エネルギー教育で何を教えるべきか
平成15年6月20日
荒井 利治
日本の学校教育でエネルギーについての知識が教えられていないとの指摘がされてから久しい。各方面の努力により「エネルギーと環境」に関する教育用資材はかなり充実してきた。問題はこれらを用いて、日本の将来をになう若者に何を伝えるかである。こう考えると我々が現在生活をしている「日本」、その国際的位置付けをしっかりした言葉で伝えていなかった事に気付く。
我々は戦中、戦後の物資不足の体験を通して「物を大切にする」ことを自然に身に付け、また日本が資源小国であるが故に、石油、石炭といったエネルギ-資源の枯渇が国の存立にかかわる事を実感して育った。しかし戦後アメリカの大量生産、大量消費型の経済の発展と、それに伴う物質文明謳歌の空気にすっぽり包まれ、今や我々の次及び次次世代は、電気も水もスイツチ矢栓をひねればいくらでも出てくるし、食べ物や一寸した物は街のコンビニに行けば24時間何時でも手に入ると信じ、その生産者さらに資源の入手元にまで想いをいたさないで生活をしているのが現状である。
私は、ここで次の3つのメッセージを彼らに強く訴えたいと思う。
(1)世界は現在爆発的人口増加を背景に、経済成長とそれに伴うエネルギー消費の増大、その化石燃料の年により排出される二酸化炭素が主な原因といわれる地球温暖化などの環境悪化というリンクした難問題に直面している。
(2)日本は戦後の狭い国土での急激な経済発展の過程で、多くの公害を技術力で克服しながら今日の経済大国となった。エネルギー自給率が列国に比べ最低に近い資源小国でありながら、エネルギー消費大国である事をわきまえ、二度のオイルショックを通して技術力による省エネの実績は群を抜いている。
(3)エネルギーと環境面での日本の立場は今後とも大きく変わらないと思われ、環境浄化、原子力発電等の世界トップレベルの技術で世界に大きく貢献できる。特に原子力は二酸化炭素をほとんど排出せず、一年間余燃料の補給を要しない特性をもつ。わが国の選択から外せないエネルギー源である。不利な条件を糧に問題を克服する日本人の能力を信じたい。
以上