資源エネルギー庁が平成8年4月に纏めた、高経年化の技術評価と対策ための基本方針。
我が国の総発電々力量の3割以上を賄うに至っている原子力発電は、商業用原子力発電所が運転を開始してからほぼ30年を経過し、平成6年6月、政府の総合エネルギー調査会原子力部会において、高経年化への対応の重要性が指摘された。これを受けて、高経年化した軽水型原子力発電所の健全性をどのように評価し、高経年化にどの様に対応していくか、国の指導および電気事業者の高経年化対策について、基本的な考え方を示すために纏めた「ガイド」としての性格を持つ。
検討に当っては、学識経験者の高い専門的知見が求められるため、通商産業大臣から委嘱された原子力発電技術顧問からなる、総合予防保全顧問会高経年化対策検討会にて、約2年を費やして検討し取り纏められた。本書は、我が国原子力開発の初期に建設された敦賀1号機、美浜1号機および福島第一・1号機について、60年の長期運転を仮定しても、原子炉圧力容器や一次系配管などの主要機器につき技術評価を行った結果、適切な管理がなされれば安全に運転を継続することが可能であるとの見通しを得ている。
我が国の原子力発電所は定期検査・点検の実施、さらに徹底した予防保全対策等により安全性は十分に確保されているが、高経年化に備えてより高度な安全管理を行うとの観点から、運転開始後30年を目安に、国が実施する定期検査、電気事業者が実施する点検項目、内容を充実することとしている。さらに経年化に対応した維持基準の整備、検査技術および補修技術等の技術開発の必要性なども指摘されている。資源エネルギー庁は、この報告書を原子力安全委員会に報告し、同委員会は原子炉安全総合検討会においてこれを検討し、その内容が妥当なものとして平成10年11月、了承した。
同庁は電気事業者に対して、「高経年化に関する基本的な考え方」をもとに、プラントの安全機能を有する全ての機器・構築物の技術評価を実施するとともに、高経年化の観点から、従来の保全活動を充実する新たな保全策を抽出し、長期保全計画を纏めるよう指導した。 (小川
博巳)
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