第19話 福島県知事への質問状 プルサーマルを何故認めないのか
天野 牧男
福島県知事にお尋ねします
最近の新聞報道によると、福島県の3月18日の県議会の総括審査会で,佐藤知事は「東京電力の原子力発電所のプルサーマル計画は既に白紙撤回しており、その後の事は一切考えていない」と答弁されたとのことであります。これはプルサーマルの使用を認めない事に決めたということを意味しており、その理由は東京電力に対する信頼感が持てないということのように受け止められました。
私の知る限りでは、県知事に原子力発電の運転許可を与える権限があるようには思えませんが、県民の安全を守る立場であって、県民に危害を与える恐れのあるものの、運転とか、操業について良い悪いを言われることは自然な行為かもしれません。知事として入念に検討された上での、ご決断のように見受けますが、どうも信頼感が持てないから、プルサーマル燃料の使用を認めないというのは、理解に苦しむところです。
確かに昨年発生した東京電力を中心とした色々な問題は、厳しく批判されるべきものでありました。東京電力はそれを認め、トップの幹部が引責退任し、事態改善のために必要と思われる手を打っています。その対応を理解されて、徐々に発電所の運転再開をお認めになられたと思っております。
原子力発電所が危険であるのなら、何故危険かを理由立てて説明し、なるほど危険だということがはっきりしたら、運転を止めさせるべきです。しかし今の原子力発電所が十分に安全である事は、国の定めた基準に照らしても全く問題がないことを、国としてもそれをはきり認め、承認する手続きがきちんと取られています。しかも既に福島地区では、30年以上の実績があり、その間外部に放射線を規定以上に漏出した事もありませんし、発電所内の運転関係者を含め、一般の人に危害すら与えたことは一度もありません。
プルサーマル燃料の使用についても、理論的にも、また各種の実験でも問題のないことは十分証明されていますし、本質的に現在の運転と変わるものではありません。原子力発電所がわが国のエネルギーの確保や、環境の維持のために欠く事の出来ないものである事は、常識のある方にとって、極めて明白な事実であります。また地球上の限られた資源を少しでも有効に使う事は、非常に必要な事であります。プルサーマルがベストのチョイスではありませんが、今の時期非常に大切な方策であります。
さらに申しますと、今回の問題は明らかに東京電力の過誤であり、失敗であります。しかし人類は数多くの失敗をし、その失敗から学ぶ事によって、今日の社会を作り上げてきました。今回のトラブルでも、学ぶ事は随分たくさんあって、それを多くの部門で改善の努力が続けられています。この事から得られたものも数多くあり、今後のエネルギー政策を進める上でも、より良くなったものは数多くあります。この失敗に学ぶということは、これからの日本にとって極めて大切な事であって、この国を指導される方の忘れてはならないことであります。
今まで欧米の技術に追随する事で、わが国は国際的にも、今日の立場を作り上げてきました。このことはわが国は世界のトップランナーの一員、それもかなり先頭集団の一員に入ってきました。これからこの位置を確り確保し、さらに世界のリーダーとしての開発をしていくことが求められています。またそれをしていかないと、21世紀でのわが国の生存は極めて厳しいものになってまいります。
過ちをしたから、一切信頼をしないというのではなく、その失敗をどう生かして、さらに前進していくことが、極めて必要だと思います。釈迦に説法のようで申し訳ありませんが、知事がその先頭に立って、新しい開拓へ進んでいくようにお考えいただきたいと思います。
知事におかれては今申し上げたような事は、百もご承知のことと思われます。知事ほどの方がご承知ないはずはないにもかかわらず、今回のような判断を下されたのは、信頼性を裏切られたというような、一人の市民が考えるような理由だけではないように思います。その真意を是非お聞かせいただきたいと思います。