原子力発電所で発生する金属材料の割れの代表は、応力腐食割れ(SCC; stress
corrosion cracking)である。応力腐食割れはオーステナイト鋼にみられ、引張応力がかかっている場合、特定の環境下で応力に垂直な方向に、腐食と亀裂が進展する現象である。通常の許容応力水準より低い応力の作用であっても、割れが生じるのが特徴である。特定の環境としては、溶存酸素濃度と塩化物濃度が大きな効果をもっている。応力腐食割れを防止するためには、設計過程では引張応力の局部集中の低減と、溶存酸素ないし塩素濃度が偏在する可能性のある隙間部の解消、製造過程での品質および工程の管理、および原子炉運転時の水質管理などが重要である。(応力腐食割れについては、トピックス解説に詳述されているので参照されたい。)
SCC以外に原子炉内部では、中性子の照射によって材料が脆くなり、割れの原因となることがある。この事象については、「3・11材料劣化」の項に詳しく解説しているので、参照されたい。(土井
彰)
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