当時、日本の実用原子力発電所もその基数も増え、プラントの運転経験や軽水炉技術の技術蓄積も充実してきているものの、供用期間が長くなってきていることから、高経年化しつつある原子力発電所の経年的変化を考慮した、さらなる安全確保対策の充実、体系化が求められた。このような状況に対応するため、当時の通商産業省(現在の経済産業省)は平成5年6月に原子力発電技術顧問会(総合予防保全)の中に、高経年化対策検討会(委員長・飯田東京大学名誉教授)を設置した。
当初は高経年化に対応する維持基準の整備と定期検査の整備を検討項目としてスタートしたが、平成6年6月に通商産業省の諮問機関である総合エネルギー調査会原子力部会から、原子力発電に関する中間報告書が出された。その中で日本の原子力発電は今後とも長期にわたって軽水炉が主要電源としての役割を果すことになるが、初期に建設されたプラントも運転開始してから30年弱が経過していることから、高経年化への対応の重要性が指摘された。これを受けて、原子力発電所の健全性をどのように評価するか、今後高経年化にどのように対応していくかなどの「高経年化対策の考え方」についても検討することになった。その検討結果が通商産業省の所報告書「高経年化に関する基本的な考え方」(別途解説書を参照)として平成8年6月に公表された。
さらに、この報告書に基づいて、電気事業者は「原子力発電プラントの高経年化対策の評価及び今後の高経年化に関する具体的取組み」について通商産業省に報告し、これを第2次の高経年化対策検討会でレビューした後、「高経年化対策技術評価報告書」(別途解説書を参照)として平成11年2月に公表した。
その後、国の行政組織の変更により、原子力規制を担当する原子力安全・保安院が設立された。その結果、原子力発電技術顧問会は廃止され、これに代わり、原子力安全・保安部会が発足し、その下に原子力安全小委員会が設置された。さらにこの小委員会の下に総合予防保全ワーキンググループが設置され、その中に高経年化対策検討会が位置付けられることになった。現在、この検討会は電気事業者より報告される個別プラントの「高経年化に関する技術的な評価及び長期保全計画」について、技術専門的立場より意見を聞く会合になっている。 (安藤
博)
|