「エネルギー基本計画改定案」に対するパブリックコメント提出意見

 

「エネルギー計画基本法」にもとづく「エネルギー基本計画」は、少なくとも3年ごとに検討を加え見直すことになっており、本年度はその見直しの年に当っています。経済産業省は総合資源エネルギー調査会総合部会の審議を踏まえ、「エネルギー基本計画」改定案の策定作業を進めていますが、その案について平成181225日〜19129日の間、パブリックコメントの募集がありました。

これに対応して、会員有志がそれぞれコメントを提出しましたが、それらを一括して各会員のコメントとして、「私の意見」欄に掲載しました。

2007222

(順不同)

松岡勉氏の意見

全体としては我が国のエネルギー事情を良く分析し、力強くエネルギー政策を推し進めるように策定されていると思います。是非万難を排して実行していただきたいと思いますし、我々も微力ながら協力していきたいと思います。

なお、コメントとして、特に原子力関係について次の点を申し上げたいと思います。

(1)  国が示したエネノレギー基本計画について、地方公共団体特に県知事が皮対ないしは非協力的な行動を堂々としていること。

(2)  電力自由化以降電気事業者が既設原子力発電所の維持については熱心であるが、新規原子力発電所の建設については消極的なこと。

(3)  これらに対する対応策が今回の基本計画で読み取れないこと、

などです。

さらに具体的にいえば、(1)については、東電等の不祥事や耐震間題等でプラントが止まった後、国の安全宣言が出たにもかかわらず、知事がなかなか運転許可を下ろさなかったために、原子力発電比率が下がり、我が国全体の炭酸ガス放出が非常に増えたこと、また、放射性廃棄物の地層処分の調査を希望する町村に対し、知事が理由なく反対表明をして潰したりしていること、その他にも知事は地域への利益誘導のために原子力を人質に無理難題を国に突きつけていること、これらはまさに基本計画を無視するものです。

また、(2)の電気事業者について言うと、目本原電敦賀3,4号機の大幅な建設計画の繰り延べです。これは魏行基本計画計画時点では3号機は2012年に運転開始して、京都議定書の炭酸ガス放出削減に寄与するはずでしたが遅れ、2006年施設計画で2014年に運転開始となりました。さらに「原子力立国計画」で2006年施設計画は推進するとうたっているにもかかわらず、昨年末には2年遅れの2016年に遅らせるとなりました。

この経緯を見ていると、基本計画では原子力を基幹電源として積極的に推し進めると明言しているにもかかわらず、電気事業者の熱意が伝わってこないし、これに対する国の対応も伝わってきません。敦賀3,4号機は将来の我が国の原子力比率の向上に貢献するばかりでなく、ここ20年近くPWRの建設は北電泊3号機以外途絶えており、この敦賀3、4号機がPWRの建設技術力維持のためには必要不可欠なプラントであり、これが遅れることは我が国のPWRの建設技術力が危機に瀕することになるものです。このことは国としても十分に認識しておく必要があると思います。

このような対応への対策を是非考えていただきたい。エネノレギー基本計画p12に「B望ましいエネノレギー需給構造の構築に資する敢組に関しては、地方公共団体や事業者、非営利組織、国民に対して必要な範囲で政策誘導を行う」という表現があり、現行も今回も同様の表現があるにも係らず、守れていないので、この主旨を強調し、国はもう少し強力に基本計画を推進していただきたい。

そのために、p61の第2節「地方公共団体等の役割」の1項および2項の末尾に、「地方公共団体(または事業者)は本基本計画の方針に反する行動を取る場合にはその理由について国民を納得させるための説明責任を負う。また、原子力委員会(または国会)は重要な計画に地方公共団体(または事業者)が協力的でない場合には、協力を勧告し、説明を求めることができる。」を追加してはどうかと考えます。

これは一例であって、主旨は、この3年間現行基本計画を故意に違反しているのに国は何もできていないということであり、本基本計画が絵に描いた餅にならないように、基本計画にしっかりと地方公共団体や事業者の義務と責任を記載していただきたい。

 

石井陽一郎氏の意見

1 地球温暖化問題

     本件を問題として対策についても強調されているのは結構と思います。わが国では京都議定書のCO2など90年比6%ダウンは現在すでにオーバーしており、0812年にかけてこのレベルにするのは容易ではないと思います。

