「高レベル放射性廃棄物」の処理について
平成19年6月7日
香川県高松市 森島茂樹
私は、資源小国の日本では、ここ当分原子力発電と共存して化石燃料の使用を少しでも減らす事が、日本人の為になり、また、全人類の為にも必要と思っています。
その為には、原子力発電所使用済み燃料から取り出される、「高レベル放射性廃棄物」を適正に処分する事が大切です。
現在日本では、この廃棄物を地層の安定な地域の地下300m以下に埋設するように検討されています。
先日の高知県東洋町長選挙は、この処分地としての「地域調査」受け入れの是非を問う選挙となり、結果は調査受け入れ派の元町長が敗れました。
だけど、これは、原子力発電に反対されている方々が、
1;この廃棄物である「ガラス固化体(直径0.4m,高さ1.3m、重さ500s)」の放射能は1本だけで広島型原発の30本分もあり、近くに数秒間居るだけで100%死亡するほどの危険物である。
2;それを地下深く埋設することは、地震大国日本では、とても安全な処分は出来ない。
又、「ガラス固化体」埋設作業中(当初の約50年間)に地震に伴う大津波に襲われると、固化体が散乱・損傷して強い放射能がばらまかれ、その周辺では人が住めなくなると東洋町の選挙前に地震学者の先生が、新聞に大きく書かれた。
等、反対意見が大声で叫ばれた選挙の結果と思います。
しかし、これは、反対のための反対であり間違っています。 それは、
1;このガラス固化体は、原子力発電所の使用済みの燃料から、未だ燃料として使えるウランやプルトニュウム等の「核分裂性物質」を抜き去った物であり、臨界になったり爆発はしません。
しかし、出来た当初は上記のように放射能が大変強くこれが充分減衰するまで(これらの原料であるウラン鉱石の放射能と同程度に減衰するまで)には数万年は掛かります。
日本ではこれから、この固化体が青森県六ヶ所村の再処理工場で作られます。(フランスなどで作られた固化体の一部が既に六ヶ所村に帰り保管されています。)
地下処分場の地点が決まり、工事が進むと、六ヶ所村から固化体が船や大型トレーラーで運ばれて来ます。
地下の処分場に入れる前に、「固化体」は更に地上で厚い鉄の容器(オーバーパック)に入れられ、収納場所である地下の岩盤に開けられた穴に、粘土と共に詰め込まれます。
六ヶ所村での「固化体」を作る作業や、処分場での作業は強い放射能のため「ガラス固化体」に近寄れないので全てリモコン操作になります。
トレーラーの輸送には「固化体」が28本入る100トン近い大きな容器に入れて運びますから、充分遮蔽されており、通行道路の周辺でも放射線被曝はありません。
いずれにしても、大変手間が掛かりますが、大きな災害には成らないでしょう。
それは、「ガラス固化体」は地震で爆発することもなく、燃えることも有りません。ひどいトラブルや交通事故で仮にガラスにヒビが入っても、放射能を持った気体や液体や粉末が外に飛び出すことは有りません。
処分場でのリモコン操作も、物の上げ下げが主体ですから、原子力発電所の運転操作のように緻密で難しい操作は少ない上に、臨界事故にも成らないので、操作に余裕が持てるので安心度も高いでしょう。
現在、LNGや石油を積んで町中を走り回っているタンクローリー等よりは、安全度では数段高いと思います。
2;地震対応については、現在の技術でも「火山活動」「断層活動」などについて充分調査して対応すれば、地層処分をしてから10万年程は、火山噴火や断層活動で放射能が直接生活圏に放出されることは無いと、一般的に認められています。
しかし、地震大国日本では、処分場も地震は避けられません。処分場にもある程度の亀裂等は生じるかも知れません。だが、処分場では、地表に建設されたマンションや橋梁等の様に地震での壊滅的な損壊には至らず、生活圏への直接的な放射能の漏れ出しは無いでしょう。又、固化体埋設作業中の地震に伴う津波被害についても、地上のオーバーパック関連の作業所等は元々強い放射性物質を扱う所なので充分な密閉機能を備えており大津波で多少の浸水が有ってもガラス固化体が散乱・損壊して周辺に住民が住めなくなるとは考えられません。
ガラス固化体は、ある面では安定体であり、適切な地下に埋められると、地震でも直接的に生活圏を汚染する事はありません。
地層処分されたガラス固化体の安全性を適切に評価する為には、埋設された地層の地下水によりガラス固化体がどれ位溶かされ、その水が岩盤などの隙間や亀裂をどの様に通り、どんな濃度で我々の生活圏に漏れ出るかを具体的に検討評価する事です。
この為には、調査地点個々に、地下深部の岩盤の状態を精査すると共に地下水の性質・流量の調査や固化体の埋め込みに使われる粘土の特性確認などをして、今後10万年間の長期安定性を評価しなければ成りません。
大変な調査ですが、充分やって人々から安全と信頼を得なければ成りません。ただ危険だけを叫び調査もやらさないやり方は駄目です。
3月24日高知新聞の夕刊に、高知大学の岡村教授が「東洋町の地質はぼろぼろで地下水も溢れているから、ガラス固化体の地層処分は駄目だが、日本にも安定して100万年は動かないと思われる場所がある。」と言われています。
これらの事情を地元の方に判って頂くように、関係者全てが努力しないと行けません。
調査地域が頂く交付金は、国が貧乏人の頬を叩く物ではなく、日本人や全人類のお役に立つお金です。
知事を初め、自治体の首長が「高レベル放射性廃棄物処分場」を毛嫌いされるのは、前東洋町長の選挙を見れば判るように、この件は逃げるが勝ちと自己保身に逃げられている様にも見えます。
首長方の判断にも、せめて地域の調査結果を見て判断されるべきでしょう。
以上