中国の石油事情とわが国のエネルギー問題

                       平成14年10月26日

                       エネルギー問題に発言する会 林 勉

 

  カリフォルニ大学サンデイエゴ校のM.E.Herberg氏によると、中国の現在の石油消費量は、5百万バレル/日(MMBD)であるが、2015年には、9MMBDに達する予想である。一方石油の国内生産量は3.5−4.0MMBDのレベルに留まるので、現在の1.5MMBDの輸入量(全消費量の30%)が、2015年には5−5.5MMBD(全消費量の60%)に大きく拡大する。この量は日本の現在の石油輸入量に匹敵し、かつ世界第4位の石油産出国であるイランの現在の全産出量に匹敵する。しかも2020年にはさらに、2MMBDが積み上がる予想とのことである。そしてこれ等の石油の輸入の大半はペルシャ湾岸諸国からであり、中国はこのために湾岸諸国との外交・経済面での協調を強めており、これは同じく湾岸諸国に依存している、米国、日本にとっても重大な地政学的問題となっていると指摘している。

 

 以上のように中国の石油事情は、今後の10−20年後のわが国の石油資源確保に大変に重大な影響を与えることを国民はよく認識しなければならないと思う。また軍事評論家の観測によると、中国はシーレーン確保のために海軍力を増強しているとのことである。日本は今後の10−20年後のエネルギー資源確保のためにどんな手を打っているのであろうか?

 

我々の目には何らかの有効な手が打たれているとは思えない。それどころか今回の東電問題で、内部告発問題が頻発し、マスコミは内部告発による暴露競争に血眼になっているようにも見える。こんなことで原子力が長期にわたって停止するようなことになれば、石油への依存度はますます増大し、必ずや日本経済にもはかりしれない影響を与えるのではないかと危惧している。マスコミも是非、大所高所の観点から日本のエネルギー問題にたいする警鐘を鳴らしてもらいたいと思う。