炉に10年、建設に10年かかります。20年前倒しで考えていく必要があります。

電力OB,Is:大綱に示された原子力の発電計画は5,800kwとなっており、以前、環境問題解決策としてでていた6681kwは消えてしまっています。電力は夜間火力を止めているので、石油は13%しか占めていません。石油が上がっても電力料金にあまり響かないのが実情でしょう。石炭は結構使っています。LNGは長期契約ですので決った量使わざるを得ません。電力需要開拓と廃炉をどのようなスケジュールで実施するかについても触れていません。環境問題は国境もなく、中国などの対応も非常に重要だがこれにも触れていません。少子高齢化問題や省エネ等あり、条件を決めろと言われても分らないのでしょう。

メーカーOB,O;我が国では国に政策がありません。30%40%というのは、電力が10年毎に出す施設計画の平成17年度長期計画を積み上げただけで、国家戦略としてどうするかは入っていないと考えざるを得ません。原子力政策大綱を出すのなら国家戦略として入れるべきです。エネルギー危機をどういうものを想定するか、これは原子力委員会の範囲を超えているのではないかと思います。本来は総合資源エネルギー調査会で議論すべき問題でしょう。エネルギー計画はこのような想定を基本として進めるという合意が必要です。


技術継承

メーカーOB,A:“三すくみ”状態といっても、3者危機感が全く違います。電力は現状これ以上原子力を増やす必要はない。必要になれば、世界のメーカーを探せば発電所は作れると醒めた見方をしています。国はどうか、電力の計画は電力に任せればよいと考えています。エネルギー問題を国家存亡の危機と思っている政治家はおそらくいないのではないでしょうか。メーカーはこのままでは業務を縮小せざるをえず、技術継承どころではないと心配しています。矢張り一番心配しているところが声を上げなければならないのではないでしょうか。日本ではメーカーはなにも言えないように育ってきましたが、これからははっきり云うようにしていかなければならないと考えます。

メーカーOB,H:電力はこのままでもなんとかなるでしょうが、メーカーは原子力を維持できなくなり、止めてしまう選択肢もあり得ます。そうなると国家戦略的にどうするか誰かが考えなければなりません。国がしっかりしろという意見はありますが、現状を見ますと、国がエネルギー政策を基本的に考えしっかりしていくということは考えられそうもありません。電工会が中心となって、このまま行った場合、日本の将来の原子力は本当に大丈夫なのか詳細に分析し議論し、それに基づいてはっきり意見を言わなければならないと考えます。電工会にそのようなレポートを出すよう強く求めたらどうでしょうか。

メーカーOB, S:軽水炉建設のリーダーシップは今までは電力が取ってきました。自由化の基では誰がリーダーシップを取るかが問題だと考えます。国、電力会社、メーカーが三すくみの状態の中で、現在の原子力発電所新設計画は、わが国のエネルギー安全保障上から見て問題ない最終結論であるのでしょうか。メーカーとしては今ひとつ自信を持てない所であります。 電力需要が頭打ちと言う予測はあるものの、国が中心となり、一次エネルギー資源の先行き等を十分に考慮して、今後も本当に原子力発電比率30%をベスト・ミックスとしてキープしていけば良いのかを十分論議すべきでしょう。それなしに、エネルギー安全保障と言う国家百年の計という重要問題を安易に論じられているのではないかと思えてなりません。 

メーカーOB, S:今まで原子炉メーカーは軽水炉の新設で生きて来ました。今の計画では1.7/年からマキシマムで考えても0.4/年になってしまうのです。これがわが国としての結論であれば、メーカはそれぞれのポリシーにもとづき、需要規模に合わせた合理化を、従来以上に図ることになりましょう。その場合、2030年頃に予想される既設原子力発電所リプレース需要を始めとする大規模建設時代に、十分対応出来ない恐れを覚悟しなければなりません。