     さらに追加すればEU20年には20%下げよう、あるいは英国のようにもっと高い目標をセットしているところもあります。

     産業の発展の負の側面-環境変化、異常気象、海面上昇、GDPへのマイナス影響―を海外の識者はもっと真剣にうけとめているのではないでしょうか。

     環境問題、特に地球温暖化の対策については、単に日本一国で目標を達成すればよい、他の国がやっていないといった次元ではなく、広く世界に貢献するべく技術立国としてもそれなりの高い目標を念頭に推進すべきであると考えます。わが国にはそれだけの素地があり、さらにトップランナーとして走れるものと期待します。

     P8,2-1関連

エネルギー基本政策を進めるにあたり、環境対策―特に地球温暖化対策―は随一といって過言ではないと考えます。

2 地球温暖化への対策

(1)   2012年までをターゲットにするのではなく、その後も温暖化ガスを○○%下げるとの強い国の目標を掲げるべきであります。タテワリを超えて省庁一丸となって推進し、国民も呼応して進める ことだと考えます。

(2)   現実には大量かつ効果的経済性に優れているという面で供給面では原子力を拡充するのがベストであります。「原子力政策大綱」では原子力比率を40%以上(現在は34%くらい)と打ち出しています。この点を強調していただきたい。P20B関連

(3)   需要側では、計画書にもあるが省エネであります。需要を抑制するとともに、産業界や家庭の機器の熱効率を上げることです。電力におけるLNG,石炭の複合サイクル(30%以上向上)、新幹線は高速になったにもかかわらずむしろエネルギー消費が減っているなどは、端的な例です。

(4)   輸送面  温暖化ガスが2割も占めている輸送については、ハイブリッド化をはじめ、バイオ燃料の混合、デイーゼル化での抑制がうたわれているのは分ります。

Ø         最も効果的なのは電気自動車EV、プラグインハイブリッド(ハイブリッドの電池を大きくしたと見ることも出来る)を増やすことです。今後はいっそう進んだ複合サイクル火力の割合が増え、従ってCO2の発生率も下がることになるでしょう。その電気により充電するのです。前提としてはさらに良い電池が作られる必要があります。発生電力の3割以上を占める原子力によりCO2はその分減ります。夜、軽負荷時には原子力と高効率の火力発電所の比率が多くなるので安い深夜電力を使えるばかりか、CO2の低減効果は倍加します。

Ø         都市部は概して輸送距離も短く、スタートストップが多いのでガソリン車よりも効率低下が少ないモーターと電池の威力は格段と発揮されます。

Ø         仮に車の1/5EVになればCO21/2×1/5×自動車排出比率20%として少なくとも車だけで国全体の2%は減る勘定になります。

Ø         環境への貢献を評価して利用者には、風力と太陽光のようになんらかの助成があっても良いくらいです。2,3-3運輸多様化関連、P31P57P13,2-1関連

(5)   負荷平準化  これを向上することの必要性は基本計画P19C2にも指摘されています。03年でわが国の年負荷率61%はトップのドイツの77%に比べ大分低く、先進国では4番目くらいです。これからは需要のピークカットよりも深夜負荷を増大して年負荷率を上げるのが良い。(3)のEVはまさにそれで、産業廃棄物処理、造水プラントも考えられます。電池との併用もあります。経済効果と環境対策の一挙両得になります

 

3 産業システムと経済性

(1)   研究開発は産業・技術レベルの向上、国の活性化につながることであり、いろいろやることにやぶさかでありません。しかしある時点毎に評価してその設備やシステムを評価-特に経済性―を行って時には大胆なカット、転換も必要ではないでしょうか。でないと国民の税負担は一向に減らないオソレがあります。(P14,2-1費用対効果とのってはいる)

(2)   基本計画にはいろいろ対策が述べられています。しかし概して総花的な印象を受けます。たとえば、

Ø         原油の需給逼迫のオソレがあるとして原油争奪戦にどこまで加わるのか、こんご原油は資源として活用する方向にもっていくべきで、燃料としては抑制すべきではないか。P41関連

Ø         原油の備蓄は現在200日近くあると聞いています。これを少々増やしてみたところで本当に石油危機がじわりしのびこんでくるならばーその可能性は高いー長期的な対策―国のセキュリテイになるのでしょうか。P12,2-1関連、:基本計画書P6,1-1、 

Ø         バイオ燃料は中期的にはCO2の収支をゼロにする意味がある。 しかしながらやたら田畑をつぶしたり、森林を伐採して量を増やすのは疑問です。そうまですれば却って自然からそれ以上のしっぺがえしを食うオソレが大きい。たとえ他国から多量のバイオが輸入できるとしてもです。地球全体でみれば地球環境を別の意味で人為的にこわす可能性もあるからです。P20B関連、基本計画書P8,2-2関連

