浜岡2号機水漏洩に関連して
平成14年6月1日
出澤 正人
感じたことを少し書きます。原子力発電所の保修工事には、機器の重要度から「予防保全」と「事後保全」に分けて、影響度合いの観点から重要性の低い部位、機器については、事業者の財産保護、設備利用率等コストベネフィットを考慮し保修工事を行います。
今までにも、INES「0」に評価された多くの事象に、「事後保全」対象事例があります。小口径配管のソケット部隅肉溶接箇所は、溶接時の溶け込み不足と振動疲労が重なり漏洩に至った事例から、水平展開で自主的に「予防保全」として、より信頼性の高い突合せ溶接に変更してきているところもあります。 小職の経験から、タービン系で同様の小口径配管の隅肉溶接部からの漏洩で、原子炉を停止し修理した事例がありますが、自治体の長への説明で、「事後保全」の考え方を説明し、隔離して修理できれば停止は不要なこと、また、制御回路のカード不調の事例でも「事後保全」の典型実例であることを説明し、ご理解を頂いたことがあります。
しかし、一般(マスコミも、又、マスコミによって)の常識として、「完璧」であるべきで、いかなる漏洩も不調もあってはならず、事象が発生すれば保修、点検、検査の不備ということになってしまいます。事象発生時に、当事者の常識で説明すると開き直りと映り、かえって信頼を損ないます。
平時、また事象発生時に、然るべき信頼のあるところから発信し、「ものつくり」の常識を社会と当事者が共有してゆく努力を積み重ね、原子力利用についても当事者に任せて安心という意味で、信頼に基づく、普通の産業になるように期待したいと思います。
今回の浜岡2号機の事例は、発生のタイミング良くないことは事実ですが、であればこそ、この種の事象は時を選ばず発生しますので、早期に発見され、きちんと対処されていますから、原因対策をきちんとやって復旧すること、事象と保修工事のあり方(考え方)をわかりやすく説明することが大切と思います。