原子力発電反対の風潮の広がりを憂う
第二十六話   フランスからの声『もんじゅの立ち上げを即刻に』

041120      天野牧男

 

先日原子力デーの催しとして、日本原子力文化振興財団が主催して、記念シンポジウムが開催されました。この時の講演者として,フランスから「原子力を支持する環境主義者協会」の会長のComby 氏が招待され、「エコロジー社会におけるエネルギー」と題した講演をして行かれました。

この講演のなかで、彼は「もんじゅ」の一日も早い立ち上げの重要性にふれていました。フランスでは、スーパーフェニックスの運転を停止したばかりか、既に解体が始まっていることは周知の通りであります。 スパーフェニックスが廃止に追い込まれたのは、技術的な理由ではなく、1997年にリオネル・ジョスパンが、内閣を作るために必要な、緑の党の協力を得るための方策でありました。このことが、世界の原子力開発の面に暗い影を投げていることは事実であり、Comby氏も「もんじゅ」が立ち上げられることが、その影の排除に大きく貢献すると考えています。

「もんじゅ」の立ち上げに重要なな立場にある、福井県知事にその状況を伝えたものが、この投稿です。西川一誠福井県知事の「知事へのおたより」宛て送付したものです。

 

福井県知事 西川一誠 様

 

日経エコロジー10月号で知事のインタビューを拝見しました。知事の原子力発電に対する的確な対応につきましては、かねてから承知いたしており、敬意を持って拝見しておりました。今回のインタビューも、誠に適切なしかし必要な厳しさをもった記事と拝読いたしました。

 

ところで最近フランスの環境学者で、原子力の必要性について、積極的に発言しているComby 氏が、原子力デーでの講演に来日され、会って話をする機会がありました。彼はご承知と思いますが、フランスのEFN(原子力を支持する環境主義者協会)という、48カ国、会員6000人ほどのNGOの創始者で会長です。その活動の詳細はhttp://www.ecolo.org に、また、Comby 氏についての情報はhttp://www.comby.org にあります。

 

その会談で、Superphenix が解体され、蒸気タービンも南米に売られたという問題が議論されました。このあたりのことについては、充分ご承知のことと思いますが、このSuperphenix が廃止されるに至った経緯は、その技術的な理由ではなくて、愚劣な政治的な理由であったと、Comby 氏は全く口惜しいといった感じを体中にみなぎらせていました。勿論Superphenix にも技術的問題は何回かありましたが、それらはプラントを廃止するような深刻なものではありませんでした。

 

世界のエネルギー問題で、今最も重要なことは高速増殖炉の実用化ですが、Superphenix がこういった状況では、「もんじゅ」が一日も早く立ち上がることが非常に重要で、 Comby 氏は出来るだけ協力したいということで別れました。その時の話のように、彼は原子力の日での「エコロジーと原子力」と題した講演で、「もんじゅ」の重要性と、一日も早い立ち上げを期待すると強調していました。

 

わが国でも原子力船「むつ」が、勿論発端は中性子の漏洩という技術的問題があったことは事実ですが、その後改造のためのほとんど意味のない多額の費用を払った挙句、世界一周しただけで、解体されてしましました。我々はこういった愚かな失敗を二度と繰り返してはなりません。

 

Comby 氏自身には、Superphenix の廃止には何の関連や、責任はありませんが、やはりそういった愚かな行為をした国の一人として、日本では是非「もんじゅ」を早く立ち上げて、Superphenix で失った高速増殖炉に対する不信感の払拭に役立たせてほしいと、何回も繰り返して帰国されました。

 

高速増殖炉が人類の将来にとって、地球上の環境やエネルギーの面で如何に重要かを、知事に申し上げる心算はございません。しかしこのSuperphenix でのきわめて苦い経験を受けたフランスの環境学者の言葉だけは是非お伝えしたいと、このメールを送らせて頂きます。

 

知事におかれましては、「もんじゅ」の一日も早い立ち上げについて、フランスからの声も耳に入れられて、積極的なご対応を頂きたく存じます。 

天野牧男