Ø         水素は脱カーボン対策の一つの本命と考えられます。燃料としても天然ガスからのLNGが液体水素の活用も考えられます。しかしこれはあくまでも風力、太陽光、そして原子力による水素とすべきです。原油を加工して水素を得るのは環境、経済性、資源セキュリテイの点からは除くべきです。P39関連

(3)   自由化と原子力、特に廃炉、更新 P20,2-(3)@の原子力の廃炉負担の軽減、原子力特有の投資リスク軽減措置対策を強力に進める必要がある。

(4)   原子力部門は概ね賛成、強力に進められんことを期待します。P20P28関連

(5)   燃料電池 触媒に稀少資源、貴金属を使用することは疑問です。P31関連、普通の電池開発も安全性、使用材質には配慮が必要。P32P34の革新的開発にもこの配慮が必要。

(6)   2030からの既設原発代替に備えた次世代軽水炉の開発は強力に進めるべきです(P57関連)。基数が多いこと、特にアジアを意識した国際競争力の向上、の上からも前進が必要。鍵としては、一般に言われているほか@いっそうのリスクフリーへの対応 A長寿命化80年以上、本体、炉、燃料B特にわが国の場合メンテナビリテイだけでなくリプレイサブルへの配慮C負荷追従性の向上

 

林勉氏の意見

意見ー1.全般

 全体的に現状を的確に把握し、適切な政策展開がなされており、優れた「エネルギー基本計画」になっていると感じました。

 特に原子力の内容は、「原子力立国計画」も織り込まれて良くできていると感じました。一部にさらに考慮して欲しい点があり、これらについて以下に述べます。

 

意見ー2.2章2節2、負荷平準化対策の推進

 平準化対策に最も有効なのは電気自動車の夜間電力による充電であり、この点につききちんと記述して、電気自動車の早期実用化の必要性を記述すべきと考えます。

 

意見ー3.2章3節1(1)最終部分

 「原子力立国計画の実現に向けた政策立案を行う」と記述されており、この点はは重要であり、予算を十分につけて実行していただくようお願いします。

 

意見ー4.2章3節1(2)、原子力と国民・地域社会との共生

 ここでの記述はもっともであり、この方針で推進していただきたい。しかし地方自治体の意向を尊重するあまり、原子力政策が思うように推

 進できない現状を改善するにはどうあるべきかについて、政策・立法措置等も含めて十分に検討していただきたいと思います。

 

意見ー5.2章3節1(3)@、電力自由化

 原子力発電の新・増設・建替等が円滑に実現できるような、所要の環境整備のための諸施策が述べられており、これらは是非実行に移していただきたい。

 一方既設原子力発電所の発電コストは他の電源より安い。特に昨近の資源高騰の中で、原子力の優位性は益々高まっている。こうした状況の中で、電力自由化といっても原子力発電は電力会社が独占しており、その優位性は際立っている。その優位性を原子力発電  の積極的拡大(他の電源より優先して建設するとか、代替建設をするなど)につなげるような政策的義務付けを電力会社に課すなどの対策が必要ではないかと考えます。

 

意見ー6.2章3節1(3)A、設備利用率の向上

 「設備利用率の向上を図る」となっているが、このことはここ数年言われ続けているが、一向に現実化していない。日本の原子力発電の設備利湯率は70%台で世界最低レベルである。一方プラントの性能を示す指標である、計画外停止率は世界で最優秀であることを考えると、設備利用率の悪さは制度上の問題も大きいといわざるを得ない。問題点は、わが国では一端プラントが停止するとなかなか立ち上がれないという状況や運転期間が世界では2年間がふつうに行われているのに、わが国では13ヶ月以内に規定されている。運転期間延長の検討も以前から行われているがなかなか実現しない。これらの問題点をよく分析し、対策を早急に実施すべきであると考えます。

 

意見ー7.2章3節3(3)、電気自動車

 「電気自動車の技術開発・実証研究を引き続き推進する」と記述されているが、その具体策がないのが気に掛かる。ピークオイルの観点から早晩石油供給がタイトになることが想定されるが、石油最大消費の自動車部門の対策としては、現在の技術水準からして電気自動車がもっとも有望であり、これに対する具体策をはっきり打ち出すべきであると考えます。

 

