浜岡2号機の水漏れ問題に想う

 

          平成14年5月29日  

                       エネルギー問題に発言する会 林  勉

 

 5月25日、NHK,民放、各主要新聞等、メデイアは一斉に浜岡2号機の水漏れを報じた。夕刊の一面トップに取り上げた中央紙もある。これだけの取り上げ方を見ると、詳しい内容の検討評価も出来ない一般の方々は大変な問題が起こったものと思ってしまうのも無理からぬことだ。特に地元の人々へ与えた不安は大変なものであったと思う。しかし良く検討してみると、こんなに大騒ぎするような問題ではないことがわかる。

  今回の問題は報道内容を良く分析してみると、余熱除去系の隔離弁の炭素鋼ドレン配管(直径1インチの細管)の溶接部からの水漏れだと判断できる。原子炉起動前の耐圧漏洩試験時には水漏れは発見出来ず、炉起動中の昇圧、昇温時にパトロール員が発見したとのことである。

 このような細管は水漏れがあったとしても、量的には限定されており、大事にいたることはないので、なんらかの方法で発見したら、その修理、対策を取ることで原子炉の安全は確保できる。太径の重要配管については、定期的に体積検査(溶接部の内部まで検査する方法)を実施し、その健全性を確認しているが、1インチの細管では耐圧試験時での目視確認等が行われている。今回は低温での耐圧漏洩試験時には発見できなかったが、昇温時に発見したものであり、温度上昇による何らかの拘束力等により欠陥の口が広がり、漏れに至ったものと推察される。このプロセスを見てみるときちんと水漏れを検出する機能が働いていたと言える。

 今回の報道でやたらに不安を煽っていると思われるいる点をいくつか上げてみる。

1.毎日新聞で、京大原子炉実験所:小林圭二講師、小出裕章助手、評論家:桜井惇

  各氏のコメントを載せているが、一様に、応力腐食割れの可能性が強いこと、こ  

  れは原子炉の老化現象であり、プラントを廃止すべきとの論調である。

まず当該配管は炭素鋼であり、不銹鋼に特有の応力腐食割れでないことは明 

 白である。原子力の権威者としてのコメントにしては、あまりにもお粗末な

 物といえよう。これを鵜呑みにして記事にする毎日新聞も見識のなさをさら 

 けだしたものであると言えよう。

配管の割れは材質、使用環境、荷重条件等により発生するものであり、老朽

 化とは直結しない。いままで原子力発電所でも様々なトラブルを経験してい

 るが、その都度徹底した原因究明と再発防止対策を検討し、実プラントに対

 策を実施してきているので、現在のプラントは古い物でも殆どの部分が更新

 されており、老朽化という言葉には当てはまらない。

ましてや、炉の廃止に結びつけるような議論ではない。

2.朝日新聞、毎日新聞、読売新聞でも検査の不備、ずさんさを指摘する論調が強い。印象的には、何か中部電力側の重大な手抜かりがあったような感じを与えている。

検査については、先に述べたように、1インチの細管であり、今回の目視での確認も立派に役割を果たしていたと考えられる。

検査は当該個所の重要さに応じて、様々な対応がなされている。例えば非常に重要な個所については、予防保全策としての検査、対策が取られているし、今回のように漏洩があってもその影響が限定されている物については、事後対策の手段も取られている。

従って、今回きちんと漏洩が発見されたことは、システムがきちんと働いたことを意味しており、一面トップで大々的に報道するような内容では全くないと言えよう。

 

 メデイアはやたらに不安を煽ることではなく、正しい検討評価を加えた報道に心がけて欲しいものだ。何かトラブルがあった時に、原子力発電に対する反対派あるいは批判派の人達の意見、コメントのみが取り上げられ、この一方的な見方が報道され、不安を高めている。我々、「エネルギー問題に発言する会」はきちんとした技術的根拠のある見解を述べていきたいと思っている。メデイアの方も是非トラブル発生時など当会のメンバーの意見、コメントも取り上げて欲しいものだ。

 

 勿論この私のコメントをもって今回の問題を正当化するつもりは毛頭ない。トラブルは無いにこしたことはないので、当事者の反省と今後の対策の充実を期待したい。