会員座談会議事録

環境放射線に関連した考古学年代からマイクロ秒測定と

新潟県原子力活用協議会について

 

日時 20091119日 15:00~17:00

場所 原技協会議室

講師 新潟県原子力活用協議会会長・新潟大学名誉教授 橋本哲夫氏

司会 益田恭尚

 

新潟県原子力活用協議会の紹介をお聞きした後、「環境放射線に関連した考古学年代からマイクロ秒測定と新潟県原子力活用協議会について」と題して講演をお聞きし、質疑討論を行った。

 

講演概要

 

1.             新潟県原子力活用協議会について

東北電力巻原子力発電所の計画中止、柏崎刈羽のプルサーマル計画中断などの異常事態があり、原子力発電を活用して地域振興をはかる目的で、200811月に結成した。

原子力関連産業の地域振興、関連技術や特許の導入、新潟県放射線照射センターの建設促進、原子力発電所の必要性のPRなどに取組んでいる。

会員は107社、電力会社の寄付を受けずに主体を保つことに留意しなから運営している。

 

2.環境放射線に関連した考古学年代からマイクロ秒測定と新潟県原子力活用協議会について

 

(1)  放射線現象から考古学年代測定「ルミネッセンス観測」

@.ルミネッセンスとは

放射線作用後の励起状態から脱励起状態にもどる時に発生するエネルギーを光(ルミネッセンス)として測定、熱ルミネッセンス線量計など利用されている。鉱物中の放射線蓄積量測定によりその鉱物の熱履歴を調べ、考古学レベルの年代測定にも利用することができる。

典型的な石英鉱物である水晶は青色TL[thermo-luminescence(BTL)]を示すが、加熱処理により赤色TLRTL)に変化する。このことにより、火山灰起源石英がRTL特性を有するのは熱履歴によるということが説明できる。更に、土器、窯跡、陶磁器、瓦片などの焼成考古学遺物から抽出した石英粒子もRTL特性を有している。年代測定には、焼成以来受けてきた天然蓄積放射線量やその結果を用いるRTL測定が不可欠なことを明らかにした。

 

A ルミネッセンスを利用した年代測定

鉱物は自然放射線の照射を受け、放射線損傷が蓄積されるが、加熱によりゼロセット(消去)され、年代とともに再度蓄積を始める。ゼロセット後の経過年代と遺物の埋まっていた箇所の年間放射線量(AD)の積である蓄積放射線量(PD)が現時点でのルミネッセンス強度と比例するので、既知の位置での人工照射後のルミネッセンス測定によりPDを求め、ADで除することにより年代を測定する。

 

B 事例

新薬師寺の瓦下部の年代測定結果から13001100年という値が得られた。来年が奈良遷都1300年にあたるので、ほぼ遷都時に建立されたことと調和する。

ルミネッセンス年代測定のもう一つの例として、新潟県北部、奥三面川の縄文遺跡出土の縄文土器片についても、数千年に至る年代測定が可能であることが分かった。

これら土器片や須恵器片とともに、越後地方の代表的な焼成考古遺物である火炎型土器は千数百年から数千年に亘って地中で保存されていたにも拘わらず健全に保存されている。したがって、これら焼成考古遺物よりもより高温で焼成される放射性廃棄物のセラミックスやガラス固形化物の数千年程度の保存は困難でないことが理解できるであろう。

 

(2)  マイクロ秒の測定

 

@ パルス時間間隔測定

放射線と物質の相互作用に由来する物理化学現象を電気信号であるパルスに変換して計測するのが一般的な放射線測定。マイクロ秒から数百マイクロ秒の子孫核種の壊変が親核種の壊変に連続して起こった場合、この関係を相関事象と呼び、この相関事象を選択的に抽出する測定方法が時間間隔解析(TIA)。

パソコンの進展により高速化と大容量化が進み、マイクロ秒オーダー程度の時間分解能が達成できるようになった。

パルス解析には隣り合ったパルスを解析する隣接時間間隔解析(STA)が使われていたが、誤差が大きい欠点を改善し、多重時間間隔解析(MTA)を確立した。

A ラドン子孫核種の同定

大気塵埃中のラドン系列の崩壊によるラドン子孫核種が、天然放射性核種であることの同定も、短時間に連続した壊変事象(相関事象)をパルス時間間隔解析により通して行うことができる。

この場合、マイクロ秒スケールでのデータ解析が必要になる。

モニターに使用することにより、オンラインで漏えいによる人工核種の検出も可能である。

 

質疑応答

Q 年代測定では、従来の方法としてどういう差があるのか?

A 試料は少しでも光る。石英と長石の完全な分離がポイント。

Q C14との差はどうか?

A 自分でやってみないとなんともいえない。

Q 廃棄物中のラドンの影響が判るのか?

A オンラインで判定できるが、まだ使われていない。

この方法は日本ではまだ評価されていないことにもよろう。日本の技術も海外で評価されないと、国内で注目されない。(オクロの黒田氏も)

Q 土中のウランの巻き上げはないか?

A 空気中の塵埃で、巻き上げは多分含まれていない。

Q C14の信頼性について

A 温暖化の影響もあろう。産業革命以来C14は少なくなった。核実験以降は増大。

Q バラツキへの影響は長石、石英の分離だけか?

A 自然放射線には多様なエネルギーのものが混在していること、石英内部表面ので反射なども考えられる。

Q 日本最古の土器(1.5万年前)は何で測定したか?

A 青色TLで測定した。赤色TLで再測定したいところだが、試料の関係もあってかさせてもらえない。

以上(石井正則記)

出席者

荒井利治、池亀亮、石井亨、石井正則、石井陽一郎、伊藤睦、上田隆、小川博巳、加藤洋明、金氏顕、紺谷健一朗、斎藤修、斎藤健弥、齋藤伸三、佐藤祥次、菅原剛彦、宅間正夫、太組健児、竹内哲夫、辻萬亀雄、土井彰、中神靖雄、西村章、野村勇、橋本哲夫、林 勉、前川則夫、益田恭尚、松岡強、松永一郎、若杉和彦