意見ー8.2章3節7(3)、原子力による水素製造

 原子力による水素製造の可能性がごく簡単に記述されているが、これは水素エネルギーの活用社会にあっては本命となる技術であると考えられるので、国として積極的にこの政策を展開するような予算措置をとり、推進すべきであると考えます。

 意見ー追加1.第2章、3節1(8) わが国原子力産業の国際展開支援

 ここでは「原子力産業の国際展開の推進を図る」となっているが、具体的には、@原子力発電導入予定国への支援、およびA戦略的資源外交の展開でカザフスタン等とのウラン鉱山開発等についての記述しかない。

 原子力立国計画策定後の大きな動きとして、わが国のメーカー3社の国際展開がドラステイックな動きを見せて、以前とは様変わりになってきている。これらメーカーを中心とする動きは、単にわが国の原子力産業のみではなく、世界の原子力産業に対応した動きであり、この国際的な動きに対し、わが国としての対応をきちんとする必要がある。具体的には国としての外交支援、関係国との原子力協定、原子力損害賠償対応策や金融支援策等の総合的支援策が必要となる。これらに対応していくという国としての決意を織り込んでいただきたいと考えます。

 

柴山哲男氏の意見

意見1

原子力エネルギーの利用に関しては第2章第3節「多様なエネルギーの開発、導入及び利用」他に記載されているが、第3節は「原子力エネルギーの開発及び利用」仮題)とし、第4節を「多様なエネルギーの開発、導入及び利用」として以下節を繰り下げる。

(理由)

1.原子力エネルギーは第1章第1節2項に「将来にわたる基幹電源と位置付ける」としており、多様なエネルギーの一環として位置付けるのではなく、基本計画の中でも独立項目として明確に位置付けた方が良い。

2.原子力エネルギーについては同第3節の中でも分量が多く、第3節の40%程度を占めている。分離することにより全体の構成もスッキリし読みやすくなる。

意見2

原子力エネルギーに関する国際協力の推進に関しては、第2章第3節1(6)項、第5節3項などに記載があるが、不拡散などからの視点が中心で国際的なエネルギー問題を解決する手段としての国際協力の視点が少ない。特にアジアにおける協力に関しての記述を追加するべきである。

(理由)

アジア(インドを含む)に於いては今後急速にエネルギー需要が増大し、環境問題も併せて解決するためには原子力エネルギーの導入が不可欠であり、各国において計画が進められている。具体的な方策は別としても、エネルギー問題と環境問題の解決のために我が国が積極的な協力をすべきことは明確に記載しておいた方が良い。 

 

斎藤修氏の意見

1.全般

 今回の改定案は、全般的に最近の世界エネルギー情勢をよく勘案されて、わが国のエネルギー戦略の重要性を明確にしており、時宜にかなっていると考えられる。各政策項目についての分析も行き届いており、提案されている方向性もよい。版を重ねるごとに各項目の内容も厚みが増しており、好ましい改訂案である。

しかし全般的に網羅的であり、重点が明確でない。エネルギー問題は、個別政策項目の国全体における量的な位置づけが重要である。全体を展望して、それぞれの量的位置づけを明らかにすることが望ましい。個別の項目についてはよく解析され、あるべき方向も示されているので、量的な関係を展望して、可能な限り個別項目に重み付けをする必要がある。国としてのエネルギー全般政策を推進する点からも、各個別政策項目を見渡した全般的視野が必要であると思考される。

2.国民に対する働きかけ

 エネルギー問題は本来国民生活に大きく関係する問題である。国の政策の立案から其の実施に至るまで、国民の認識は大きく関係する。基本計画では、安定供給の確保、環境への適合、市場原理の活用を基本的な方針としているが、これらの全ての実施に大きく係わるのが、国民のエネルギーに対する認識であり、態度である。この点から見ると、わが国の人々の認識は他の先進諸国に比してエネルギー問題に関する認識が低いように思われる。

国民に対する知識の普及については、個別に述べられているが、国民の認識に対する関心が薄いように思われる。国民全般に対する大きな働きかけが必要である。エネルギー問題に対する認識の薄いままに、多くの個別政策を実行しようとしても其の効果は限定的であり、大きな効果を上げることが出来ない。日本のようにエネルギー自給率の低い国民にとって、エネルギーの重要性は国民の常識の一つとなるくらいまで関心を持ってもらえるよう、認識を徹底する必要がある。

エネルギー自給率の実態認識及び政府部内におけるその向上方策の検討並びにその結果に基づく自給率目標値の設定など、国民及び関係者のエネルギー意識の改革に効果があると考えられる。

