浜岡問題とは、平成13年末から今年にかけて、浜岡原子力発電所1、2号機で発生した夫々独立した三つのトラブルと、それにより惹き起こされた技術的問題を含む社会的な批判を総称している。 三つのトラブルとは、下記のトラブルである。
(1) 浜岡原子力発電所1号機(定格出力54万kW) 配管破断事故
平成13年11月7日17時02分、定格出力運転中に、非常用炉心冷却系の一部である高圧注入系の定期作動試験中に、高圧注入ポンプが停止するとともに、原子炉建屋の火災報知器が作動したので、原因調査のため11月8日0時01分に原子炉を停止した。
調査の結果、高圧注入系から分技している余熱除去系蒸気凝縮系配管の曲がり部が破断し、蒸気が漏洩したことが判明した。 しかし蒸気は配管の隔離弁が自動的に閉じたため直ぐに止まり、外部への放射能の影響はなかった。 このトラブルに対する国際原子力事象評価尺度(INES)での暫定評価は「レベル1」であった。 原因調査の結果、配管の内側で水素の急激な燃焼により、過大の力が発生したため、配管が破断したと推定され、その対策として配管に水素が蓄積しないような構造に配管を改造した。
(2) 浜岡原子力発電所1号機 原子炉水漏洩事故
平成13年11月9日、原子炉格納容器内の点検中に、制御棒駆動機構(CRD)1本の下部付近から数秒に1滴程度の水が滴下しているのを確認した。 そのCRDを詳細に点検したところ、原子炉圧力容器下部のCRDハウジング貫通部から原子炉水が滴下していることを確認した。 この漏洩の開始時期は、原子炉格納容器ローカルクーラドレン流量とサプレッションプール水温の評価結果から、平成13年7月上旬と推定された。 このトラブルによる外部への放射能の影響はなく、国際原子力事象評価尺度(INES)での暫定評価は「レベル0+」であった。
原因調査の結果、漏洩の原因は応力腐食割れと推定され、その対策としてCRDハウジングおよびスタッブチューブを、より腐食性に優れたインコネル82(相当)の新品に交換した上、残りのスタッブチューブ88本について、水中カメラによる目視点検を行い、異常のないことを確認し、更に万が一原子炉水が漏洩しても、早期に対応がとれるように、監視や分析の方法の改善を図った。
(3) 浜岡原子力発電所2号機 点検用水抜き配管水漏れ
平成13年11月14日から実施して来た自主点検を終え、平成14年5月24日13時39分に原子炉起動したところ、余熱除去系低圧注入管第2隔離弁(B)の点検用水抜き配管の溶接部から水が漏れているのを発見した。 漏れた水の総量は、約110リットルと推定された。 このトラブルによる外部への放射能の影響はなく、国際原子力事象評価尺度(INES)での評価は「レベル0-」であった。
原因調査の結果、余熱除去系の両系注入運転に伴い発生する低圧注入管の振動に当該配管が共振し、溶接部の下端部に繰り返し力が加わって、金属疲労による亀裂(疲労割れ)が発生したものと推定された。 その対策として、当該配管について、サポートの取り付け位置の変更などにより共振しにくい構造にすると同時に、溶接部の下端部を力が集中しにくい形状にするなどの対策を行った。 また今回のような水漏れを防止するため、類似個所についても、振動を評価した上必要な場合は、同様な変更を行うこととした。 (杉野榮美)
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