会員座談会報告

柏崎刈羽原子力発電所の耐震補強について

 

期日 2009917日 15:0017:00

講師 東京電力(株)原子力施設管理部

新潟県中越沖地震対策センター 地震対策総括グループ

 マネージャー 部長 松本 純 氏

新潟県中越沖地震対策センター 建築耐震グループ

マネージャー 菊地 利喜郎 氏(建築関係)

土木技術グループ

マネージャー 都築 進 氏(土木関係)

新潟県中越沖地震対策センター 地震対策総括グループ

副長 喜多 利亘 氏(全体補助)

場所 原技協会議室

司会 竹内哲夫

 

1.講演概要

(1)   概況

原子炉建屋基盤上で1000ガルとなる耐震強化用地震動を用い、耐震強化工事を行っている。

KK-7:燃料棒からの漏えいは、漏洩部周囲の制御棒を入れ放射性物質の漏えいを制御しながら調整運転を継続。9月下旬に一旦停止、フィルター付き新燃料に交換予定。

KK-6:9月10日に定格出力に達し順調に運転中。今後評価会議を経て、国・県の了解取得を進める。

KK-1KK-5:耐震強化工事実施中

 

(2)   屋外土木構築物の被害・復旧状態

港湾施設では防波堤の段差・ずれ、取水口の損傷、護岸の変形・損傷が生じた。これらは、液状化対策として地盤を改良のうえ、施設を改修した。

3号機所内変圧器の火災はケーブル部基礎の沈下に起因。変圧器本体基礎盤と一体化し杭基礎形式に改良した。

この他、放水路のひび割れ補修と地盤改良による法面補強、防油提漏油対策等を実施している。

現在、防災用道路の対策工事は完了、港湾施設もほぼ完了、変圧関連基礎、防油提および放水路は対策・復旧工事中であるが、KK-6KK-7については完了している。

なお、非常用取水口(S2クラス)は取水機能を損なう損傷はなかった。

 

(3)   建物・構築物の点検・評価の概要(KK-6KK-7関係)

ひび割れの点検結果は評価基準以内、屋根トラスでは地震の影響がないことを確認、排気筒の点検ではKK-6でターンバックルに一部変形が確認され、補強を行った。

排気筒のついても鉄骨部、基礎部、SGTS用排気筒とその支持部ともに発生応力度は評価基準値以下であった。

なお、建屋屋根トラスの耐震健全性評価の結果では、おおむね弾性範囲内と判断され、裕度も有しており、耐震健全性は確保されていると評価された(KK-6)が、屋根トラスの部材アップのほか、余裕の少ない重要な建物・構築物の鉄骨部の強化や排気筒への制震装置導入を行うこととした。

 

(4)   機器・配管の耐震安全性評価と補強工事

機器・配管に対しての応答倍率法による評価の結果は,冷やす・閉じ込める要求機能に対する構造強度評価、動的機能評価とも算出値は基準値を下回った。

また、新しく策定された基準地震動と耐震強化用地震動(基礎盤上で1000Gal)による評価を行い、余裕が少ない部分の対して耐震強化工事を実施。KK-6KK-7に関しては全て完了した。

対象箇所は配管等のサポート、原子炉建屋屋根トラス(前出)、排気筒(前出)、原子炉建屋天井クレーン、燃料取替機である。

 

2.質疑応答

Q 非常用取水路はどういう補強をするのか?

A 地盤の改良強化と損傷箇所の補修を行う。

 

Q 取水路は常用と非常用が分離されていないのか?

A 号機によって異なっている。KK-1は分離型、KK-2は合体型。

 

意見 過剰防衛もまずいが、安全に影響ないことを国に主張できるよう、電力で自主的に設計基準を作ることを考えたらどうか。

こういったことを考えながら対策を進めると、将来生かせる。

 

Q 神戸では護岸の損傷が大きかった。さすが東電土木と思ったが、変圧機では配慮が足りなかったように思うがどうか?

A 建物近傍の沈下が原因で、専門家も想定しなかった。

 

Q ケーブルトレイに関してはケーブルの評価をしたのか電線管の評価をしたのか?

A トレーを評価した。

(オーバーデザインになるのではないかとの意見があった)

 

Q 熱交換器基礎部のせん断対策は良いアイデア。曲げや引張りは生じないのか?

A 強化対象はせん断のみ。引張りに対しては引き抜き実験で実力を確認した。

 

Q 配管のサポートはどの程度強化したのか?

A 志賀が先行しているが、メンテナンス性が少なくなったとはいえ、古いプラントに比べれば余裕がある。

 

Q 工程上のネックは何か?

A 当初は変圧器の作り直しをネックと考えたが、途中から耐震性見直しが全国展開となり、解析のマンパワーがネックとなった。現時点でもJNESのクロスチェックも含めこれがネックとなっている。

 

Q タービン建屋はどうなっているか?

A タービン建屋は補強を行っていない。

 

Q 耐震強化用地震動の1000Galはどういう判断基準で決めたか?

A 中越沖の15倍であるが、浜岡の数値とも合っており妥当な値と考えた。

 

Q 電気関係はどういう評価・対策をするのか?

A 飾り用の照明が落ちた。このような照明は撤去した。

 

Q 浜岡は1000Galで対策しているのに、今度の地震でH-5への影響は大きかったのはなぜか?

A H−5では昔のS1と同程度、他はS1より小さかった。なぜ5号機だけというのは把握していない。

以上

出席者

荒井利治、石井亨、石井正則、石井陽一郎、池亀亮、伊藤睦、上田隆、小川博巳、金氏顕、斎藤修、齋藤伸三、佐藤祥次、菅原剛彦、宅間正夫、太組健児、竹内哲夫、土井彰、中神靖雄、野村勇、橋本哲夫、林 勉、古田富彦、益田恭尚、松永一郎、若杉和彦、黒川明夫