3・12 絶縁低下
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絶縁体の電気抵抗が熱等により低下し、絶縁する機能が低下する現象。大別して温度などの条件変化による機能低下と、絶縁体の劣化による低下がある。絶縁体は一般的に温度の上昇に伴い、その絶縁抵抗値は低下し,温度が戻れば絶縁抵抗値は回復する。一方絶縁劣化は何らかの原因により絶縁体の性質が変化するもので、絶縁劣化の原因は多様であるが、大別すると次のようなものがある。
   (1) 熱による劣化
   (2) 電圧による劣化
   (3) 機械的原因による劣化
   (4) 外的環境による劣化
多くの場合、これらの要因は複合的に加わって、絶縁劣化を進行させる。原子力特有の問題としては、外的環境による劣化の一部として放射線による絶縁材料の劣化がある。絶縁劣化の測定は微少信号の変化、絶縁体に発生する部分放電の監視、材料の劣化に伴う色相の変化などによる診断方法がある。
原子炉の圧力容器内で電気絶縁が必要となることは少ないが、必要な場合、使用する絶縁材量は原子炉内の高温度、高放射線に耐えられる無機絶縁材料となる。たとえば沸騰水型原子炉(BWR)の原子炉炉心内で、中世子束を測定する検出器(インコアモニター)の絶縁材料には、アルミナ(Al2O3)が通常使用されている。検出器の絶縁材料は、原子炉の炉心温度と放射線に十分耐えられる寿命設計となっている上に、その絶縁劣化程度が分るような測定装置が準備されている。 (白山 新平)