メーカーOB, D:メーカーを生かすために原子力をやるわけではありません。その点誤解を与えないようにお願いします。

メーカーOB,I:昭和3233年頃は、いずれ原子力発電をやらなければならなくなる、メーカーとしてはそのために勉強をしておこうと努力しました。しかし、今は当時の意気込みはありません。後10年なら世代交代があっても、何とかなるのと考えますが、15年が限度です。それ以上現状が続いたら本当に難しくなります。その点を為政者がどう判断するかが問題です。

司会:本当にメーカーは15年持つのでしょうか。早く世の中が気付き、原子力が再立ち上げすることになればよいのですか。

メーカーOB,I:プラントメーカーはなんとか持っても素材メーカーは問題があります。

司会:全産業分野を考えて意見を纏める必要がありますね。

電力OB,Is:日本の電力需要は伸び悩んでいます。需要開拓という点では国内だけ相手にしていてもだめです。輸出に注力する必要があります。化石燃料の値段が極端に上がれば、世界も化石燃料はやめたということになるでしょう。その時どうするか、原子力に頼らざるを得ないでしょう。

原子力部会の議論

司会:原子力委員会の原子力政策大綱を受けて、総合資源エネルギー調査会、電気事業分科会、原子力部会が開かれています。傍聴されたMnさんその様子をお話下さい。それを踏まえ、さらに議論を進めましょう。

メーカーOB, Mn816日から総合資源エネルギー調査会、電気事業分科会、原子力部会が開かれました。原子力委員会から発電関係の実行案について審議するよう依頼されたという位置付けのようです。広い分野の問題について一年程度掛けて順次審議を行う予定です。

司会:発電関係の実行案は原子力部会、需給予測については電力会社という位置付けのようです。今後の原子力委員会と原子力部会の動きに注目して意見を言っていかなければならないと思います。

メーカーOB, Mn:今回の資料で経産省としては始めてオイルピークの話が出てきたことは注目すべきでしょう。

次世代炉の開発について

メーカーOB, Mn:次世代炉の開発に付いて「今後の軽水炉の技術開発の方向性:2030年以降の新設の軽水炉をターゲットとし、海外展開をも睨んだ、次世代炉のFSに着手する。メーカー主体となって国内のみならず海外の市場を視野に入れ、官民一体となって進める。国は戦略的取組みをすることが必要。」と述べています。

メーカーOB,H:メーカー主体となって開発するとありますが、原子力発電のような大型開発は、採用するという前提がなければ開発は進められません。リプレースもどのプラントを何時どのように実施するのかの計画が示されなければメーカーは乗るわけなは行かないでしょう。海外に輸出しようとしても実績がないものを買うはずがありません。開発に当り、その辺の認識が甘いのではないでしょうか。メーカーは本当にやる気があるのでしょうか。

大勢:原子炉部会でも意見があったようにペーパーリアクターになってしまう恐れがあるますね。

電力OB,IkABWRの開発には電力が270億出しました。自由化の元ではこのような意思決定ができるはずがありません。新型炉の開発に当り、原子量発電所に対するユザー・リキュアイアーメントは出せるだろうと思いますが。

メーカーOB,AABWRAPWRというものがあるのに、新型炉を開発するのはどのような位置付けなのでしょうか。

メーカーOB,D:技術的な基本仕様をどう考えているのか、コスト的にどう考えるか、電力会社が目標を示すべきです。

大学OB,I:次世代炉の開発の案は、新設炉が望めない現状では、メーカーがこのままでは原子力の技術は持ちませんというので、METIが考え出したのだと思いますよ。

メーカーOB,HFSに続いては大型実証試験が必要になりましが、そこまで考えているのでしょうか。

大型開発について

メーカーOB,Is:米国が世界に呼びかけている、第4世代のような大型開発にMETIは金を出す考えはないのでしょうか。原子力は他電力に比べ発電コストも安く開発する価値がある。国策に沿って開発の重点をおくべきだと考えます。

