もんじゅ判決討論会傍聴記

 

15年3月10日
天野 牧男

 

私もこの日本原子力学会主催の緊急討論会(3月5日)を聞きましたが、この裁判についての討論を聴いた全体的印象として、敗訴した原因は、技術問題ではなく、控訴側の並々でない熱意と、被控訴側である役所側の対応に問題があった事によるような感じを受けました。

 

 今度の裁判では、ラウンドテーブルという事前協議の場があって、裁判官も質問も出来、それに双方が見解を表明する新しい方式がとられ、それが14回、毎回午後一杯を使っておこなわれたとのことです。実質的には此処での論議が裁判官の公判記録のベースになったようですが、久米三四郎氏は二回でも三回でも裁判官が分らなければ、あの風貌でとっとつと噛んで含めるように、心を込めた説明をしたのに対し、官側はパネラーの一人が言っておられましたが、「木で鼻を括った様な説明で終始した」というのでは、勝敗は明らかになったように思いました。

 官側からの報告の中で「Naと水との反応についての話があったとき、コンクリートには鉄板が張ってあって、それがNaとコンクリートとの接触を阻んでいるのだから、Naとコンクリートとの反応の話は一切しなかった」とありました。理論的には全くその通りでしょうが、この新しい裁判の方式では適切ではないように思われます。

 

 久米氏からはもんじゅ用の安全基準が、非常にいい加減だったし、官側からの意見書が出されないこともあった。これでは勝てませんよとやられていました。そういったことで裁判官の心象も披控訴人から離れてしまっていたようです。こういったことのため技術的には全く誤った内容の判断が、裁判官の判決文に織り込まれてしまった

ようにみえました。これ等は久米氏の話ですし、日本の優秀な官僚がこういった態度で終始されたとは思えないのですが、どうもあながちいい加減な話でもないようでした。                 

 ただ技術関係の点ではパネラーの話を聞きましても、全く判決内容は正確ではなく、適切に対応すれば、もんじゅの安全審査の妥当性は立証出来るようです。これから最高裁があるわけですが、ここでは是非技術的な正しさがしっかり理解され、正当な判決が得られるよう関係者の真剣な努力を是非お願いしたいと感じたものでした。

 

  なおこの討論会で、久米三四郎氏は「軽水炉ではもう勝てない」と言っていました。安全基準も整備されていて、対抗出来なくなっているとのことでした。

 この討議の続きは、今度の原子力学会の年次総会でも取り上げたいとのことでした。