エネルギー問題に発言する会座談会議事録

「日本のプルトニウム利用について(プルサーマルの必要性、FBR導入計画)」

 

日時:2009年1月15日(木) 15時〜17時10分

場所:日本原子力技術協会会議室

講師:日本原子力研究開発機構 小野 清氏

(次世代原子力システム研究開発部門 サイクル解析グループリーダー)

座長:中神 靖雄

 

説明要旨

今後のプルサーマル計画、高速増殖炉導入、第二再処理計画等を考慮したプルトニウム(Pu)バランスを多様なケースを想定しシミュレーション解析を行った。

(以下、Pufとあるのは、Puトータルの中で核分裂性(fissile)プルトニウムの量)

英仏の再処理で回収される約30tonのPufに加え、六ヶ所再処理設備が本格稼働すると、年間5〜6tonのPuf(Puトータルとして約8ton)を生産する。一方、Pu需要は、プルサーマル1GWe当たり年間0.3ton(Puf)であり、18基がプルサーマルを採用すると5〜6ton(Puf)に相当する。(大間は別途考慮)

FBRは1GWe当たり、初装荷燃料用として約5tonのPufが必要である。

解析は、2030年以降の原子力発電容量を58GWe一定(感度解析では、2050年時点で80GWe及び110GWeのケースも実施)、プルサーマル導入期間は35年程度、2050年にFBR導入開始、軽水炉からFBRへの移行期間60年としている。

解析結果の要点は次の通り:

1)                天然ウラン累積需要量は、2100年で頭打ちとなり、67万ton(在来型U資源の5%以内)。但し、2050年時点の発電容量が、80GWe、110GWeでは、夫々90万ton、113万tonとなり、U資源確保の課題が顕在化する。

FBR導入時期が2040〜2070年で変化すると、発電容量58GWe では51〜88万ton、80GWe で68〜115万ton、110GWe で84〜145万tonとなり、FBR導入が遅れるほど資源確保の課題が顕著になる。

2)                現在の計画(18基でプルサーマルを推進)が順調に推移すれば、2020年頃には海外Puも含めPu貯蔵量は数ton(Puf)の水準に下がる。六ヶ所再処理工場のPu貯蔵施設の容量には制限があり、プルサーマル計画が遅れれば、数年で貯蔵上限に達するので、その場合は再処理工場の操業を下げる必要が生じる。

3)                六ヶ所再処理工場の寿命を40年程度とすると、軽水炉燃料用の第二再処理工場は2047年頃運転を開始する必要があり、その規模としては1200ton/年が必要。但し、発電容量の増加やFBR導入時期の結果軽水炉が増えれば、軽水炉燃料用の再処理容量を増やす必要がある。FBR再処理工場は2050〜2060年頃運転を開始し、最大で600ton/年程度の処理規模が必要(FBRは高燃焼度なので再処理容量は同一発電量に対し軽水炉の半分)。

4)                軽水炉使用済燃料貯蔵量(冷却中を含む)は、年々増加し、2030年頃には2万ton、2040年代後半には2.2〜2.4万tonに達する。(一方、貯蔵容量は、六ヶ所再処理工場の貯蔵施設及びむつ中間貯蔵施設を含め約2.6万tonと推定)。第二再処理工場の運転開始以降、使用済燃料貯蔵量は急激に減少する。

5)                プルサーマル燃料再処理方法としては、

U燃料と5:5の混合処理(プルサーマル使用済燃料は合計3000〜4000tonなので、年間600tonで処理した場合5〜7年で処理可能)

U燃料と8.5対1.5の混合処理(現状の設計範囲で処理可能、年間処理量180ton)

FBR再処理で混合処理(年間処理量300ton以下)の方法がある。

6)                商用化初期の高速増殖炉は、増殖比1.2が必要だが、ある時点からは増殖比1.03程度の低増殖型でよい。Pu富化度は最大30%程度、MA装荷率は5%、FBRでMAリサイクルを行う。

 

主なQ&A(Q:会員からの質問、A:講師からの回答、C:会員からのコメント)

Q:L再とF再とあるが、第二再処理工場は軽水炉、FBR別物か?

A:本解析では別物と想定。L再は基本的に現状と大きな違いはない。F再は、先進湿式再処理法(低除染)を想定。

Q:プルサーマルを早急に進める意義はどこにあるのか?

A: 18基の軽水炉でプルサーマルを進めることにより、海外Puも含めPuを消費出来る。プルサーマルを進めなければ、六ヶ所再処理工場から生じるPuは数年で、六ヶ所のPu貯蔵容量を超える可能性がある。

Q:六ヶ所再処理工場のPu貯蔵容量は何から決められているのか?

C:経済性等もあり容量が決められている。Pu貯蔵についての国際的観点は別問題。

Q:FBR初期導入の初装荷燃料を作る時は、Pu供給量が不足するのでは?

A:FBR商用化の4〜5年前から、プルサーマル向けをやめて、FBRの初装荷燃料用のPuを手当する。

Q:海外再処理で回収したPuの引き取りが遅れるとどうなるのか?

C:英仏に各15ton相当のPuを帳簿上預けており、引き取り時期の遅れについては、毎年(電力会社が)契約更改している。遅延した分は預かり料を支払うことになる。

Q:海外Puの国内返還を含め、六ヶ所再処理工場等当面のPu利用の方針は誰が責任を持って決めるのか。

A:経済産業省の管轄だと思う。

Q:回収ウランは?

A:再濃縮して使う。15%のU資源節約になる。

Q:MAを回収、燃焼させると高レベル廃棄物は減るか?

A:FBRの場合、MA回収を行うとHLW処分場の面積に換算して半分程度に減少する。

Q:プルサーマルで多重サイクルを考えているか?

A:否。プルサーマル使用済燃料から回収したPuは全てFBRで燃やす。

Q:炉外サイクル時間とは? 5〜7年よりもっと長い(実際は10〜20年)のでは?

A:炉から取り出して再び炉に装荷するまでの最短の時間の意味である。軽水炉燃料では、これとは別に実際15〜20年の再処理待ち時間がある。解析では、この再処理待ち時間も考慮している。

Q:燃料は炉内には何年滞在しているのか?

A:1サイクル2年強で4バッチ(4サイクル)を想定しているので10年程度。

Q:「もんじゅ」でのMA蓄積は燃料の性能を低下させるのでは?

A:燃料製造から時間が経ちその間Puが劣化しAmが蓄積したため一部燃料交換する。

Q:米国や仏国は低増殖炉を指向しているのに何故日本は増殖比1.2が必要なのか?

A:中国やインドのようにFBR導入時に軽水炉からのPuの手当てが期待できない国は、高増殖比を目指す。仏国は、いつでも軽水炉から回収できるPuを必要に応じ消費していけばよく、米国は環境負荷(廃棄物処分場の負荷)低減の観点からPuとMAは消滅させるとの考えのため増殖性能は重視しない。

 日本は、FBR導入以前に回収するPuは、プルサーマルでタイムリーに利用する考えであり、一方、FBRへの移行時期の初期において大量に必要なPuを手当するために、増殖が必要。

(文責 中神)