3・6 炉内構造物
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原子炉の圧力容器の中には原子炉の炉心が設置されている。原子炉の種類によって燃料の構造と支持方法、冷却材の流し方、炉心の出力を制御する制御棒とその駆動方法が違い、その構造を一概に説明することは難しいので、沸騰水型原子力発電所(BWR)に例をとり説明する。
BWRの炉内構造物はシュラウド、炉心支持板、上部格子板と、シュラウドの蓋であるシュラウド・ヘッド、制御棒の動作の案内をすると共に燃料の重量を支持する制御棒案内管、シュラウド・ヘッドの上に独立に設置される蒸気乾燥器から構成されている。
BWRでは燃料集合体の重量は制御棒案内管を介して、原子炉圧力容器の底部で支持され、炉心燃料を囲むシュラウドという構造物によって、燃料集合体の横ぶれを防いでいる。原子炉冷却水は原子炉圧力容器とシュラウドの間から原子炉圧力容器の底部に流れ込み、制御棒案内管に設けられた穴を通り、燃料集合体に供給される。この冷却水は燃料集合体を取り囲んだ燃料チャンネルの中を流れ、途中一部沸騰しながら、シュラウドヘッドの下部空間に流れ込み、気水分離器で蒸気が冷却水から分離される。分離された蒸気はシュラウドヘッドの上に設置された蒸気乾燥器で、さらに水分が除去されタービンへ供給される。
水冷却炉では構造物の酸化を嫌うため、炉内構造物はオーステナイトで作られるのが一般的である。110万kw級のBWRの場合、シュラウドは炉心部で直径約5m、高さ7m弱の円筒型の溶接構造物である。炉内構造物は一般的に腐食耐力に優れたオーステナイトステンレス鋼で作られているため、減肉の心配はない。しかし、振動を受ける部分の疲労割れや、ボルトのネジの緩みなどを監視していくことが必要である。また中性子照射量が多い部分についてはその影響を監視していくことが重要である。BWRのように酸素を含んだ高温冷却水中では、溶接による熱影響を受け、残留応力などの引っ張り応力が存在すると、溶接部近傍が部分的に応力腐食割れを起こす場合があり、計画的点検が必要となる。この点についてはトピックス解説「BWRシュラウドについて」、と「応力腐食割れ」を参照されたい。(益田恭尚)