東京電力問題雑感

2002/12/06

                              澤井 定

 

東京電力株式会社による点検不正と格納容器漏洩試験の偽装問題は、原子力利用に対する地元・国民の「信用と信頼」を大きく損ない、原子力利用に大きな暗い影を落としました。

しかし、化石燃料・核燃料資源が少ないわが国にとって、原子力は将来の日本のエネルギーを支える最有力候補と考えられますので、今回の東京電力問題でクローズアップされた事柄のうち、「信用と信頼」および「プルトニウム利用」について、私見を述べたいと思います。 

 

(1)          「信用と信頼」について

原子力利用は、地域と国民の「信用と信頼」がベースにあって、初めて円滑にできるもので、この「信用と信頼」が原子力利用を推進する基本と考えています。

原子力利用に対する「信用と信頼」は、普段の行動とお付き合いが大切で、誠実と法律遵守をベースに、和やかな対話と情報の透明化などで育まれ、確固としたものになっていくと考えています。この実践を心掛けて、損なわれた原子力利用に対する「信用と信頼」を回復し、さらに進んで、地域・国民、そして国・自治体・電力会社・関係メーカーが相携えて、確固とした「信用と信頼関係」にすることが大切で、早急にその具体的方策を論理的に討議して構築することが重要と考えます。

この「信用と信頼関係」が確立されていくと、笑顔の絶えない対話・情報の透明化・規制緩和などが形作られ、原子力利用がさらに理解され受入れられ、そして発展していくと思います。

 

(2) 「プルトニウム利用」と「プルサーマル」について

現在、天然ウランの確定可採埋蔵量は、エネルギー換算で石油の確定可採埋蔵量の約1桁上で、将来のウラン探鉱やトリウム資源も考えると、原子力は長期に亘り、世界のエネルギーを支えるものと期待されます。

天然ウランが保有するエネルギーの大部分を利用するには、プルトニウムを高速増殖炉で利用しなければなりません。そして、原子力を利用する鍵であるプルトニウムを日本で利用するには、内外に理解され信用され受入れられる必要があります。

世界に対しては、日本のエネルギー基本政策を明確に示し、日本はエネルギー資源が少なく原子力利用・「プルトニウム利用」が必要で、平和利用に徹していることを示すことが最重要です。一方、日本において原子力利用・「プルトニウム利用」が理解され信用され受入れられる鍵は、良好な原子力発電所・原子力施設の稼動・情報の透明化・和やかな対話などを通して積み重ねられる「信用と信頼」が第一と考えられます。

日本における「プルトニウム利用」は、1978年3月から敦賀市の新型転換炉ふげん発電所で、また、1977年4月から大洗町の高速増殖炉実験炉「常陽」で、約25年に亘り実施されてきました。現在までに、前者においては772体のMOX燃料集合体が、後者においては482体のMOX燃料集合体が装荷され、何れの原子炉においても燃料破損を経験していません。従って、両炉における「プルトニウム利用」の安全性と技術は、実証されたと評価されます。

日本における「プルサーマル」は、軽水炉の知見・世界における実績をベースに、このわが国の「プルトニウム利用」の経験と技術開発を踏まえて実施されます。さらに、「プルサーマル」は、高速増殖炉の「プルトニウム利用」につながり、将来のエネルギーの安定供給に寄与することも理解して頂きたいと思います。