これは基本計画に書くべきことではないかもしれないが、総理大臣にエネルギー問題を語ってもらうなどのパーホーマンスも大きな効果があると考えられる。関係者が、この問題を大きな問題として認識して、政策を遂行することを望みます。

 

松永一郎の意見

(全般)

 一昨年に策定された「原子力政策大綱」と昨年に策定された「新・国家エネルギー戦略」及び「原子力立国計画」に則って、今後の政策が分かりやすく、具体的に記述されており、優れた基本計画改定案であると思います。ただし以下の点について個別コメントします。

意見1.はじめに    

この中に昨年8月に策定された「原子力立国計画」について記述する。

(理由)本改定案の内容の内、原子力に関する事項は「原子力立国計画」の内容そのものといってもよいでしょう。それについて記述されていないのは納得できません。

 なお、閣議決定されていないのがその理由であるならば、早急に閣議決定すべきものと思います。

 

意見2.第2章第2節1.(2)A(イ)

「自動車の省エネルギー性能の向上に向けた取組」の中に「ハイブリッド車の開発を促す」とあるが「プラグインハイブリッド車の開発を促す」とする。 

(理由)プラグインハイブリッド車はこれからの省エネルギー、石油消費量削減、および電力日負荷平準化の本命であり、比較的短期間の内に実現化されると見られています。ハイブリッド車は既に実用化、市販されており、またプラグインハイブリッド車に包含されます。(プラグ充電しなければハイブリッド車)。

なお、他に第3章第3節3.(3)@「電池開発の推進」にも同じ記述があります。

 

意見3.第2章第3節1.(1)

・「エネルギー政策における原子力の位置づけ・考え方」の最後に「5つの基本方針に基づき「原子力立国」の実現に向けた政策立案を行う。」とあるが、「5つの基本方針に基づき策定された「原子力立国計画」に則り、政策立案を行う。」とすべきである。

(理由)意見1.で述べたとおりです。

 

意見4. 第2章第3節1.(2)

     「原子力と国民・地域社会との共生」では「国、地方公共団体、事業者の三者が適切な役割分担を図りつつ、相互に連携、協力するものとする。」とありますが、幾つかの県の県知事は公然と国の脚を引っ張っているのが実情です。どのように実現するのか、個別の案件ごとに決めの細かい対応措置をとるとともに、立法措置も視野に入れた対応をすべきものと考えます。

     おなじく、第4章「エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために必要な事項」の第1節「広聴・広報・情報公開の推進及び知識の普及」や同第2節1.「地方公共団体の役割」にも同様な記述があります。最近の高レベル廃棄物最終処分地の文献調査への応募に関しても、立地希望市町村の応募を県知事が阻止しようとする動きがあります。記述するだけでなく、国はしっかりと実行していただきたいと思います。

 

意見5.第2章第3節1.(8)

「我が国原子力産業の国際展開支援」では@原子力発電導入予定国への支援とA戦略的資源外交の展開とあるだけで、「既原子力発電国への支援」が抜けている。したがって、もう1項目「既原子力発電国への支援」を追加し、金融支援、二国間協定を含む外交支援、技術支援、人材育成支援他、国としての必要な支援内容を記述すべきである。

(理由)世界的な原子力ルネサンスの波に乗って、世界の既原子力発電国では今後、原子力発電所の大増設が予定されている。その実現には、我が国の原子炉メーカーの働きが絶対的に必要とされているが、メーカーの力だけでは補完できない部分があり、国のバックアップを必要とします。

 

意見6.第2章第3節2.

「原子力の安全の確保と安心の醸成」に関して、この項の中段部分に「国はかかる新たな安全規制を確実に実施し、安全確保に万全を期する。・・・・・・。こうした不断の取組により、科学的・合理的規制をより一層推進し、更なる安全性の向上につなげていく。」とあります。しかしながら、我が国の規制の実情は世界の殆ど国が科学的・合理的であるとして取り入れているIAEA安全基準を採用せず、格段に厳しくなっており、廃棄物規制も合理性を欠いています。

たとえば

@原子力施設の敷地境界の許容線量

世界各国1mSv/y以下→日本0.05mSv/y以下(安全審査目安値)