司会:エネルギーが総合科学技術会議の開発重要項目に今まで入っていないのは問題点であるとの意見は出てきており、これを何とかしようという動きはあるようです。

大学OB,I:第4世代の開発は文科省ということになっているので、経産省からはそのような意見は出ないのです。

官庁OB,M:残念ながら日本には国が主導して自分たちの考えを主張して第4世代の開発をリードして行こうという考えも組織もありません。国際会議への出席者も適任者が出ていると言えないのが現状でしょう。日本には国策として自分たちの考えを主張していくというよりも、こういうことになったから金を出して下さいということにならないと、なかなか金が出ないシステムです。

人材育成について

メーカーOB, Mn:原子力分野の人材育成についてMETIの立場は「研究者は深刻な問題になっていない。技術者は技術の継承の問題等が生じるおそれがあるが、技術開発の戦略的推進及び原子力産業の国際展開等によって個別に対応する。現場の技能者は人員は確保されており、質の向上が課題。資格認定、教育制度について支援する。」 「技術者は技術の継承の問題等が生じるおそれがあるが、技術開発の戦略的推進及び原子力産業の国際展開等によって対応することが基本。」と云っています。

司会:我々経験者は、物を作って経験していかなければ技術伝承はできないと考えていすが。METIや原子力委員会の考えは技術開発で技術を維持しようという立場であり、認識が違うようで心配です。

メーカーOB,D:電工会等でメーカーとしての意見を纏めはっきりした形で意見を言う必要がありますね。

電力OB,S:「電気事業者、メーカー等が地元と連携して実施する個別企業の枠を超えた人材育成・技能の継承を図る取組みを国が支援してはどうか」とありますが、電力は地元と密着した事業運営を行い、地場産業を育成して行くというという約束であったはずです。日本流もそれなりに良いところがあるのです。

メーカーOB,AMETIの立場は「アメリカ流のコストダウンと技能レベル向上を狙うべきである。いまや、定検の技能継承もメーカーだけでは維持できないだろう」という立場と考えられます。

「エネルギー問題に発言する会」でできることはなにか

官庁OB,M:「エネルギー問題に発言する会」で何をやって行ったらよいかが何時も問題になります。皆さんも国の動き方について分かって来られたと思いますが、日本のお役所という所は民間の活力増大の場作りを基本スタンスとし、政策立案の場合も関連業界と有識者よりなる審議会を立ち上げて議論して作る手続きをとるため、とかく現状是認的な抽象的文章で飾られたものになりがちで、痛みを伴う改革的な政策は出にくいのが実情です。今後の周囲環境を考え、反対を押し切ってでも強い政策が必要であれば、利害関係者を公式の場で根気強く説得する必要があり、それには当局に強い危機意識と信念が無ければできなと思います。
そのような意味からいうと、この会の役目の一つは、具体的な将来像をもとに皆に危機意識を植え付けることかも知れません。

教育問題

メーカーOB,A:次の世代の教育に賭けるべきであるというのが私の持論です。次の世代にいまの状況をよく知らせることから始める必要があります。そして、根幹は日本というものをどうするかにあるのだということを教えなければなりません。歴史認識、国家觀、科学教育、民主主義のあり方などもそこから生まれてきます。自分達が何をしなければならないかを、自分のこととして考えられるようにならなければ解決しないのではないでしょうか。
国民はエネルギーの問題をまだ分かっていません。政府の分析データーが、石油価格が上がったのに拘らず変わらないという点も突く必要があります。

輸送に係わるエネルギー

電力OB,Is:人類文明はエネルギーを大量消費することで育ってきました。この中で、輸送に関わるエネルギー消費は非常に大きくエネルギー消費の30%を占めています。輸送に関わるエネルギーの解決には原子力から水素を作るよりありません。電力だけで頑張ってもエネルギー問題の解決には繋がりません。

