もんじゅ判決の論点整理

平成15210

 柴 山 哲 男

 

もんじゅ判決文について主要な論点を整理したものである。

 

1 法的な観点より

(1)  行政処分を無効とするのに違法の明白性の用件は不要か(本件は国の上告の理由となっているので詳細は省略します)

(2)  仮に明白性は必要としないとしても「安全審査に瑕疵があり、結果としてそのような事態の発生の具体的危険性を否定できないときは、設置許可を無効ならしめる重大な違法がある」ことで良いのか。具体的な危険性に至るある程度の蓋然性の証明は必要ないのか。後段の二次冷却材漏洩事故、蒸気発生器伝熱管破損事故から原子炉事故に至る推論にはあまりに飛躍が多すぎ蓋然性があるとは認めがたいのではないか。

(3)  設置許可後に判明した新しい知見をもって過去の設置許可に重大な瑕疵があったと言えるか。一例として、二次冷却材漏洩事故に関する実験などの知見は漏洩事故後に実施されたものであり、設置許可時点では得られていなかったものである。設置許可時点で若干検討不十分とは言えても「重大な瑕疵」があったと言えるのかどうか。

(4)  設置許可が無効となった場合、変更許可についても自動的に無効となるのか。常識的には元の設置許可が無効となれば、無効となる感じもするが、新しい知見に基づいた変更許可は変更部分のみの許可と考えるべきか、変更部分を含めて全体を許可したと考えるべきか。

 

2 主として技術的観点より

(1)  潜在的危険性の顕在化として放射性物質の周辺環境への放出を挙げており、これは理解できるが、大量の放出または有害な放出など量的な観点は必要ないか。今回の判決は別としても今後の判例となりうるので、何をもって危険と判断するかについては明確にしておく必要があると思うが。

(2)  上記にも記載したが、単一事故から放射性物質の放出に至る推論があまりにも粗雑すぎないか。この程度の推論でも裁判上は証拠たりうるのか。

炉心崩壊事故に関して「現実に起こりうる事象として安全評価されなければならない」と断定しているが、妥当かどうか。一方で「学問の分野では仮想的炉心崩壊事故として研究の対象とされており」との記載もあり、判断の分かれる問題について重大な瑕疵があったと言えるのかどうか。判決の最後の段階で「本設置許可を無効とする理由は変更申請が対象としていない反応度抑制機能喪失事故の瑕疵を事由としているので、変更申請の有無に拘わらず無効」としており、ある意味では本判断の適否が重要である。

(3)  その他個々の技術的事項の認定には異論のあるとことも多いが、詳細は省略します。

以上