 A低レベル放射性廃棄物の敷地境界の許容線量

  世界各国 0.1mSv/y1mSv/y→日本0.01mSv/y以下

 B放射性廃棄物の「発生源」による個別規制 

  世界各国は廃棄物のRI組成による規制→

日本は発電所等からの廃棄物とRI・研究所等からの廃棄物を区分した発生源別個別規制

 なお、現在進められている再処理施設から発生するTRU放射性廃棄物処分対策や廃炉から発生する放射性廃棄物処分対策(第2章第3節1.(9))の規制はAを基準として作ることとされており、それぞれ、世界各国のどこも考えていない「TRU廃棄物の高レベル廃棄物との併置処分」、「廃炉廃棄物の余裕深度処分」の方向で検討されています。

 安心の醸成も結構ですが、科学的・合理性を欠いた、行き過ぎた規制は「経済合理性を欠いたもの」となり、これから世界へ展開しようとしている日本の原子力産業の足かせになるおそれが多分にあります。

今後、「国はIAEA安全基準の国内規制への取り入れに努力をする」と明記することが、文字通り「科学的・合理的規制の一層の推進につながる」ものと考えます。

 

意見7. 第2章第5節3.

「気候変動問題や核不拡散に関する国際的な枠組みへの協力・貢献」の最終節に「さらに、世界的な原子力の平和利用の拡大と核不拡散の両立のためのGNEP構想や・・・・・構想、原子力供給国グループ(NSG)による原子力関連資機材・技術の輸出管理強化といった新たな国際的な枠組み作りの動きに対して、我が国は、・・・・、これまでの経験や技術を最大限に活かし、積極的に協力・貢献を行う。」と記述されているが、このなかで「原子力供給国グループ(NSG)による原子力関連資機材・技術の輸出管理強化といった新たな国際的な枠組み作りの動きに対して」を「原子力供給国グループ(NSG)による、NPT非加盟核実験実施国に対する原子力関連資機材・技術の輸出管理に係る新たな国際的な枠組み作りの動きに対して」とする。

(理由)これからのNSGが検討すべき大きな役割はインド、パキスタン等「NPT非加盟の核実験実施国」に対する新たな枠組み作りであって、単なる輸出管理強化ではありません。我が国もインドとの原子力協力を目指しながら、積極的に新たな枠組み作りに貢献していくべきでしょう。

 なお標題の「気候変動問題や核不拡散に関する国際的な枠組みへの協力・貢献」は「「気候変動問題や核不拡散に関する国際的な枠組み作りへの協力・貢献」としたほうが良いと思います。

 

金氏顕氏の意見

全般に、この3年間のエネルギーおよび地球環境を巡る世界の動向変化に対応して、日本のエネルギー安全保障及び地環境問題対策を政策として網羅したものと高く評価します。

 ただし、網羅的の反面、総花的で数値的な目標による重み付けが希薄であるのは否めないと思います。また、施策と称するものがかなり抽象的な表現に終始しているのも散見されます。

以下、このような観点から幾つか意見を述べます。

意見―1 エネルギー自給率の目標設定をすべき

原子力を入れても我が国のエネルギー自給率は20%であり、OECD諸国の中でもイタリアに次いで下から2番目は大変脆弱です。ドイツの39%や同じ資源小国のフランスの51%並を目指すべきで、せめて食糧自給率の40%を、2030年とか2050年を国家目標に掲げるべきである。「エネルギー自給率」はエネルギー基本計画の最上段に掲げるべき最も必要な数値目標である。

 

意見―2 「原子力立国計画」という言葉を掲げるべき

原子力に関する記述は昨年8月に決定された原子力立国計画の内容そのものであり、立派な本も出版された。現在、METI担当部局が全国にその名と中身を周知させようと公聴広報に行脚しているが、この立派な名称がこの基本計画に書いてないのはモッタイナイ。(私のみ見落としであれば撤回)

 

意見―3 高レベル廃棄物処理処分地選定に国は一歩踏み出すべき

現在NUMOにより公募中であるが、市町村の長は手を挙げても県レベルで没になっているのが実態でこのままでは何年経っても無駄で返って自治体内の混乱を引き起こすのが心配。地域支援策の拡充や公聴広報活動強化(P26,上15)にとどまらず国はもう一歩踏み出すべき。「公的規制が国民全体の利益や安全確保の上で必要な場合は公的規制に似よって各主体の行動を規律する(P12.下6)」に該当するものと思う。

 

