東電の「原発点検記録改竄」問題について

平成14年9月1日

エネルギー問題に発言する会

金子 熊夫

 

今回の東京電力関係の出来事は、7年前の動燃の「もんじゅ」事故や3年前のJCO臨界事故と同じか、ある意味ではそれ以上に衝撃的な事件だと受け止めております。まだその全容がはっきりしない現時点ではなんともコメントのしようがありませんが、本件は今後適切かつ迅速に処理されないと、日本の原子力政策全体、ひいてはエネルギー政策全体に重大な影響を与える惧れがあり、一国民としては、そうならないことを切に祈るのみです。

 「もんじゅ」事故のときもそうでしたが、実際に起こった事故やトラブルよりも、事後処理のやり方が一般市民には大きなインパクトを与えるものです。今朝(9月1日)の朝日新聞の「天声人語」が書いているように、「今回わかった損傷について、専門家の間でも微妙に見解が分かれている。重大な事故につながる可能性があるという指摘もあれば、直ちに重大な影響を与えるものではないとの見方もある。素人には、信用できるかできないかがほとんどすべてと言っていい世界だ」という気持ちは小生も全く同感です。

 佐々木経産省原子力安全・保安院長は昨日(8月31日)新潟県を往訪、平山知事に対し、安全性に大きな問題はないことを強調するとともに、調査に時間がかかった理由などを改めて説明した由ですが、もし本当に安全性に問題がないのであれば、そのことを全国民に対しできるだけ早期にはっきり説明すべきだと思います。 もちろん、全容を把握した後でなければ最終的なことは言えないでしょうが、ももたもたしている内に「ああ、原子力はやはり危険なのだな、だから原子力には頼れないのだな」という気持ちが国民の間に広がってしまうことを小生は強く懸念します。

 科学技術の専門家ではない小生が長年にわたって「門前の小僧」式に学習した知識によれば、原子力はまだまだ信頼するに足りるエネルギー源であり、資源に恵まれない日本にとっては、今後も必要不可欠であると信じますが、それだけに、相次ぐ人為的なミスのために原子力が途中で頓挫することがあってはならないと思います。 従って、今回も、言われるような「記録改竄」という由々しい事実があったにしても、そのことと原子炉自体の安全性は別物であって、両者を区別する合理性、冷静さを失うべきでないということを国民に対して力説すべきだと考えます。 日朝国交正常化問題も大事ですが、小泉首相は自ら、このことを国民に対して強く訴えるべきではないでしょうか。


注記)この文章は事件発覚直後の9月1日付けで書いたものである。

以上