耐震設計審査指針の改定

1.           説明会

1.                   日時:10月18日(水)

2.                   講師:森下日出喜氏(東電原子力技術品質安全部・建築グループマネージャー);耐震指針検討分科会に部外協力者として関電と共に関与。電事連で指針対応を検討中。

3.                   座長:柴山/畑

2.           説明内容

  (1)配付資料「原子炉施設の耐震設計審査指針の改訂について」に基づき、改訂の経緯、現行指針と改訂内容、耐震安全性確認及び指針改訂への事業者の対応の説明があった。

  (2)指針改訂の経過;

     H8/1兵庫県南部地震で耐震安全性向上の必要性が強く認識され、原安委で海外の基準、最新知見の整理がなされた。

     H13/7原子力安全基準部会・耐震指針分科会(基本WG、施設WG、地震・地震動WGで構成)で審議され、H18/5原安委の承認後、パブリックコメントに付された。約720件のコメントがあり、その対応に5回の分科会で審議され、8/28に了承、基準/指針専門部会の承認を経て9/19原安委で指針改訂が決定された。また、発電用原子力施設以外の原子力施設の関連指針の改訂も了承された。

     保安院は耐震バックチェック(BC)ルールを決定し、9/20事業者に耐震BCを指示した。事業者は10/18以降BC計画書を提出し、保安院の耐震・構造設計小委で紹介された。事業者はH19以降に保安院に報告すると共に適宜地質調査及び耐震裕度向上工事を行う。

  (3)耐震指針改訂の論点と適用方針;

   ・耐震指針分科会の主要な論点は、改訂指針の基本方針、最新の知見を踏まえた基準地震動の策定方法の高度化、耐震重要度分類の高度化、地震随伴事象、及び将来の確率論的評価の安全規制への本格導入の検討であった、

   ・改訂指針は今後の安全審査等に用いるが、現在安全審査中のプラントにも適用される。既設プラントの安全性確認は事業者が自主的に行うという位置付けであるが、実際は保安院が指示をした。また、残余のリスクについては、運転開始までに評価が可能になった段階で実施する。

  (4)指針の改訂内容

(a)重要度分類の一部変更;4分類から3分類へ。現行Aクラスを格上げし、As及びASクラスとする。現行のBCはそれぞれU、Vクラスに変更。

(b)基準地震動策定方法の高度化;地震動評価方法に断層モデルによる評価法を全面的に取り入れた。また従来の直下地震は廃止して「震源を特定せず策定する地震動」を定義(直下地震は実質かさ上げ)した。

     想定する地震は、従来の過去の地震・活断層による地震・地震地帯構造に基づく限界的な地震・直下地震からプレート間地震・内陸地殻内地震・海洋プレート内地震に基づく評価とする。基準地震動S1S2(点震源評価)をSs(面震源評価)に、また改訂後は基準地震動Ssに加えて弾性設計用地震動Sdを定義(現行のS1を考慮)。

     活断層評価は5万年前以降を後期更新世以降(約8〜13万年前)となった。それに伴い追加の地質調査が必要(特にサイト近傍は従来に比べり詳細化)。

     従来の直下地震M65(サイト共通、約370Gal)は「震源を特定せず策定する地震動(約450Gal)」の中で評価する。

     鉛直地震力は静的から動的となった、

  (c)確率論的安全評価(地震PSA)への対応:基準地震動の超過確率参照への適用等本格導入に向けた課題への対応。PSAは耐震余裕確認の観点から、事業者が自主的に実施する。

  (5)原子力発電所の耐震設計

(a)     地震・地震力は前記改訂による。

(b)     安全上重要な構築物は岩盤支持を削除し、支持力の安全性確認をすればよい。

(c)     構築物は剛構造の規定を削除し、規定の許容値を満足すればよい。

(d)     大地震時の原子炉自動停止規定は変更なし。

(e)     安全上重要な設備の耐震安全性は、施設の破壊限界や機能喪失限界に対して十分な安全余裕を持たせ、その安全余裕はNUPEC等による実証試験で確認されている。

  (6)既設プラントの対応

既設プラントの改訂指針に基づく耐震安全性評価の実施計画及び方法等について説明があった。その中で地震PSAについては東電プラントの例について説明があった。

 

2.質疑応答

 Q.今回の指針改訂で兵庫県南部地震(神戸地震)に対して、

     変えたところは何か?