意見―4 既設原子力プラントの稼働率向上に国がもう一歩踏み出すべき

我が国の原子力の設備利用率は70%に止まっている。計画外停止率は世界一少ない、すなわち原子力の安全性は非常に高い、にもかかわらず稼働率が低いのは一旦止まったらなかなか立ち上げられないのが主要因であり、事業者と地方自治体(県)と対応に長期掛かっているのが実情である。米国の良い例に見られるように、計画外停止があっても、国が安全であると判断し責任を持って運転再開を認める、そういうことを行うべきでそういう判断をする体制や人材は十分にあると思われる。現状は国と県と事業者の3すくみの構造である。10%の稼動率向上で5〜6基の原子力発電所増設と同じ効果があり、電力の約3%に相当し、1次エネルギー約1.2%に相当する。

 

意見―5 日本の原子力産業の国際商談展開に政府の支援を

p25〜26に原子力産業の国際展開支援として、導入国の制度整備の支援、人材育成、ウラン資源外交、を言及しているがこれらに加え、プラント商談での要所要所に一昨年の中国商談時の相手国政府への大臣書簡のような、さらにはもっと踏み込んだ行動を期待したい。

 

以下、原子力以外について

意見―6 p36〜に石炭の導入及び利用に言及しているが、石炭は原子力に次いで我が国のエネルギーの柱の1つであり、問題は二酸化炭素排出である。この克服に向けて、IGCCや二酸化炭素回収固定化の技術開発、および実用化プロジェクトへの財政的な支援をより一層期待したい。我が国はこれらの技術は世界トップクラスであるが、実用化までにはまだ技術課題が多く産業界だけではこれら大規模長期開発は継続して進めにくい点がある。

 

意見―7 DMEの利用拡大に制度面の支援を

DMEは中小ガス田の開発に適しており我が国の天然ガス利用拡大に大いに貢献するものである。p30にDMEについて、専用車の開発の取り組みを促進する、とあるが、問題はガソリンと同じ価格では競争できず、石油に比べ二酸化炭素が20%減、硫黄、窒素がないという環境負荷軽減がメリットとして市場で生かされない仕組みにある。そこでバイオエタノールのように税制上の優遇をすることと、石油精製企業にとってもメリットがあるような制度整備が必要である。

 

益田恭尚氏の意見

本「エネルギー基本計画」はエネルギー供給と開発の方向について落ちなく計画されており、今後、本「エネルギー基本計画」に沿って、着実に実行されることを期待すると共に、本計画を纏められた関係者の努力に敬意を表するものである。

エネルギー対策の実施に当っては、ピーク・オイルの到来時期と、化石燃料が地球温暖化に与える影響についての国民的認識に大きく左右されることは、民主主義体制下では已むを得ない。しかし、我が国のみならず世界的にもこれらの認識に大きな幅があることは憂慮すべきことである。

リスクに備えるという立場に立てば、ピーク・オイルは数年後には到来するとの立場に立つべきで、2030年以降と考えるのはリスクが大きすぎる。また、二酸化炭素濃度増加の影響は地球環境に取り返しのつかない影響を与えるという論には説得力がある。そのような立場に立てば、エネルギー基本計画の実施時期を早めるべきである。一方、本計画の実行には相当な財政的支援が必要であり、財政難の折、実施時期と重点項目の選定には十分な検討を重ねた上で、軽重を付けた取組みが必要であろう。

筆者のみるところ、本「エネルギー基本計画」の中で最重点項目は、省エネルギー対策を別にすれば、原子力発電の推進と、交通燃料の電力化であると考える。

自動車燃料の電力化のステップとしてはプラグイン・ハイブリッド車の早期定着が有効で、エネルギーの節約と共に、電力の平準化にも大きく寄与し、電気自動車の早期実現にも大きく貢献するものと考える。

世界の人口は増大の一路を辿る中、我が国の人口は減少傾向に向かい、電力需要の伸びも小康を得ている。電力自由化とRPS法の施行、住民パワーの増大に伴い、歓迎されない原子力は、「原子力立国計画」の策定にもかかわらず、電気事業の経営者にとって魅力が少なく、一向に新規着工が進展するように見えない。

原子力発電の伸びを抑えている要因としては、「原子力は子孫に悪い影響を残すからいやだ。自分の生きている間にはピーク・オイルは来ないだろうし、地球温暖化は自分に大きな被害を及ぼさないだろう。将来は、膨大なエネルギーを供給している太陽エネルギーを利用して、知恵者が自然エネルギーの利用法の改良を進め、エネルギー危機は解決されるだろう。」といった、矛盾を含んだ安易な考え方に流れているためではないだろうか。