研究所OBH:電気自動車もバッテリーの性能と軽量化が進み、米国ではトヨタの開発したハイブリッド・カーのバッテリー容量を70mile程度の走行できるものとして、夜間充電により燃費向上を狙ったプラグイン・ハイブリッド車(PHEV)が走行を始めています。(月刊エネルギー2005Vol.38 No8参照)我が国は一日走行平均距離は20km程度で更に有利です。日本に置き換えて試算してみましたが、燃費は30%程度安くなります。

電力OB,I:夜間電力の利用という立場で、以前電力会社でも電気自動車の普及について研究したことがあります。しかし、その時はバッテリーの重量が重く、バッテリーを運んでいるようだということで頓挫しました。

司会:水素エネルギーの利用には相当時間がかかるような気がします。電気自動車にはユウザーにとって抵抗があるようです。プラグイン・ハイブリッド車の普及は、近くは夜間電力利用、将来は石油代替の候補として大いに期待したいものです。11月の座談会のテーマに取り上げましょう。

差し当ってのテーマ

司会:原子力の割合を3040%或いはそれ以上という点に付いて、今後どう提言していったらよいかについて議論しましょう。これを脱却しないと原子力の復活はないと考えざるを得ません。

大学OBI:「エネルギー問題に発言する会」の原子力政策大綱を作ったらどうでしょうか。

電力OB,T:「エネルギー問題に発言する会」で何をすべきかですが。以前から議論している、エネルギー省を作ってそこで計画すべきだという提言は一つの良い提案です。「エネルギー問題に発言する会」でエネルギー計画を作成しようというのは無理があります。その意味でエネルギー省設置を提案するのはよいと思います。

大勢:先ず原子力政策大綱の意見公募に本日議論した重要問題について皆の意見として応募しましょう。案文起草のワーキンググループを作り案文はそこで議論しましょう。
エネルギー省設置案は今後是非提案したい案件ですが、もう少し実情を勉強し、別途提案書を作りましょう。
「エネルギー問題に発言する会」の原子力政策大綱作りは少し時間を掛けて取り組んで見ましょう。

電力OB,T:今やらなければという点では、原子炉の出力向上は真っ先にやらなければならない大事な課題です。或る瞬間定格出力をオーバーすることも認めない規制で制約を受けています。このような状態では出力向上は議論する話ではなくなってしまいます。

司会:原子力政策大綱にも技術開発したら応じるといった表現になっています。順序が逆なような気がしましたので、私は問題点としてコメントしました。皆さんもこのような点気が付かれたら、是非コメントをお願いしたいと思います。

以上

 

出席者:順不同敬称略

    荒井利治、神山弘章、池亀亮、林勉、天野牧男、太組健児、和嶋常隆、石井陽一郎、加藤洋明、土井彰、杉野栄美、竹内哲夫、堀雅夫、松田泰、益田恭尚、石井正則、柴山哲男、篠田度、松岡強、山崎吉秀、斉藤修、松永一郎、小川博巳、武藤正、武藤章、金子顕、石井亨、今永隆、逢坂国一、山名康裕、今村敬一、佐藤洋次、西郷正雄、小笠原英雄

 

「エネルギー問題に発言する会」の意見の纏め。

●原子力発電は電力の30%乃至40%で大丈夫なのか

何時まで化石燃料に頼っていけるか

技術伝承には継続的原子力開発を

地球温暖化問題についてどう考えるのか

2030年以降について考え方を整理する。

原子力再立ち上げ時の問題点は

最低どのくらい新設を期待すれば技術伝承が可能か

再立上げ時の問題点を分析し、提言を纏めるよう電工会に働きかける。

将来、原子力は石油の代替が務まるか

原子力を有効に利用する手立ては(原子力による水素製造等)

電気自動車、プラグイン・ハイブリッド車の活用

エネルギーの何処まで原子力で対処できるか

●教育問題

学校教育と一般国民の教育

我々にできることはなにか

●国に対する提言

危機意識の醸成

エネルギー省の創設

原子力発電所建設の促進策(税制、RPS算定の際考慮)

教育改革

原子力委員会および原子力部会への継続的意見具申