     建築基準法との関連は、原子力だけ厳しくなったのではないか

 A.指摘された点は、

     大崎スペクトルの適用性、直下地震が小さい、女川の計測地震でS2のスペクトルの高周波数点で超えた等が議論された。

     地震動評価で、地域特性の考慮と点震源を面震源、また精度の観点で断層モデルの適用。

     建築基準法も最新では構造物の動的挙動特性を加味している。建築基準法の3倍の地震動は変わっていない。

Q.断層の長さ、地表に出ていないものの取扱い?

A.断層については、鳥取県西部地震のような震源を特定しにくい地震を見逃すことがないように敷地近傍(半径5km以内地震調査推進本部の防災の観点)で詳細な調査を要求。調査で否定できなければ設計上考慮する。但し断層の考え方は人により異なる。何処までの断層を考えるかは今後の課題である。大地震を引き起こす断層は地表に出ている。

 Q.耐震バックチェックへのインパクトは?

 A影響はあるが、何とかなる。鉛直動的地震は下方に1g掛かっているので影響は少ない。基本的に設計は水平動で決まる。配管、トラス等長尺物は影響がある。

 Q.新しい知見で変わるが、指針改訂検討に5年かかた。地震学の先生の反対はどんな点か?

A. 地震学と地震PSAの議論に時間がかかった。断層評価について、石橋委員等は詳細に決めるべきである主張をされた。想定外の地震があり得るのではないかということで、残余のリスクという考え方が出てきた。

Q.プラントの輸出の関連で、活断層調査の世界的なレベルは?

 A.高い

 Q.必要以上に活断層が分かるのはどんなものか

 A.今までは地表の痕跡を基に考えていたが、地震は地殻の中で起こる。この問題で地質屋と地震屋との断絶があった。調査と評価の仕方にもよる。プレートの滑り込みによる地震については痕跡がある。

 Q.心配だという人をどう説得するか

 A.限界はある。説得力の問題

 Q.リニアメントの地下構造は?

 A.最新の知見で歴史地震があれば調査の必要性はある。

 QPSAは神学論争になっている

 A.一般の人には分かり難い点はある

 Q.残余のリスク分土俵が高くなっている

 Q.残余のリスクは分かり難い。記者説明への反応は?

 A.残余のリスクについては進行中である。これから評価する。考え方は決まっている。志賀、女川もプラントには影響ない。安全余裕はある。

 Q.安全余裕は何処まで余裕をみれば良いか

 A.主要設備は影響ない。

 Q.女川は影響がないのに止めた。何処に問題があったか

 A.スクラム設定値が低かったと聞いている。地震動のヒゲに対して止める必要はない

 Q.バックフィットで何をするか

 Q.東電のプラントは余裕があるのか

 A.サイト次第である。浜岡は影響が大きいので先行して実施している。東電は直下型が加わっただけ

 Q.岩着不要の意味は

 A.岩着でなくても安全性を評価出来れば良い。

 Q.岩着の変わりに杭打ちでも良いか

 A.むつの中間貯蔵施設は杭打ちでやろうとしている

 Q.安全余裕がゼロの状態とは何か

 ASsに対して健全性が保たれない状態

 Q.残余のリスクは指針には規定及び解説もないが、そのでた経緯と許認可上の取扱い?またPSAの判断基準もない。

 A.指針に記載はないが、部会報告書にはある。地震力増加要求の歯止めの説明に活用される。許認可上は参考という位置付け。

 

3.所感

 短い時間で耐震指針の改訂、現行との相違点、指針の運用、既設プラントの耐震BCの計画・予定、地震PSAの検討状況等盛り沢山の内容を要領良く説明された。質疑応答は時間の関係で十分には行えなかったのは心残りである。