原子力発電は実証された技術であり、膨大な電力を供給しているのに対し、自然エネルギーの利用は、不確かな要素が多い上、雨の日が多く、風が少なく、地価が高く、水力資源の利用が限界に達している我が国は、物理的に適地ではないという地理的条件にあり、有効な石油代替にはなりえない。バイオマス由来の燃料は、エチルアルコール等が利用できる状態への政策転換は必要としても、労賃が高く、農業生産の進まない我が国ではコスト的にも無理がある上、EPRが1を切りかねない状況にあると推定される。

エネルギーインフラの変更には多大の時間が必要である。過度の補助政策により国民に間違った認識を持たせることは危険であり、国民の多くが方向転換の必要を感じた時では遅すぎるのである。政策の誤りにより、国民が受ける被害について、誰がどのような責任を取るか厳粛に考える必要があろう。

その意味において「第4章 エネルギーの供給に関する施策を長期的、かつ計画的に推進するための必要な事項」は重要である。しかし、ここに記載されているだけでは不十分であり、国の研究機関や、シンクタンク等を活用した、エネルギー関連の詳細な情報の収集と分析を行い、政治家にも正しい情報を提供し、また、国民各位の真摯な疑問や議論に答えていく必要性を強く感じるものである。

 

石井正則氏の意見

基幹エネルギーとしての原子力の位置付けが、核燃料サイクルを含め、明瞭かつ具体的に記述されており、また次世代を担う子供達への教育の充実など国家100年の計として妥当な内容であり、共感を覚えるとともに、的確な推進を期待します。

しかしながら、一部危惧される点や総花的過ぎる点もあるので、以下にコメントします。

1. 環境への適合を図るための基本計画

地球温暖化問題を踏まえ、核燃料サイクルを含めた原子力発電の推進や化石燃料への依存度を可能な限り下げるなど、妥当な方針である。一方、地域レベルの環境問題としては、今後東アジア地域のエネルギー需要の増大に起因し、化石燃料の使用量が増大し、SOXNOXによる酸性雨や煤塵の影響が我が国に及ぶことが懸念される。

このことへの対応は、まず排出者責任を明確にすることである。そのうえでなんらかのメカニズムを構築するひつようがある。SOXの排出権取引などもその一つであろう。アジア協力の推進(第2章第5節2)に述べられている技術供与も、その一貫としてであれば効果があろう。被害者側から加害者側への一方向的な技術供与や援助では、相手側が既に軍事先進国となり、急速な発展を遂げつつある現状を考えると、不公平感がぬぐえない。東アジア地区における公平な国際間の協調関係の構築に向けた努力が必要である。

2. エネルギー基本計画にもとづく地方公共団体の役割の明確化と政策誘導の強化への期待

立地地域の決定には多くのステークホルダーが存在する。地方公共団体と一口にいうが、当該地域の自治体、周辺地域の自治体、県(特に県知事)、更には道州性が実現すればその首長が、それぞれの利害関係(取引関係や駆引き)から独自の主張をし、仮に総論賛成としても立地が円滑に進まない恐れが多い。

実効的な立地推進が可能となるよう、ステークホルダーそれぞれに対し、国家の100年の計を理解し的確に対応してもらう必要がある。対応に当たっては取引の道具にならないよう、省庁の枠を乗り越えた政策誘導が必要がある。これらにより、最終処分地の決定などが、円滑に進むことを期待する。

3. 新エネルギーと水素に関して

将来のエネルギー媒体である水素を、CO2を排出の少ない原子力や新エネルギーから製造するということを明記したことは極めて妥当であり、高く評価する(第2章第37(3))。また、太陽光、風力、バイオなどの新エネルギーは、環境面とともに、エネルギー自給率向上の面から一定の役割を期待したい(第1章第2節2)。しかしながら、それぞれの資源の特性(規模の限界や利点・欠点)を前提として考える必要がある。たとえばバイオを余剰材(廃材や間伐材)などによるならともかく、需要をまかなうため食料用の畑の転用や森林の伐採によるなら本末転倒である。総花的にならないようにする必要がある。

分散エネルギーにしても、大規模供給システムの方が一般的に効率が良いことを忘れてはならない。日本のように狭い国土でエネルギーの消費密度が高い場所では、効果が期待できるのは特定の条件(廃熱利用や島嶼地域での利用など)が成立する場合に限られよう。災害時や国家の危機時に孤立した地域へは市場原理とは別な対応が必要であり、それらを含めそれぞれの事態や事例に対して、期待する程度を明らかにしたえでの扱いが必要である。

 

以上