週間ポスト 2003.11.7
「ニッポン新エネルギー事情―米が模索する新たな潮流」への感想
平成15年10月31日
石井陽一郎
標記論文をたいへん興味深く拝見するとともに、感想と所見を以下に述べたい。
1.2頁目に「アメリカは中東の石油をまもるために、莫大な軍事費を払い、・・・」(W.マーチン ワシントン政策研究所長の説として)とあるが、米―イラク戦の頃 米エネルギー省長官発言が、米国は石油だけのためなら(ロシアなどからもなんとか確保可能 他)で戦争はしないと。私はこの方が説得力ありと思っています。
・
その理由は
イ) かかる理由だけなら20世紀前半の原子力のない時代の石油や資源の収奪の時代とまったく変わらない
ロ) 本質的には中近東における覇権と政商がらみの活動が根本的であろう。
・もとよりエネルギーが広くまた深く人々にかかわる問題ゆえに重要であり、ときには深刻さももたらす場合があるのは当然であります。だからといって当該戦争で石油がメインとは考えにくい。
2.経済性とセキュリテイ
・3頁目に日本人の多くは再処理に費用がかかりすぎて気に入らない、というかもしれない。でもアメリカ人の多くが戦争に費用がかかりすぎて気に入らない、と同じではないでしょうか、は前段の「経済的には再処理してから貯蔵するほうが効率的で安全・・・の論(同会長)とからめて傾聴すべきと思います。もちろん経済性は切実な問題であり、最近わが国で詳細につめる動きがでてきたことは、おおいに注目されるところです。
3.米の原子力への取り組み
・4頁目 NEIピーターソン副理事長 米の原子力シフト傾向の高まりに関連した発言も共感されるところが多い。すなわち
・2020年までに5000万Klに相当する原発開発が必要。年間だと100万Kw40基相当で過大なので、2010から逐一運転開始、20年には8基とするのが妥当と思われるが、水素エネルギー時代をいうなら、やや過小の感もする。
・「・・・実際にこの10年間新設原発なかったにもかかわらず、稼動年数向上、設備利用率向上(いまや米はこの点で世界一)で20基分に相当する伸びをみせている。減価償却の進んだ原発は操業するほど旨味がある「金のなる木」だ。将来、わが国でも見落としてはならない視点と考える。定検期間延長の規制緩和、超寿命燃料開発、よりアドヴァーンスされた原発の開発、社会に水素システムの導入加速などにつながるからである。
・このためには、国際放射線防護―ICRP−の基本的な考えのように、リスクとレターンを出来るだけ一般産業と同じように評価する。またExtern的考え、たとえば廃棄物一つとっても、産業廃棄物が年間4億トン発生する現状、に比し原子力はマイナス4〜5乗も低いことがもっと理解される必要がある。放射線や原発事故での事象を針小棒大に、確率的な考えー一般産業には受け入れられているにもかかわらずーがない、いわれのない怖れをいかに克服していくかが、わが国ではとりわけ大切であろう。