座談会議事録
既設原子力発電所の出力向上について
2009/03/28
日時:2009年3月19日 15:00-17:00
講師:電気事業連合会 宮田賢司氏
日本原子力発電(株)発電管理室部長 青木孝行氏
座長:竹内哲夫
出席者:末尾に記載
議事概要
世界各国で既設発電所の出力向上による、原子力発電の一層の活用が図られている。例えば米国では、1977年にCalvert Cliffs 1、2号で5.5%の出力向上が図られて以降、現在まで20%程度の向上例まで含め、多数のプラントで出力向上が図られてきた。これらの結果は100万kW級発電所5基の新設に相当する。
一方わが国では、原子力の活用が提起されているにもかかわらず、この問題はあまり知られていない。このような状況に鑑み、わが国の既設発電所出力増強計画と、トップバッターとして計画を進行中の東海第二発電所の出力向上計画の現状をお聞きし、質疑応答を行った。
「既設原子力発電所の出力向上について」
電気事業連合会 宮田氏
出力向上は既設設備を利用するストレッチ型(S型)、設備拡張型(E型)、測定精度改善型(MU型)がある。出力向上の技術的な課題としては、BOPサイドの主要設備の大幅改善(E型)、安全解析の高度化、長期運転サイクルやMOX燃料との組合せ成立性などがある。この他にも、温排水の温度制限(ΔT)、漁業補償、環境影響評価(10%以上の出力向上だと軽微な変更と見なされない)などの問題もある。
東海第二ではまずS型を実施し、課題を整理、後続プラントの実施計画につなげていきたいと考えている。
原子力安全保安部会原子炉安全小委にWGが設置され、設備影響や規制事項の整理が行われているので、電事連もこれに協力している。
「東海第二原子力発電所・原子炉熱出力向上の概要について」
日本原子力発電(株) 青木孝行氏
東海第二ではS型で、熱出力、電気出力とも5%の出力向上を計画している。出力向上の方法は、燃料の仕様を変更せず、フラックス分布を平坦化(平均出力向上)する方法で行い、主な設備改造は高圧タービン静翼の一部取り替えのみである。ただ、これと同一時期に再循環系流量制御方式をバルブコントロール方式から周波数制御方式に信頼性向上対策として、別途変更する。
安全解析、主要機器の設計基準適合性、プラント運転性、経年劣化等の評価などを行い、技術的な見通しを得た。今後は原子力安全保安部会原子炉安全小委のWGが、本年半ばを目処に報告書をまとめるとのことなので、これをフォローし、設置変更許可申請を実現したい。
質疑応答
Q 出力向上による経済効果はどの程度と考えればよいか(5%だと年間30〜50億円?)出力向上の導入がどうして大幅に欧米にくらべ遅れたのか?
A 設備改造工事はタービンの一部のみなので、火力等を新設する場合とくらべ、電力料金としては安価となろう。欧米より遅れたのは、プルサーマル、運転期間延長問題等との関係から、優先度を配慮したため。
Q フラックスの平坦化はどのような方策で行うのか?
A 燃料交換時の新燃料の配置で行う。燃料仕様は従来のプラントと変えない。(BWRの場合10×10を使えば大幅UP(米国の場合18ヶ月運転で20%UP)も可能であるが。)
Q 東海第二の主契約者はGEだったが、この出力向上ではGEはどういう役割か?
A 原電は日立GEと検討を進めている。(日立GEの下でGEHがサポート、タービンはGE担当)
Q 出力UPに再循環ポンプの流量UPを利用しないのか?
A 従来と変えないのを基本としているので、流量は変えない(流量制御弁は取り外す)。
Q 米国のトラブル事例でLERのデータしか記載ないが、INPOのデータは活用していないのか?
A 情報は入手している。
Q 米国における、E型とS型の採用事例はどのようなものか?
A 当初はS型、現在はE型が主流で20%程度の出力向上を指向している。MU型はS型、E型どちらでも追加的に実施。米国はやれるものは全てやる方向。
Q 20%UPとなると再処理との連携プレーが必要とならないか?
A 現時点ではハードルの高くないS型の計画の実現に専心している。
Q 電事連としては運転期間延長が優先か?
A 東海二を橋頭堡として今後出力向上を図る考えだが、両方並行して検討を進めている。
Q タービンの効率UPで出力向上の事例も聞いているが、今回はやらないのか?
A タービンの効率向上は既に国内に実績があり粛々と進めている。効率向上するとΔTは減少傾向となる。
Q 環境影響評価が具体的に何をするのか?
A 有意な変更がなければ不要と考えている。有意な変更(10%を超える)の場合、何を評価するのか不明。
Q トラブル事例数では、PWRとBWRの差が大きいがどうしてか?
A トラブル事例の比較的多いBの場合でも、出力向上に伴う設備の損傷事例は4件で少ない。これらの知見は、我が国で出力向上を実施する際に反映すればトラブルの発生を防止できると考える。
Q 取り上げた事例を同じベースにして比較しないとかえって議論を呼ぶ怖れがあるので注意して頂いた方が良いだろう。
Q 原技協は関与していないのか?
A 原子力学会で調査検討した際は協力していただいた。
Q 国の委員会では、E型、S型とも検討するのか?
A 具体的な案件が出た段階で検討が始まるので、現在はBWR5のS型が対象。S型の実績が出た段階で、E型ではプラスα要素のみの検討で済むことを期待している。
Q ΔTは実質的には影響がない。問題とする必要はないのではないか?
A 5%程度の出力向上では大きな影響はないと考えている。
Q Quad Cityの蒸気乾燥器音響振動では、どう対応したか?
A 今回の計画は蒸気流量の増加はわずかであり問題ない。E型を進める際は米国と同じように事前評価する必要があるのではないかと考えている。
Q トラブルの要因には流力問題が多い。注意して進める必要がある。
A 欧米の実績を調査して進めるようにしている。
Q 欧米の20%の大幅出力向上等の事例の調査は進んでいるのか?調査団を出しその報告書を公開するなどにより、欧米では当たり前なことを知ってもらう必要があるのではないか?
A 公開されるような調査はやられていない。
座長 プライオリティーがあることが分かった。日本はいつでも遅いことも分かった。少しでも早く促進することを期待する。
以上
出席者:林勉、池亀亮、竹内哲夫、松岡強、西郷正雄、石井陽一郎、田中長年、松永一郎、益田恭尚、斎藤修、加藤洋明、菅原剛彦、宅間正夫、伊藤睦、小川博巳、荒井利治、土井彰、古田富彦、西村章、丹下理、山脇通夫、佐藤祥次、石井正則(記)