3・11 材料劣化
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材料は使用期間中ある環境条件下で、力を受け続けたり、繰り返し力を受けることにより、次第に疲労し特性が劣化する。原子炉内で使用する場合は、放射線の照射が多量になると材料劣化が発生する。圧力容器鋼材への中性子照射により脆化が進めば、延性脆化遷移温度が上昇し、脆性破壊を防止するためには使用温度を高く保つことが必要になる。これは中性子照射による空孔の生成や、材料中で生じた核変換生成物のヘリウムが気泡となり、結晶粒界に析出する材料劣化である。中性子照射による劣化を監視し、安心して運転するために、原子炉にはサーベイランス試験片が入れてあり、順次これを取り出して中性子照射量および材料特性の変化を評価している。
この他、燃料被覆管に使用するジルカロイは、水素を吸収して脆くなる水素脆化の例が以前には見られたが、被覆管内に水を吸着するゲッターを挿入することにより、水素脆化は防止された。また、照射された核燃料や材料においては、核分裂生成物の希ガスなどの蓄積によって、見かけの体積が増加するスウエリング現象がある。(土井 彰)