平成14927

原子力安全委員会

委員長 松浦 祥次郎様

 

エネルギー問題に発言する会

 

 今回の東京電力をはじめとする電力会社の不正データ問題は、関係者は勿論のこと全国民に与えた衝撃は計り知れないもので、我が国原子力界は未曾有の危機に直面していると言っても過言ではないと存じます。このような中にあって、貴原子力安全委員会としても原子力の信頼回復に向け、大変な日々をお過ごしのことと拝察申し上げます。 

 

 私たちは、メーカを主体に研究機関、電力会社などの原子力OBで、昨今の原子力の状況について大変心配している者の集まりです。この度の問題について色々議論しておりますが、その一つとして先ずは貴委員会にお願いすることが肝要ではないかということになり本書面でのお願いになった次第です。

 

 さて、今回の問題については、規制当局をはじめマスコミまでもが挙げてデータの改ざん、隠蔽などの不正データ問題の背景、自主検査に伴う法令遵守問題、今後の対策としての維持基準の整備に集中しているように見受けられます。そのため、シュラウドをはじめとする一連の機器設備の損傷が発電所の安全性にどのように影響するかの技術的な議論はすっかり陰に隠れてしまっているように感じます。これまでにシュラウドなど機器設備の損傷については、当事者である東京電力が技術評価の結果「直ちに原子炉の安全に影響を与えるものではない」と公表し、規制当局はそれを追認しているに過ぎません。

 勿論、データの改ざん、隠蔽などはあってはならないことでありますし、最近明らかになった再循環系配管の自主検査の有り様についても見直すべき点は多々あります。従ってこれらの原因究明と対策ならびに維持基準の整備などは当然可及的速やかに実施しなければならないことであります。

 

しかし、ここで申し上げたいことは、マスコミの報道しか情報源がなく、それによってのみ判断する一般国民は、ただ今の状況をどのように受け取っているかという問題です。一般国民の原子力発電所の安全性に対する不安感、不信感は益々助長していくのではないでしょうか。このような国民の不安感、不信感を少しでも緩和するような国の動きのないことが、私たちにとっては何よりの心配事であり、残念に思っているところであります。

 また日本の原子力安全行政の「かなめ」と自らも言っている原子力安全委員会こそがこの一連の問題が本当に安全かどうかの見解を示す最適な立場にあると思っております。

 

 このような観点より、原子力安全委員会が「データ改ざん防止策」、「維持基準の策定」、「自主検査の在り方」など、経産省ないしは原子力安全・保安院が検討を進めることに屋上屋を重ねるが如き対応をするのでなく、原子力安全の「かなめ」の立場に立って、国民に向けて今回問題になっている一連の機器設備の損傷が原子力発電所の安全性に影響を及ぼすものなのか否なのかの見解を、早急にかつ判りやすい形で公表し、徹底していただくことを切望するものです。

 かかる危機なればこそ、原子力安全委員会が毅然した態度で対応され、国民の安心感の回復の柱となられることを切に願うものです。

 

 私たち原子力OBも微力ではありますが、「原子力発電所の安全性はしっかり守られている」ことを一般国民に対し、あらゆる機会を通して説明していきたいと考えております。

 貴原子力安全委員会の益々のご活躍を祈念致します。

 

 なお当会の活動内容や会員構成に付きましては当会のホームページ(http://www.engy-sqr.com)を設けておりますので、そちらを参照いただければ幸いです。

 

 

           連絡先:エネルギー問題に発言する会事務局

             hayashi-tsutomu@mwe.biglobe.ne.jp